同級生二次創作SS「螺鈿細工の月−第三章−」

◇ 第一話-揺らぎ- ◇


 大きな姿見の前で、一糸まとわぬ自分自身を見つめる少女。
 乳房は以前よりも一回り近く大きく成長し、腰から太股にかけてのラインも柔らか味を増している。
 その姿は、最早少女と呼ぶのは不釣合いな程、女の色香を滲ませていた。
 だが、年齢的にはまだ少女の域を微かに脱した程度。大人の女性として成熟していくには、まだ多くの時間と経験が必要だろう。
 ただ一点を覗いては。

 その表情にはまだ幼さを残している少女は、性的には既に熟成されていると言っても良かった。
 同世代の少女達と比べて、遥かに男性経験は豊富であり、男を喜ばせる様々な術を身に付けている。
 だがしかし、まだ成熟しきっていない少女の心は、淫らに成長した身体とは裏腹に恥じらいを失う事は無かった。
 だからこそ、その少女のもつ美しさは際立ち、大人の女性と少女、二種類の魅力が絶妙なバランスで混在していた。

 その少女の名は、桜木舞。


 黒川が早田の仕組んだ出張で不在だった一週間。時間の許す限り、山部は舞を抱き続けた。
 数を重ねるごとに二人の身体の相性は増し、それに合わせて得られる快感も増大していく。
 他の少女であれば、その激しい快感に精神までも冒され、快楽の虜となってしまっていたかもしれない。
 しかし、例えどれだけ陵辱されようとも、行為の最中には快感に溺れてしまっていたとしても、気丈な舞は自分を見失う事は無かった。
 逆に言えばそれは、我を忘れてしまえない舞は、陵辱という名の苦痛を永遠に受け続ける事になる。
 もしも救われる道が無いのだとしたら、いっそ我を忘れて欲望に身を任せてしまえれば、それはどれだけ楽な事だろうか。舞もそう考える事が無いわけではない。
 今更、気丈に自分を見失わずにいたところで、それが何になるのだろうか。
 この苦痛から逃れられないのなら、いっそ全てを委ねてしまいたい。そう考える事が日毎に多くなり、山部に抱かれ続け、一時的にとは言え行為の最中には快楽に溺れていくうちに、舞は抵抗する事の虚しさを噛み締めるようになっていた。

 そう、全ては早田の思い描く通りに進んでいた。


「お疲れ様」

 長く続く白塗りの高い壁。桜木家の屋敷と比べてもかなり豪奢な造りの建物から、舞は疲れきった様子で現れた。
 桜木家の長女であり、生粋のお嬢様である舞には違和感の無い事だが、舞が現れたのは正面玄関ではなく、使用人達が出入りする為にある勝手口からであった。
 それを迎えたのは、勝手口に黒塗りの車を横付けした山部だ。

「ここの爺さん、ナニが役に立たないかわりに、執拗に身体中を舐めまわすでしょ?」

 実際に山部の言葉の通りなのだろう、舞は微かに俯いた頬を赤らめる。その表情はかなり疲れているようだった。
 山部は舞の肩を抱くようにしながら後部座席のドアを開けると、乗り込もうとする舞に耳打した。

「爺さん相手じゃ物足りなかったでしょ? 帰る前に満足させてあげるよ。いいよね?」
「───はい」

 一刻も早く帰って熱いシャワーで全身を洗い流したい。そう思っていた舞だったが、山部の申し出を断るわけにはいかなかった。
 美沙から手を引く条件と早田に告げられたのは、美沙の代わりに客達の相手をする事と、早田や山部の求めにはいつ何時でも応える事。
 それを知った上で、山部は先刻のような言い方をしたのだ。
 山部は舞の返事に嬉しそうに頷くと、舞を乗せた後部座席のドアを閉め、自らは運転席へと滑り込んだ。
 黒塗りの車は静かに走り出すと、黒川のマンションとは違う方向へと進んでいった。


「んっ……くふぅ……はぁ…はぁ……んんっ……!」

 セピア色の薄明かりの中で、抜けるように白い舞の肌が浮き上がっている。
 郊外に乱立するホテル郡の中の一室、小奇麗な部屋を選んで入った山部は、シャワーを浴び終えた舞をベッドへと押し倒すと、急くようにその下腹部へと顔を埋めた。
 念入りに洗ったのだろう、まだ乾ききっていない恥毛からは、ボディーソープが残した柑橘系の香りがした。
 その恥毛に隠された秘唇を指で押し開き、山部はやや乱暴に舌を潜り込ませる。
 湯によって温められたからか、それとも身体中を嘗め回された火照りの残り火か、秘裂の奥は普段よりもかなり温かかった。

「くっ……はぁぅっ…!」

 襞の間を丁寧になぞるように舌先を這わせ、尖らせた舌先を膣口へと潜り込ませていくと、秘腔の奥から瞬く間に蜜が溢れ出す。
 それを舌で掬い取って充血し始めた小豆大の突起へと塗し、くすぐるように舌先で弄ぶ。
 時には派手に音を立てて吸い、その淫らな音で舞を耳朶から刺激しながら、山部は熟れた果実を存分に堪能していった。
 真新しいシーツを掻き乱しながら、舞はその快感にただ身を委ねていた。
 溺れてしまいそうになる身体を必死に繋ぎとめる理性の鎖を、いっそ自ら解き放ってしまえば、これ以上苦しむ事は無くなるのだ。そんな事を漠然と考えながら、潤んだ瞳で天井を見つめていた。

「あっ、あんっ……はぁ……はぁ……んぁっ!」

 その間も山部の愛撫は休まる事なく続き、舌先でクリトリスを弄びながら膣内へと指先を潜り込ませ、熱く潤んだ蜜壺を掻き乱していった。
 指先に絡みつくようなその感触も、切なげに悶え喘ぐ舞の姿も、何度味わっても山部を夢中にさせる。
 溢れる蜜をすすりながら、自らも下着を脱いでいく山部。欲望の分身とも言うべき男性器は既に起立し、腹を打つほどに怒張して反り返っていた。
 そして舞の下腹部から顔を上げ上半身を起こすと、自分の手で男性器を擦り上げながら、舞の身体へと覆い被さっていった。

「さあ、入れるよ」

 反り返る男性器を上から抑えつけながら、その先端を濡れた秘唇へと導く。
 大きく広がった先端部分は、充血した秘肉を強引に押し開き、潤滑油となった蜜の滑りを頼りに秘唇を割って進む。
 灼熱の棒が自分を貫いていくような錯覚を覚えながら、舞は山部の挿入に合わせて大きく息を吐き出した。

「…ん………はぁぁ……」

 先端が完全に隠れてしまうところまで挿入すると、山部はおもむろに舞の両足を膝下から抱え、舞の胸元へと押し付けるように持ち上げた。
 そうすると両足はM字のように左右に開かれ、自然に腰が浮き上がって舞からも結合部分が見えるようになる。
 舞は恍惚とした表情で、山部の男性器が貫いている光景を見つめていた。
 既に身体を縛り付けていた理性の鎖は心の奥底へと沈み、一時だけ舞の雌としての性癖が目覚めていく。
 それは、惨すぎる現実に心が壊れてしまうのを恐れ、無意識のうちに身に付けてしまった快楽に溺れるという行為。
 何も考えず快楽に流されてしまえば、気付いた時には全て終っている。それが今まで舞の精神を辛うじて崩壊させずに繋ぎ止めていたのだ。
 だがそれは同時に、理性を取り戻した時に自らの淫らな性癖を思い知る事でもあった。

(あぁ……入ってる……あんなにイヤらしく開いて……あぁっ……)

 掻き出されるようにして溢れた蜜は腹部へと流れ落ち、激しく出入りする山部の男性器はその蜜で濡れて光っていた。
 舞に見せつけるようにして激しく腰を動かしながら、山部はその舞の表情を見下ろす。
 切なげに喘ぎながらも、その光景から目を逸らせずに恍惚としている舞に、山部は口の端を歪めるようにして笑った。

「ククッ…」

 普段は山部の事など眼中に無いといった態度を崩さず、それどころか嫌悪の眼差しで見ている舞が、事に及べば自分との行為に溺れてしまう。
 通常なら自分などが声をかける事さえ許されない、正真正銘のお嬢様であり、類稀なる美少女の舞を己の欲望のままに快楽に溺れさせる喜び。舞の恍惚とした表情を見る度に、山部はそんな歓喜に震えた。
 そんな山部の視線に気付いたのか、舞は頬を赤らめると視線を反らすが、その表情に浮かんだ快楽の色までは消すことができない。
 その証拠に、山部が腰の動きを一段激しいものへと変化させると、たちまち舞の口元からは快感に染まった嬌声が溢れ出した。

「あっ! あっ、あぁんっ! あっ、あっ、あっ、はぁぁっ!!」

 打ち付けられる腰の勢いのままに、まろみを帯びた豊かな乳房が激しく前後に揺れ、滑らかな素肌には玉のような汗が浮かび上がる。
 諦めにも似た心境で逆らう事を止め、襲いくる快感にただ身を任せる。
 自然に肉体は精神の支配から解き放たれ、ただ快感だけを求め、その反応は山部の動きに同調していく。
 心の奥底では、そんな自分を蔑むもう一人の自分が冷ややかに見つめているのだが、だがもうそれは何の抑制にもならない。
 力強く貫かれる度に、その快感に自然に腰が浮き上がり、両足は山部の腰へと絡み付いていく。

「はぁ、はぁ、はぁ、んんっ…! あっ、ああんっ!」

 シーツの海に長い髪を舞い散らすように広げ、何かに耐えるように頭を左右に振りながら、舞の愛らしい唇からは絶え間なく甘い喘ぎが漏れ続ける。

(……もっと……もっと欲しい………欲しいのぉっ……!!)

 早田や山部の手によって淫らに咲き綻んだ若い舞の肉体。
 与え続けられる快感は、まるで麻薬のように舞の心と身体を蝕み、崩れ落ちた理性の下から顔を覗かせた肉欲は、さらに貪欲に快感を求めて蠢いていく。
 けしてそれが舞の本性という訳ではない。だが、それもまた確かに舞のもつ一面ではあるのだ。
 今まではただ辛うじて理性によって抑えこまれていたものが、連日の陵辱による精神的な疲労によって一気に開放されてしまっただけなのだ。
 そして舞は山部の背中に両手を回し、その顔を胸板に埋めながら無意識のうちに叫んでいた。

「お願いっ! もっと、もっと私をっ……!!」
「どうして欲しいの?」

 突然の事にやや戸惑いながらも、山部は薄笑いすら浮かべて問い返す。
 これまでの経験や勘、そして今までの舞の反応から、ひとつの転機を迎えている事を山部は敏感に悟っていた。
 連日の自分との行為と、美沙の代わりとして勤めている客達の相手。若い肉体は限界まで熟し、もう一押しでその果実は自然に手元へと落ちてくる。そんな状況だった。

「"私を"どうして欲しいのか言ってしまいなよ。僕ならその望みを叶えられるはずだ」

 山部の言葉は風のように、熟れた果実を揺れさせる。その実は自らの重さに耐えかねて、今にも落ちてしまいそうだ。
 舞は山部の胸元に顔を埋めたまま、絞り出すように小さな声で呟いた。

「……溺れさせて…もう、それしか考えられなくなるくらい……お願い…」

 山部の掌に舞が落ちた瞬間だった。
 何もかもを捧げた訳ではない。心はけして山部を受け入れる事も無い。ただ、肉体だけを快楽に溺れさせて欲しい。そう願ったのだ。
 山部は今にも飛び上がりそうな気持ちを堪えて、胸元に埋められた舞の顔を上げさせた。

「溺れさせてあげるよ。でもその代わり、僕の言う通りにするんだ」
「はい」

 潤んだ瞳に山部を正面から映し、躊躇うこと無く頷く舞。そして山部が証とばかりに唇を重ねると、瞳を閉じて自ら舌を差し出した。



「あっ、あぁっ、山部さん…山部さぁんっ…!!」

 ベッドの上に胡座を組んで座る山部の上に、向かい合うようにして膝を付いて腰を降ろした舞。
 山部の身体にしがみ付くように、両手を背中に回して抱き付き、控えめながらも自分から腰を上下に動かしている。
 意識して押し付けられた乳房は、山部の胸板で先端の突起が擦れて甘美な刺激をもたらし、山部の剛直に貫かれた秘所は絶え間なく刺激的な快感を紡ぎ出し続ける。
 山部に命じられるままにこの体勢となった舞だったが、自分の調子で動く事のできるこの体位に、既に夢中になっているようだった。
 乳房を押し付けたまま、艶かしく腰をくねらせるように動かし、愛液に濡れて光る男性器を出し入れさせる。

「んんーっ! はぁ、はぁ……んっ、んんっ、はぁんっ!」

 目の前で髪を揺らしながら小気味よく上下に揺れる舞の顔を見つめながら、山部は手を舞の尻へと伸ばすと、そのまま後ろの穴の周囲を指先で弄び始める。
 一瞬、驚いたように目を見開いた舞だったが、羞恥に頬を染めながらも、そのまま山部のするがままに身を任せる。

「こっちでも楽しめるように教えてあげなきゃね」

 その言葉にどう答えてよいのか分らず、舞は俯きながら微かに頷いた。
 そして山部の手は次第に本格的な愛撫を始め、溢れ出した蜜を指先にすくい取ると、それを頼りに指先を後ろの穴へと潜り込ませていく。
 流石に舞は慌てて止めてくれるように懇願したが、舞の反応がそれほど悪くないと見たのか、山部は緩やかに刺激を加え続けた。

「…あっ…あんっ、そんな……んんっ……んっ…はぁ……!」

 指先は第一関節までが潜り込み、舞の腰の動きに合わせて絶妙な刺激を加える。
 絶え難い程の恥かしさを感じながらも、膣内を貫かれる快感と相まって、舞は次第に不思議な快感を覚え始めていた。

(…どうして……こんなに………痺れちゃうっ……!)

 今までに味わった事の無い、腰の奥がむず痒くなるような不思議な快感。その快感に突き動かされるかのように、舞の腰の動きは少しずつ加速し、夢中になって快感を貪っていった。
 微かに開いた瞳は涙が零れんばかりに潤み、頬を上気させた表情は完全に快感に溺れてしまっている。
 そして舞は何かを訴えるかのように山部の顔を見つめると、自分から積極的に唇を重ねていった。
 重なった二人の唇からは唾液が雫となって零れ落ち、二人の胸元を伝って流れていく。

「あぁっ! あんっ、あんっ、あっ、あぁっ! お、お尻が…変…変なの……あぁぁっ!!」

 どうしてここまで感じてしまうのか、自分でも理解できないといった表情を見せながらも、舞はその快感に逆らう事などできなかった。
 山部の指先は少しずつ動きを激しくさせ、蠢きながら激しく指先を締め付けてくるその穴を弄ぶ。

「ひんっ…! や、やだっ…おかしくなっちゃうっ……あっ、あぁっ! お…お尻がっ……とけちゃいそうなのぉ…!!」

 激しさを増していく山部の愛撫に、舞は気も狂わんとばかりに激しく頭を振り、山部の身体にしがみ付いて泣き叫んだ。
 だがそれでも貪欲なまでに身体は快感を追い求め、腰だけが艶かしく律動を続けている。
 大量に溢れ出した蜜は結合部で白く泡立ち、隆々とした男性器が淫らに刺し貫き、奥から真新しい蜜を更に掻き出してくる。

「あっ、あっ、だめっ、来ちゃうっ…! はぁっ、あぁっ、あぁんっ! いっちゃう……いっちゃうよっ…!!」
「たっぷり出してあげるから、思い切りイってごらん」

 限界が近く自分では動く事が厳しくなってきた舞に代わって、山部は座ったまま下から舞を突き上げていく。
 その間も尻への愛撫は休む事なく、それどころか更に激しさを増して後ろの穴を弄びながら、山部は一気にスパートをかけた。

「あっ、あっ、あっ、んあぁっ!! だめっ! いくっ! いくぅぅーーっ!!」

 山部が貫く勢いのままに舞の膣内へと精を放つと、その瞬間、舞も腰を痙攣させながら激しく達していた。
 その表情は恍惚とし、初めて感じた膣内とアナル同時の快感に、頭の奥まで蕩けきってしまったように見える。
 山部は全身から力の抜けてしまった舞をそのままベッドに寝かせると、いつも以上に荒い吐息を漏らす舞の頬へと手を伸ばした。
 汗で頬に絡みついた髪を指先に絡め取り、ゆっくりとその頬を撫でていく。

「これからもっと、色々と教えてあげるよ…僕に溺れて何も考えられなくなるくらいにね」

 舞は混濁した意識の中でその言葉を聞きながら、更なる未知の快感に期待し始めている自分に気付き、自分がもう後戻りできないところまで来てしまったのだと感じていた。




「───どういう事か説明してもらおうか」

 ようやく出張から戻ってきた黒川は、帰るなり早田へと詰め寄っていた。
 両眼に明らかな怒りの光を輝かせている黒川に対し、早田は面倒臭そうな表情を見せるだけで、全く相手にしようとしない。
 自分の部下であるはずの早田のそんな態度に、黒川は激高して早田の上着の襟に掴みかかり、勢いのあまり拳が早田の顔を打つ。
 そしてようやく、早田の視線が鋭く黒川を射抜いた。
 長年、裏家業を専門にしてきた男の視線に、流石に黒川も一瞬だけ怯んだ様子を見せたが、黒川とてそれなりの修羅場をくぐって来ている。そのまま早田の身体を壁に押し付けると、顔を近付けて言った。

「今回の茶番は貴様の差し金だそうだな…どういうつもりだ」
「……決まってるだろう。俺の仕事をする為さ」
「…何だと?」

 早田の言葉に、黒川の表情に緊張の色が走る。
 早田の仕事。それは黒川が命じた仕事でもある。自分達の仕事が有利に運ぶよう、様々な業界の人間に女を使って取り入る事だ。
 今は以前から飼っていた何人かの女と、新たに美沙がその道具となっていたはずである。
 だが、それを行う為にどうして自分に出張をさせる必要があるのか、その理由が解らずに黒川は眉をひそめる。

「新しい道具は好評だぜ。なんせあの桜木家のお嬢様だ、今まで以上に高値が付いてるぜ」
「なっ……貴様ァッ!!」

 全てを理解して、黒川から怒りの叫びが迸る。そして握った拳を振り上げ、怒りに任せて黒川の顔面へと叩き込む。
 しかし、その拳が届く寸前、一瞬だけ早く早田の拳が黒川の鳩尾へと入っていた。
 その圧力に肺の中の空気が全て吐き出されて息が詰まった瞬間、黒川の意識はゆっくりと遠のいていった。
 力を失って崩れ落ちていく身体を抱き止めながら、早田は小さく息を吐く。

「ふぅ…目を覚まさせてやるぜ………………哲哉」

 黒川の名を呟く早田の声は、どこか微かに寂しげな音色のように聞こえた。

<続く>

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