「同級生」 桜木 舞

---螺鈿細工の月--- 第五話

同級生より。

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1.鼓動
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 迎えに来た黒川の部下達が運転する後部座席に揺られながら、舞の気分は暗く沈んでいく。マンションへの距離が縮まる毎に。
 前の座席からは下卑た薄笑いと、囁き合う声が聞こえる。
「この身体じゃ…黒川様がご執心なのも無理ないな」
「飽きたら俺達にもヤらせてもらえるかねぇ」
「へへへ、あの可愛い口にねじ込みたいもんだな」
 そんな言葉達を耳朶で受け流しながら、舞は黙って窓の外の流れる景色を見つめていた。

「申し訳ありませんでしたね、舞お嬢様」
 手が離せない仕事があると、部下に舞を迎えに行かせた黒川が詫びる。
 別に詫びる必要など無いのだが、そう言われてしまっては、舞は彼らについて黒川に何も言えなくなってしまった。
「いえ……」
 そう力無く答えると、舞は与えられた自室へと入って行った。
 その背中へと視線を向けていた黒川は、舞の背中が扉の向こうに消え去ると、再び机の上の書類へと視線を落とした。

「ふう…………」
 一つ大きな溜息を漏らし、鞄を机の上に置いた舞は制服姿のままベッドに倒れこむ。
 夕食までの一時が、今の舞に与えられた唯一の自由な時間。
(また今日も……抱かれなければならないの…?)
 誰に問い掛けるでもない心の声。答えは既に解っている。
 今朝、登校前に見たカレンダーには、今日の日付の部分に赤く印が打たれていた。
 それは黒川からの「今日、舞を抱く」と言う、無言のメッセージであり、合図なのだ。
 肉体の苦痛は無くなったとはいえ、愛してもいない男に抱かれるのは苦痛以外の何物でもない。
 そして舞が最も恐れているのは、黒川の態度。
 舞を抱く時にはあくまで紳士を装い、決して無理強いをする事が無かった。
 しかし、それが何時まで続くのかは解らない。
 言いかえれば、いつ黒川の行為がエスカレートするのか。それが舞の胸を苦しめていた。
(考えても…仕方ないよね…)
 決して救われる事の無い自分の境遇。
 いつか黒川に開放されるその時まで、ただ耐え続ける他に術は無いのだ。
 開放されるとして…だが。

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2.鍵
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 食事を終えると、珍しく黒川はサイドボードから洋酒のボトルを取りだし、それを一人で飲み始める。
 普段、舞を抱く日には、食事を終えると舞を自室へと戻し、頃合をみて先にシャワーを浴びてから舞を呼ぶのだ。
(今日はしないのかな…)
 舞の胸に淡い期待が過る。
 このまま黒川が酔いつぶれてしまえば、舞を抱くことは出来なくなる。
「お嬢様も付き合いませんか?」
 そんな事を考えていた舞に、不意に黒川が声をかけた。
 空のグラスを差し出して舞の方へと向けている。
「………未成年ですから」
 そう断るつもりだった。
 しかしそうすれば、黒川は気分を変えて舞を抱こうとするかもしれない。
 微かに酔った彼が、普段のように紳士であるとは言い切れないのだ。
 黒川に飲ませ続ける為と、舞はその申し出を受け入れた。
 リビングのソファーに並んで腰を下ろし、互いにグラスを傾け合う。
 何と言う酒なのかは解らなかったが、食前酒としてワインを嗜む程度の経験しかない舞には、とても強い物に感じられた。
「学校の方はいかがです?」
 酒の肴のつもりだろうか、黒川は隣に座る舞に語り掛ける。
「……変わりません」
 アルコールが回ってきたのか、微かに頬を染めた舞がそっけなく言い返す。
 黒川は苦笑を浮かべ、空になったグラスに新しい酒を注いだ。
「私の前でぐらい…その仮面を取ったらどうです?」
「私は仮面なんて付けてはいません」
 舞の空になったグラスにも酒を注ぎながら黒川は続ける。
「でも演じてらっしゃる」
「何をですか?」
「桜木家のお嬢様である事を。お父上の言う通りに、良家の子女である事を」
「…………」
 それきり、舞は黙り込んでしまった。
(この人は何を言っているの……)
 そう思いながらも、黒川の言葉が頭を離れない。
 確かに自分は演じ続けてきた。今もそれは続いている。
 父に言われるがままに習い事をし、良い娘である事を家でも学校でも演じ続けてきた。
 黒川は自分の前ではそれを止めろ言う。
(そんな事…出きるはず無い。私は桜木家の人間なのだ…)
「もう楽になりませんか?…舞…お嬢様」
「楽…に……」
 口にしているアルコールと一緒に、黒川の言葉が舞の心に染み込んでいく。
 グラスの中の液体を口に含み、黒川がそっと舞の肩に手を廻した。
 そして舞のグラスを取り上げ、不意をつくようにして唇を重ねる。
 黒川の胸板を両手で押して抵抗する舞。
 しかし口腔へと流し込まれるアルコールと同時に、次第にその力も弱まっていった。
(受け入れれば……本当に楽になれるの……)
 戸惑いながらも、黒川の唇を受け入れ始めている舞。
 繰り返しアルコールを黒川の口から飲まされ続けるうちに、自然と舞も舌を差し出して受け止めるようになっていた。

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3.扉
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 ソファーの背もたれに舞の身体を押し付け、細い肩を抱くようにして唇を重ねる。
「ん……んん……」
 挿し込まれた舌と同時に、黒川の唾液が舞の口腔へと流れ込む。
 それを躊躇う事無く嚥下し、黒川の舌に応えて自らも舌を差し出す。
(身体が……熱い………)
 激しく舌と舌を絡め合い、口腔を舌先で愛撫する。
 同時に黒川は片手で舞のブラウスの胸の釦を外していき、その柔肌を露にさせた。
 唇を重ねたまま掌をブラのカップに潜り込ませ、そのまま上に押し上げる。
 揺れながら露になった弾力のある乳房が外気に触れた。
 豊かなその脹らみを掌で弄びながら、黒川は唾液を送り込み、舌を絡め続けた。

「ふぁ……んんっ……」
 唇を開放された舞は、鼻にかかった甘い吐息を漏らしながら、黒川の愛撫にその身を震わせる。
 アルコールの為か気持ちの昂ぶりの為か、その頬は桜色に上気し、薄く開かれた瞳は濡れたように輝いていた。
 重ねていた唇を、今度は首筋から肩や胸元へと移しながら、黒川は舞の乳房を揉みほぐし続ける。
 黒川の唇と舌は掌と取って代わり乳房へと辿り着き、仕事を失った手は腰から太股へと下りていく。
 胸の突起を口に含んで尖らせた舌先で転がしながら、下へと降りていった手はスカートの上から太股を撫でる。
 舞は嫌がるような素振りは見せず、むしろ自ら進んで黒川の愛撫に身を委ねているかのようだった。
「あんっ……んくぅ……ふぁぅっ……」
 淡い色合いの膝丈のプリーツスカートの上から太股を撫でられ続けると、舞の両膝は震えるように動き出す。
 切なげに眉を寄せ、半開きの愛らしい唇からは絶えず甘い吐息を漏らし、桜色に染まった肌も露に身を震わせる。
(もっと…もっと触れて欲しい……)
 緩やかで焦らすような黒川の愛撫に耐えきれず、舞はそっと両膝を小さく開いた。
 黒川もすぐにそれに気付き、掌を太股から膝、そしてスカートの奥へと進めていった。
 太股の内側を優しく撫で上げながら掌は進み、飾り気の無いショーツへと到達する。
 そして人差し指で優しくショーツの上から秘所を刺激し始める。
「あふぅ……んっ……んあっ……!」
 黒川は肩に廻していた手で舞の顔を自分へと向け直すと、再び唇を重ねつつ指先を動かしていく。
 唇を塞がれた舞は、鼻腔から甘く潤った吐息をもらしながら、黒川の愛撫に身を震わせる。
 指先が蠢くショーツの中心では、次第に潤いが布地へと移り始め、微かな水音も耳に届く。
 舞は子犬のように舌を伸ばして黒川の舌を求め、焦れるような快感に膝を擦り合わせていた。
「んん………くふぅっ……んぁっ……」
 再び唇を開放された舞は、両手を黒川の首に廻してしがみ付き、肩に顔を預けて甘く喘ぐ。
 黒川の指先は絶え間無く小刻みに動き続け、舞のショーツは溢れ出した蜜で薄く透ける程になっていた。
(そんなに優しくされたら……私……もう………)
「黒川…さん………」
 そう呟くと、今度は舞の方から強く唇を重ねていった。

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4.滴り
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 激しく絡み合う舌が離れると、上気した頬と潤んだ瞳で舞は黒川を見つめた。
 それを見つめ返しながら黒川は舞の髪を撫でる。
「欲しい…ですか?」
 一瞬の躊躇いの後、舞は黙って小さく頷き返し、再び黒川へと抱きついて頬を摺り寄せる。
 一度強く抱き締めてから、黒川は舞をソファーに座り直させ、その正面の床へと膝を付く。
 瞳を潤ませて見つめている舞に軽く微笑み返すと、スカートの中へと両手を伸ばしていった。
 黒川の指がショーツの脇に触れると、舞は腰を軽く浮かせて手伝う。
 そして、ゆっくりとショーツが降ろされていった。

 両足から抜き取られたショーツは、その中心を愛液で派手に濡らしていた。
 それを見た瞬間、舞の頬の赤みが一気に増す。
 手にしたショーツを床へと置き、黒川は舞の両足を太股から持ち上げて開かせる。
 膝丈のスカートは捲くれ上がってしまい、黒川の視線の前に濡れて光る舞の秘唇が露になった。
「嫌……見ないで下さい……」
 恥ずかしげに視線を落としながら、舞は消え入りそうな声で呟く。
 持ち上げた足の片足だけを支え、滴る程に愛液を分泌させ続けている秘唇へと、黒川は指先を伸ばす。
「はぁっ…………んんっ……」
 淡い恥毛まで濡れて輝き、襞の一枚一枚が何かを求めて淫らに蠢いていた。
 その襞を指先で広げると、中に溜まった愛液が零れ落ちた。
 極限の羞恥に首筋まで桜色に染め、舞はその瞬間を待つ。
 指先で光る蜜を満足げに眺めると、自分のベルトへと手を伸ばしてズボンを降ろし、前の盛り上がったトランクスから自分の分身を取り出した。
 そして改めて舞の両足を抱え上げて、それを自分の肩へと乗せた。
「いきますよ………舞」
 黙って頷き返す舞。
 肉の襞を掻き分けるようにして、黒川の物の先端がゆっくりと舞の膣内へと埋没していった。
「くっ………くはぁっ………!」
 肺の中の空気を全て吐き出すような溜息を漏らす舞。
 黒川はゆっくりと根元まで埋没させると、身を寄せて舞へと唇を重ねた。
「ん………」
 そして、舌を絡め唾液を流し込みながら、腰を動かし始める。
 始めは緩やかに優しく、そして次第に強く激しく。
 溢れ出た蜜と粘膜の擦れる水音が静かな部屋に響き、それに重なるように舞の甘い吐息が旋律となって奏でられていく。
「あっ、やぁっ!、んんっ……はぁんっ!、んふぅ……ひゃうっ……!!」
 両手を黒川の腕へと添え、突き上げるような抽送に全身を激しく揺らす舞。
 形の良い豊かな乳房も激しく揺れ、その先端の突起が黒川の胸板に擦れて新たな刺激を生む。
(凄いっ……普段よりも……………感じちゃうっ………)
 それは黒川も同じだった。
 アルコールの影響なのか、普段の黒川を拒絶する壁が取り除かれた舞の膣内は、襞の一枚一枚がまるで別の生き物のように蠢き、激しく黒川の物を締め付けた。
(名器…というやつですか………しかしこれは……)
「くっ…」
 思わず唸ってしまう程、その快感は激しく黒川を責め立てた。
 経験の浅い少年であれば、入れた瞬間に果てていたかもしれない。
 アルコールによって感覚が鈍っていた事も幸いし、辛うじて堪える事ができたが、舞の経験の浅さを考えれば末恐ろしい事だった。

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5.波
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 繋がったまま何度も唇を重ね合い、二人は快感を貪り合う。
「舞…お前のここは、嫌らしく私を咥え込んで放さないよ…」
 意図的に舞の羞恥心を刺激するような言葉を耳元で囁きながら、黒川は巧みな腰使いで舞を貫く。
 アルコールという鍵で全てを解き放たれた舞は、自ら舌を差し出して黒川を求め、黒川の動きに合わせて淫らに腰を擦り付ける。
「んぁっ!、あっ、あっ、あっ、んんくぅっ……!」
 あまりの快感に感極まったのか、その瞳から涙の雫を零しながら、舞はすすり泣くように甘く喘ぎ続けた。
 この甘い調べのような声音に酔いながら、黒川は更に激しく舞を貫く。
 肉のぶつかる音と飛び散る愛液の水音が部屋中に響き渡り、官能的な調となって舞を耳朶から刺激した。
「はぁっ……はっ…んくぅっ…!!、ひんっ……あっ…あああぁっ…!!」
(もう…駄目……おかしくなっちゃうっ……駄目、駄目ぇっ……!!)
 黒川の身体の下で、舞の細い肩が小さく震える。
 小さな絶頂の波に襲われているのだろう、強く瞼を閉じて何かに耐えるような表情で喘いでいる。
 そして、その小さな絶頂の波は次第に大きさを増し、大きな波となって舞を包み込もうとしていた。
 自分の物を締め付ける舞の膣内の感触から、それを知った黒川が耳元で囁く。
「…イキそうですか?」
 黒川の言葉に、舞は暫しの逡巡を見せた後、小さく頷きながら消え入りそうな声で呟いた。
「…………はい」
 その返事に黒川の口元が喜色に歪んだ。
「イク時は…ちゃんと言うんだよ…舞」
 その言葉が終わる前に、黒川は更に抽送を激しくさせていた。
 二人の繋がった部分から愛液の飛沫が飛び散り、淫らな水音を大きく響かせる。
「ふぁんっ!、あっ、あっ、んんっ!、んっ、んくぅっ!、やぁっ……駄目ぇっ……!!」
 勢いを増した黒川の抽送に激しく頭を振っていた舞が、その顔を黒川の胸板へと押し付ける。
 両足は痙攣したかのように震え、黒川の背中に廻した指先は赤い筋を作っていた。
「中に…出しますよ」
 絶頂の波に飲み込まれている舞の隙をついて、黒川は軽い口調で言った。
 目の前に迫った絶頂に意識を奪われた舞は、自分でも気付かないうちにその言葉を受け入れていた。
 腰を擦り付けるように動きながら、黒川の背中に廻した手に力を込める。
「はいっ……!、んんっ…駄目っ………イっちゃうぅっ…………んぁぁぁぁっ!!!」
 跳ねるように腰を大きく震わせながら、初めての大きな絶頂へと達した舞。
 同時に黒川は舞の膣内へと、逆流して溢れかえりそうな程の量の精液を流し込んでいた。
 始めての舞の膣内への射精。
(たっぷりと…飲み込むんだ舞……フフフ……)
 狂喜乱舞しそうになる心を押さえて、黒川は最後の一適まで搾り出すようにして、その全てを舞の体内へと注ぎ込んだ。
 それはまるで、舞の心の隙間を埋めるかのように染み込んでいく。
(あぁ……熱い………)
 身体の奥に黒川の放った体液の温かさを感じながら、舞は絶頂の余韻に打ち震えていた。


 半分程萎えた物を舞の膣内から抜き出すと、それを舞の口元へと近づける。
「自分で綺麗にするんだよ……舞」
 初めて経験する激しい絶頂の余韻で虚ろな瞳をした舞は、緩慢な動きで舌を差し出し、自らの愛液と黒川の精液で汚れた物を、ゆっくりと舐め始めた。
 その表情は何かに満たされたようでもあり、何かを失ったかのようでもあった。
(明日の朝が…楽しみだよ…舞お嬢様)
 酔いが醒め、目が醒めた時に舞はどんな表情をするのだろう。
 そう考えながら、自分の物へと舌を這わしている、舞の髪へと指を伸ばす黒川だった。

 

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