「同級生」 桜木 舞

---螺鈿細工の月--- 第七話

同級生より。

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1.裏腹
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 黒川に抱かれる事を受け入れると決めてから、舞の中で少しずつ変化が起き始めた。
 気を許せば崩れ落ちてしまいそうな心を支えるかのように、黒川との関係の中に自分の存在を刻み付ける。
 舞が見せ始めた変化に、黒川は内心で笑みを浮かべる。
 まだ完全ではないが、長年狙い続けていた獲物が手に落ちた、そんな笑みを浮かべていた。

 カレンダーに打たれる印も間隔が短くなり、ここ2〜3日は連続で舞を抱いていた。
 それが舞の目覚め始めた感覚を維持させる為のものか、単に黒川の欲望の表れなのかは判らなかったが、舞は表面上は素直に受け入れて、黒川の前に身体を開いていた。

「舞……」
 部下達に迎えに行かせた黒川は、玄関先で出迎えると、制服姿の舞へと唇を重ねる。
 その舌を受け入れ、自らも舌を差し出して黒川と舌を絡めあう。
 手から離れた鞄が床へと落ち、重たげな音を立てた。
「続きは…食事の後に」
 舞の唇を堪能すると、黒川はそう告げて自室へと戻って行った。
 残された舞は、床に倒れた鞄を拾い上げると、微かに上気した頬で同じように自室へと消えて行った。

 鞄を置き、制服を脱ぎ捨て、床に座り込む舞。
 黒川の口づけ一つで反応してしまう自分自身に自己嫌悪しながらも、高鳴ったままの鼓動に戸惑う。
 けして黒川自身を受け入れたつもりも、受け入れるつもりも無い。
 しかし、今の舞が黒川との関係を支えにしているのも事実だし、それを受け入れてもいる。
 自分が変わってしまったのか、黒川によって変えられてしまったのか、そんな事を考えながらも、心のどこかでは夜を待っている自分が居るのを舞は自覚していた。

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2.流れに身を任せ
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 普段と同じように、食事を終えた黒川は舞を伴って寝室へと向かう。
 黒川を受け入れている自分の身体。それが舞の足取りを重くさせていた。
 しかし、それもベッドの上に横たわり、黒川の手が触れ始めれば霧散してしまう。
 舞は自ら思考を停止させ、黒川との行為に没頭しようと意識して努めた。

 黒川の手が、白いニットのセーターの裾を持ち上げ、同じく白い飾り気の無い下着を露にさせる。
 舞は頬を上気させ、恥かしげに視線を背けた。
 黒川の手が下着へと伸びる。その瞬間、舞の白い肌が小さく震えた。
 何度抱かれても、何度精を注がれても、肌を見られる事に対する羞恥心は消えることが無い。
 身体の隅々まで黒川の網膜に焼き付いているというのに、舞はいつまでも初々しさを失わなかった。
 手の平を潜り込ませてブラのカップを押し上げ、豊かで張りのある乳房を外気に触れさせると、黒川はその肌へと唇を寄せていった。
「はぁ………」
 濡れた生暖かい感触を肌に受け、舞の愛らしい口元から甘い香りの溜息が漏れる。
 初々しさを残してはいても、その身体は着実に女として目覚めつつある。
 黒川の愛撫にも以前よりも敏感に反応し、恥らいつつも切なげな喘ぎを漏らすようになっていた。
 両手で乳房を寄せるように揉みほぐしながら、先端の突起を舌先で弄ぶと、舞の反応は明かに加速していった。
「はぅん………んっ…………くふぅ………」
 黒川の舌が尖った乳首を弄ぶ度に、舞は切なげに太股を擦り合わせて身悶える。
 丈の短いタータンチェックのスカートの裾は捲れ上がり、微かに白い布地が見え隠れしていた。
 だが決して黒川は手を下へと伸ばす事はなく、ひたすら掌の中で乳房を変形させ、舌先で乳首を弄び続けた。
(駄目……痺れちゃう…………)
 黒川の手によって開発されてきた舞の身体は、それ以上の快感を求めて蠢く。
 だが、羞恥心という鎖に繋がれた舞は、けしてそれを口にする事は出来ない。
 黒川にっとてはそれが不満であり、変わらぬ舞の魅力でもあった。
 上半身にのみ集中する愛撫に身を震わせつつ、それ以上の快楽を与えられずに身悶える舞。
 最初、それは単なる思い付きであった。
 しかし、それが結果としては正しい選択であったと黒川は知るのだ。
「自分で触れてごらんなさい」
 その言葉を聞いた瞬間は戸惑いの表情を見せた舞だったが、すぐに言葉の意味を理解して頬を真っ赤に染める。
 黒川は更に言葉を繋いでいく。
「見たいんですよ……舞のオナニーが」
 直接的な言葉を投げられ、舞は朱に染まった頬を背けた。
 しかし、湧き上がる衝動はその言葉に刺激され、更に激しく突き上げるように湧き上がってくる。
 行き場を無くした熱い塊。
 舞は背けた視線を再び黒川へと戻し、涙が零れ落ちそうな程に潤んだ瞳で見上げ、そして再び視線を逸らす。
 結論は最初から用意されていたようなものだった。
 黒川の手によって灯された官能の炎は、更に燃え上がる為の快感を求めていた。それに舞は逆らえない。
 シーツを握り締めていた手が解かれ、ゆっくりとスカートの中へと伸びていった。

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3.求められるがままに
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 初めは、ショーツの上から単調に擦るだけの稚拙な行為。
 しかし次第にそれは変化を見せ、的確に快感を紡ぎ出す動きへと変わっていった。
 染み出した愛液によって薄っすらと透けたショーツの上を、同じく溢れ出した愛液によって濡れた舞の指先が滑るように這う。
「あぁっ……んっ……はぁっ…!」
 見られているという事が舞の感覚を鋭敏にさせるのか、指先の動きに合わせて身体を震わせながら、舞は淫らな姿を黒川の視線に晒していた。
 黒川にとっては予想通りの反応。
 これまでの行為から、舞が羞恥心を煽られると燃え上がるのは解っていたのだ。
 目の前で自慰行為をさせながら、更に羞恥心を煽る為に、黒川は舞の乳房を揉みほぐし続けながら耳元で繰り返し囁く。
「そこが一番感じるんですか?」
「透けて形が浮き上がってますよ…」
「上手いですね…普段からしているんですか?」
「もっと大胆に動かしてごらんなさい」
 言葉をかけられる度に、舞の秘所から溢れる愛液の量が増すかのように見えた。
 指の動きも更に激しさを増し、このまま達してしまうかと見えた瞬間。黒川の手が舞の手を押さえつけた。
「……っ!?」
 張り詰めていた感覚のまま動きを止められ、舞は戸惑いと切なさの混ざり合った瞳で黒川を見つめる。
「イキたいですか?」
 口元を歪めながら、黒川は意地悪く問い掛ける。
 一瞬の間の後、舞の二つの瞳から涙の雫が零れ落ちた。そして顔を黒川の胸板に埋めて何度も頷く。
 胸元の舞の頭を撫でながら、黒川は満足げに笑みを浮かべると、股間の舞の手を払い除け、自分の手をショーツの中へと滑り込ませた。
「はぁんっ…!、んんーっ…!!」
 瞬く間に黒川は中指を舞の膣内へと滑り込ませ、激しく愛液の飛沫を飛び散らせながら出し入れさせ始めた。
 そのあまりの激しさに舞の腰が浮き上がり、激しい快感に頭を振って悶える。
「やっ…!、んぁっ!、くぅ……ふぁぁぁっ!!、あっ、あぁっ、あっああっ!!」
 絶頂寸前まで昇りつめていた舞の身体は、呆気なく黒川の指の動きで達してしまった。
「ひゃぁうっ……!!、んっ…駄目……イクっ、イクイクイクっ!、イっちゃうっ!、イっちゃうーっ…!!」
 黒川の身体に抱き付き、その激しい絶頂感に涙まで流しながら、舞は激しく達した。

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4.身体重ねて
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 まだ絶頂の余韻に震えている舞のスカートとショーツを脱がせると、黒川は両足の間に身を割り込ませ、狙いを定めて一気に貫いた。
「んくぅっ……!!」
 大きく背中を仰け反らせて、黒川の欲望の塊を受け入れる舞。
 黒川は舞の両足を抱え上げ、勢い良く腰をぶつけるようにして抽送を送り込んだ。
 腰が浮き上がり、露になった乳房が扇情的に揺れる。
 その美しく滑らかな髪を振り乱し、すすり泣くような喘ぎを漏らしながら、舞は絶頂の余韻から覚めやらぬままに再び昇りつめていく。
「あぅっ…!、んんっ……くはぁっ…!、あっ、んぁっ!、ひゃっ…んんんっ!!」
 全身を包み込む痺れるような甘く鋭い快感。
 それが黒川から与えられる全てであり、黒川と繋がっている唯一の物でもあった。
 心を許さぬまま快楽に溺れる。
 素直に感じ、黒川の身体を求める事が、舞にとって今可能な自分を表すただ一つの行為。
 例えそれが今だけの悪夢だとしても、今はそれで良かった。
 快楽に身を委ねてしまえば全ての不安は消え失せ、心地良い温もりを手にする事が出来るのだから。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あぁっ!!、だめっ…また…またイっちゃうっ…!」
 黒川の胸にしがみ付き、切羽詰った声で泣き叫ぶ舞。
 それを鋭い視線で貫くように見つめながら、黒川は更に抽送を加速させていった。

「ひっ……やぁっ!、んんっ……はぁんっ!!」
 揺れる乳房を荒々しく揉みほぐしながら、黒川は激しく腰を動かして舞を乱れさせる。
 自分がこれほど貪欲だったのかと思う程に、黒川は心の底から舞を求めて抱いた。
 自分の身体の下で乱れ喘ぐ可憐な、まだ少女と言える年齢の舞。いや、その容姿は美少女、突出した美少女と言える。
 自らの手で純潔を奪い、ここまで淫らな反応を見せるまでに仕上げた。そんな歓びが黒川の身体をつき動かす。
 だが、心のどこかで否定する声がするのも事実だった。
(まだだ……まだこんなものでは…俺は満足できない!!)
 舞の心の全てを手に入れ、欲望のままに抱き、犯す。
 それは決して手に入れられない夢のようにも思えていた。だが、諦めるつもりなど毛頭無い。
 いつか必ず、その望みの全てを実現させてやる。こうして舞を手に入れたように。
 黒川の中で新たな闇が広がっていった一瞬だった。

「もう……駄目っ……ひゃ…ひゃうっ!、……んぁっ…!、イクっ!、イっちゃうのぉっ……!!!」
 舞の膣内が淫らに蠢き、黒川の物を激しく締め付けた。
 その瞬間、黒川も舞の膣内へと勢い良く精を放つ。
 二人同時に達し、絶頂の余韻で荒い呼吸の舞を抱き締めながら、黒川は舞の上に崩れ落ちた。
 まだ、二人の身体は繋がったまま…。
 そして、どちらからともなく、互いの温もりを求めるかのように、唇を重ね合っていった。

 

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