夏を過ぎて
※四話目までは、後日公開予定です。
夏を過ぎて 第五話 「ん……ぴちゃ……ちゅ……」 全裸で横たわった高志の上に覆い被さるようにして、美咲が高志の胸元へと唇を這わせている。 自分がされるように、高志の胸へと舌先を尖らせて這わせながら、手は隆々とそそり立った男性器をゆっくりと擦り上げる。 舌先は胸板から筋肉質な腹部、そして下腹部へとゆっくりと進み、垂直に起立した男性器の根元へと辿り着く。 だが、すぐにはそれに触れず、今度は太股の方へと舌を進める。 そうやって高志の全身へと唇の跡を残していき、足の指まで唾液で濡らしてから、ようやく美咲は高志の両足の間へと身体を潜り込ませた。 丁度、美咲の目の前に高志の男性器が起立している。 それを見る美咲の双眸は熱く潤み、頬を上気させて嬉しそうに男性器を見つめていた。 「…ぢゅ……ぢゅぷ……ちゅ……んっ……」 茎の部分を根元からゆっくりと舐め上げ、先端の周囲へと丹念に舌を這わせてから、その愛らしい唇を開いて飲み込んでいく。 唇をすぼめたままゆっくりと喉の奥まで飲み込み、舌を先端に絡ませながら喉の奥で音を立てて吸い上げる。 そしてゆっくりと頭を上下させ始め、男性器を唾液で濡らしながらしゃぶっていく。 学校帰りなのだろう、制服を身に着けたままで高志の股間に顔を埋める美咲。 冷めた目でその様子を見下ろしながら、高志は手に取った煙草に火を点けて咥えた。 美咲の奉仕に満足するでも、美咲の痴態に喜ぶでもなく、その瞳はただ冷たく見つめ続ける。 例えるなら、それは家畜の価値を見定める商人の目。 (こいつも悪くわねぇんだが…そろそろ潮時かもな) 持ち前の口の上手さで美咲を丸め込み、もう何度も客を取らせて金を受け取った。 最近の美咲はその事でかなり精神的に参っており、高志との行為だけに安らぎを求めているように見える。 これ以上は流石に危険だと、高志の経験からくる勘がそう伝えていた。 (さて、どうやって捨てるか……あんまり追い詰めると、コイツ死にそうだしな) 美咲のように根が真面目なタイプは、手元に置いておく分には楽だが、別れ方が難しかった。 最近の高志は、美咲との行為の最中でさえ、その事だけを考えるようになっている。 (ま、適当にやるか…) とりあえず高志は問題を先送りにし、短くなっていた煙草を灰皿で揉み消す。 そして股間で上下している美咲の頭を押さえると、無言でその口内へと射精した。 「…んっ………んっ………んんっ………」 いきなりの射精にも、美咲はただ黙って吐き出された物を嚥下していく。 今の美咲にとっては、口内で射精される事だけでも、高志を感じられて喜びに変えられるようになっていた。 「…あ…あの………」 全てを飲み干して高志の股間から顔を上げた美咲が、潤んだ瞳で物欲しげに高志を見つめる。 だが高志は冷たく美咲に手を振ると、そのままベッドから降りて浴室へと向かってしまう。 「悪ぃ、疲れちまった」 「そ…そんな……」 高志が視界から消え、浴室を打つシャワーの水音が聞こえ始める。 部屋に一人残された美咲は火照った身体を持て余し、寂しげな表情で制服のスカートの中へと手を潜り込ませた。 「あっ……高志さん……高志さんっ……」 ショーツの中へと潜り込んだ手で、激しく自らを慰める美咲。 膣内へと進めた指を激しく出し入れさせながら、美咲は切ない喘ぎを高志の居ない部屋に響かせ続けた。 「ちょっと出かけてくる────────」 台所に居るであろう母親にそう告げて、履き古したスニーカーに足を滑り込ませて玄関を開ける勇次。 別に約束があった訳では無いのだが、机に向かっても勉強は手につかず、どこか心が落ち着かなかった。 或いは、窓の向こうに映る美咲の部屋に人気が無いのも、その理由の一つだったかもしれない。 時計の針は既にPMの9時を指している。 最近、この時間になっても美咲の部屋に明りが灯らない事が多く、それが勇次の心に棘のように刺さって何かを訴えてくるのだ。 (どこで何やってんだよ…美咲のやつ…) あても無く家を出たはずの勇次だったが、足は自然に美咲の姿を探して街へと向かっていた。 決して大きいとは言えない街だが、それでもたった一人を探し出すのは無理がある。 それでも勇次は、美咲の姿を追い求めて街を彷徨い続けた。 「やれやれ………そうだよな。街を歩いたって美咲に会えるとは限らないよな…」 一時間ほど歩いただろうか。流石に勇次も疲れて人気の無い公園のベンチへと腰を降ろしていた。 そして暖かい缶コーヒーの温もりを掌に感じながら、最近の美咲の様子を思い出してみる。 どこか寂しげで、悲しげな横顔。教室の中でも笑う事は少なくなり、一人で居る事も多くなった。 そして長年付き合いのある勇次だから解る変化。 ちょっとした仕草や言葉使い、そして表情から明らかに変わった点が美咲にはあった。 簡単に言ってしまえば、それは成熟した女の色香にも似た雰囲気。 (やっぱり美咲も……) 自分がこの夏に女を知ったように、美咲も男を知ったのだと勇次は直感していた。 その直感は正しかったのだが、勇次の想像するものとは全く違っている。 勇次にしてみれば、自分と同じように美咲に彼氏でもできたのだと思うのが普通で、まさか高志のような男の掌で弄ばれているとは思い至らない。 自分の良く知った幼馴染が、淡い想いを抱いてもいた相手が、どこの誰とも解らない相手に抱かれている。 顔の見えない男の下で悶える美咲の姿を想像し、勇次はチリチリと胸が焦げるような嫉妬を覚え、同時に奇妙な興奮も覚えていた。 「……何考えてんだよ俺は…」 そう吐き捨てるように呟き、飲み干した缶をごみ箱に投げ捨てると、勇次はベンチから立ち上がった。 その瞬間、公園の向こうの通りを歩く人の姿が目に止まる。 自分と同じ高校の制服姿の少女と、背広姿の男の二人組。その少女の横顔は、間違いなく美咲のものだった。 「美咲…!?」 慌てて駆け出した勇次だったが、通りに出た時には既に二人の姿は消えていた。 「くそっ……どっちだ…どっちへ行ったんだ…」 焦った様子で周囲を伺い、二人が消えたと思える方向を見当つけて駆け出す勇次。 男と並んで歩く美咲の姿を見た時から、勇次の中で何かが警鐘を鳴らしていた。 それは「追うな」と告げていたが、今の勇次はそれに従う気など毛頭無く、ただひたすら美咲の姿を追い求めて街を駆ける。 この時間に制服姿の少女など珍しいはずだ、すぐに見つかる。そう自分に言い聞かせて走り続ける。 (美咲……美咲………!) 息は切れ、額には汗が浮かんでも勇次は走り続けた。 しかし、その甲斐も無く美咲の姿は最後まで見つける事ができなかった。 「ちくしょう……」 街中を駆け巡って探し回った挙句、元居た公園へと戻ってきてしまった勇次。 完全に見失ったと諦めて、再びベンチへと疲労困憊の様子で腰を降ろす。 その時、疲れ切って夜空を見上げた勇次の頭に、ふと違う考えが浮かび上がってきた。 ひょっとしたら、もう美咲は家に戻っているのかもしれない。 一緒に歩いていたように見えたのも偶然で、美咲は家へと帰る途中だったのかもしれない。 そう考えると、必死になって街を駆け回った自分がとても滑稽に思え、自然に勇次の口に笑みが浮かぶ。 「……そうだよな…部屋に戻れば、美咲の部屋にも明りが点いてるかもな…」 何がそんなに自分を焦らせたのか、呆れたような表情でベンチから立ち上がると、勇次は公園を横切って家へと向かう。 そして公園内に設置された公衆便所の前を通り過ぎようとした時、それは聞こえて来た。 (…………何だ?) 夜風に乗って微かに耳に届く声。それは明らかに若い女の嬌声だった。 比較的敷地の広い公園なため、深夜になれば公園内で事に及ぶカップルも多い。 そんなカップルの一組だろうという考えが、まず勇次の頭に浮かんできた。 しかし、心のどこかでそれを否定する声も、同時に響いてきていた。 「………………まさか…そんな…」 微かに聞こえる嬌声。それはどこか聞き覚えのある、懐かしい声音。 それが導き出す答えを必死に否定しようとするが、耳朶へと潜りこんで来る声音がそれを許さない。 間違いなく、それは美咲の声だった。 (……そんな……美咲が……) 不安にざわめく心を必死に落ち着かせながら、勇次は声の聞こえる方へと足音を忍ばせて歩き始める。 街の喧騒が遠く小さく聞こえる中、その嬌声は次第にはっきりと勇次の耳に届きだす。 「美咲が乱暴されているのでは?」そんな考えも浮かんだが、その声は明らかに喜びの因子を含んでいる。 勇次の進む先では、間違いなく美咲が自らの意思で行為に及んでいるのだ。 「……!!!!」 木々の間から挿し込む月明かり。 雑木林の間から見える先に、先程見た背広姿の男と美咲の姿があった。 木に手をついた美咲は男に向かって尻を突き出し、制服のスカートは腰まで捲り上げられている。 そして男は背後から美咲に挿入していた。 「あっ…あんっ……あんっ……」 ブラウスの胸元は開かれ、男の両手はそこへ潜り込んで美咲の乳房を揉みほぐしている。 美咲は男の抽送に合わせて全身を前後に揺らし、その髪を振り乱していた。 (そ、そんな……美咲が…何で…) 勇次の知る美咲の性格なら、いくら交際相手でもこんな場所で行為に及ぶとは思えない。 大人しくて控えめで、真面目で内気な性格で、勇次以外の男子生徒とはまともに口も聞けなかった美咲。 それが今、勇次の目の前で男に貫かれ、淫らに腰を振って喜びの声を上げている。 「美咲ちゃんだっけ…君も純情そうな顔してるわりに…いやらしい子だねぇ」 「やぁ…ん……あっ、んんっ……美咲……エッチするの好きなの……だから…もっと……もっとしてぇ……あんっ…!」 勇次の思考が完全に停止した。 想像できない美咲の姿に驚き、戸惑っていた勇次だったが、今の今まで相手は美咲の交際相手だと思っていた。 だが、それは男の言葉によって否定された。 美咲は見ず知らずの相手と行為に及び、痴態を見せ付けながら媚びてみせているのだ。 「でも、俺もう限界かも……ねぇ、出していい?」 「あんっ、あんっ……んっ…いいよ……美咲もイクから………オ○ンコに出していいよ……んんっ…!」 「よし……出すぞ!」 「イッちゃうっ、美咲…イッちゃうよぉっ…!、出してっ…お兄さんの精液……美咲のオ○ンコに流し込んでっ…あああぁっ!!」 呆然とする勇次の前で、男は呻きながら美咲の膣内へと射精した。 月明かりの下で、美咲が知らない相手に抱かれて絶頂に達し、自ら精液を流し込まれる事を望んだ。 あまりに衝撃的なその光景に、勇次は何も言葉を発せず、黙ってその場を後にした。 END |