放課後Re 第五話

 

放課後Re 第五話

登場人物
 高崎 亜由美(たかさき あゆみ)
 坂崎 浩介(さかざき こうすけ)
 木村 雄二(きむら ゆうじ)

 亜由美が木村に対して身体を差し出す最大の理由。それは坂崎浩介の退学を防ぐ事。
 木村に繰り返し抱かれて、若く瑞々しい身体が秘めていた性感を目覚めさせられ、身体に引きずられるようにして、心までもが次第に木村へと向きつつある今でもそれは変わらない。
 亜由美にとって浩介は特別な存在であり、彼が再び前を向いて歩いていけるように、浩介の退学だけは絶対に譲る事のできない事なのだ。 だからこそ、例え身体だけでなく心までも木村に捧げる事になったとしても、浩介の存在が亜由美の心から消える事は無かった。

 だがしかし、運命と言う名の現実はあくまでも無情で、冷徹に亜由美の望みを断ち切ろうとする。
 放課後、いつものように木村に教科室へと呼び出された亜由美は、木村から告げられた言葉に絶句していた。

「坂崎浩介の退学が決まった」

 比喩などではなく、本当に亜由美は目の前が真っ暗になった。
 突きつけられた現実のあまりの衝撃に、その場で気を失いかけてしまったのだ。
 崩れ落ちる亜由美を慌てて抱き支えると、その耳元で木村は更に言葉を続ける。

「私にはどうする事もできなかったんだ……何故なら、これは坂崎の意思による自主退学なんだよ。高校を中退して働くそうだ…」

 学校側の処分ではなく、浩介が自ら退学する事を決めたのだと、木村は何の感情も感じ取れない声で言った。
 身体を差し出し、純潔を奪われてまで退学処分を止めてもらったと言うのに、亜由美の努力など気付きもせず、浩介は安直な道を選んだ。
 悲しみと同時に、浩介に対してやり切れない思いが亜由美の心に渦巻いていく。自分はいったい今まで誰の為に何をしていたのだろうかと。
 木村の腕に抱き支えられた亜由美の頬を、涙が滴となって伝い零れる。

(……浩介君……どうして……どうしてなの…………酷いよ……)

「坂崎はお前の気持ちを裏切ったんだ。亜由美…これで分っただろう、誰がお前の事だけを考えているのか……」

 言葉と同時に、亜由美の身体を支えていた手が、その身体を撫で回すかのように動き始める。
 背中から腰、そしてスカートの上から尻を撫で回しつつ、亜由美の耳朶へと吐息を吹きかけるようにして木村は囁き続ける。
 亜由美は小さな嗚咽を漏らしながら、心ここに在らずと言った表情で木村の声を聴いていた。

「亜由美…お前を愛しているのは私だけだ…心も…身体も…全て私のものだ…亜由美」

 そう言って木村が覗き込むようにして顔を近づけると、亜由美は無意識のうちに目を閉じ、木村の首に抱きつくようにして唇を差し出していた。
 浩介に裏切られたという気持ちが強いのだろう、半ば自暴自棄になった亜由美は、自ら積極的に舌を挿し入れ、媚びるように鼻を鳴らす。
 木村もそれに応えて亜由美の身体を両手で抱きしめ、激しく舌を絡めて濃厚な口づけを交わす。
 その姿はまるで、改めて木村に対して隷属を誓っているかのようにも見えた。

「……クッ!………亜由美………っ!!」

 不意に木村は両腕の中から亜由美を開放すると、険しい表情で口元を抑える。その手元からは赤い筋が零れ落ちていた。

「…ごめんなさい…先生………私……私っ………」

 思いつめた様な表情で木村を見つめた亜由美は、そのまま逃げ去るようにして教科室を飛び出して行った。
 木村は黙ってその姿を見送ると、椅子に座って改めて口元を拭う。
 舌を噛まれて逃げられたと言うのに、その表情は薄っすらと笑みを浮かべており、目の奥には妖しげな光が爛々と輝いていた。


 木村の元を飛び出した亜由美は、居るのかどうか分らない浩介の姿を求めて、放課後の校内を彷徨い歩いていた。
 教室を始めとして、浩介の居そうな場所を順に回っていくが、どこにもその姿は無い。
 当然だろう。既に退学を決めた生徒が、学校に何の用があると言うのか。次第に亜由美の足取りも重たくなり、力なく廊下を歩いていた。
 もう校内には居ないのだと諦めて帰宅しようと決めたその時、職員室の前を通り過ぎようとした亜由美の目の前で扉が開いた。
 
「…浩介…君…」
「………あ…」

 退学に関する話でもしに来ていたのだろう、職員室から出てきた浩介と、その扉の前を通り過ぎようとしていた亜由美とが出会った。
 一瞬、何かを言いかけた浩介だったが、亜由美を一瞥してそのまま横を通り過ぎようとする。だがその瞬間、亜由美の頬を涙が伝うのを見て、その足が止まった。

「…………亜由美…どうした…」
「…浩介君っ……!」
「ッ!?」

 涙を拭おうともせず、亜由美は浩介の胸へと飛び込むようにして抱きつく。
 まさか校内で亜由美がそんな行動をするとは思いもしなかった浩介は、ただ戸惑いながらも、自分の胸の中で嗚咽を漏らす亜由美の肩をそっと抱き寄せる。
 そして泣きつづける亜由美を促して、肩を抱いたまま職員室の前から並んで歩き出した。

「…何かあったのか?……それとも、やっぱ俺の事……なのか?」

 道すがら、涙の理由を聞こうとする浩介だったが、亜由美はただ俯くばかりで何も答えない。
 浩介と会って泣き出した事から、その理由に自分が関わっているのだろうとは思いながらも、戸惑いを隠せない浩介だった。
 一方の亜由美も浩介を探していたのだが、いざ出会ってみたら何を言ってよいのか分らず、ただ涙が溢れてくるばかりだった。
 だが、無言で歩き続けてはいても、互いの胸の中では様々な思いが交錯しているに違いない。
 亜由美もこれまでの事を全て思い出し、家までの道程の中で、それを浩介へと告白する覚悟を決めていた。

(……きっと……きっと解ってくれる……浩介君なら……きっと……)

 穢れた自分を曝け出すという恐怖が無い訳ではなかったが、浩介への想いがそれを凌駕していた。
 そして二人は、並んで建つ互いの家へと帰ってきた。

「亜由美」

 心配そうな表情を見せる浩介に対して、亜由美は俯いたままその手を浩介の手へと伸ばした。
 そして、やや強引に浩介の手を握ると、浩介の顔は見ないまま言った。

「話したい事があるの……部屋…来ない?」
「あ、あぁ」

 思いつめたようなその声に気圧されながら、浩介は頷き返す。
 亜由美はその返事を聞き終えると、浩介の手を握ったまま自宅の玄関の鍵を開けた。
 両親とも不在なのか家の中に灯りは無く、暗い家の中を電灯のスイッチを入れながら亜由美は浩介の手を引いていく。
 幼い頃は何度も互いの家を行き来しており、懐かしい記憶と共に、浩介は亜由美に続いて階段を昇っていった。
 亜由美の部屋の扉の前には、これもよく見覚えのあるネームプレートがあり、幼い字で「あゆみのへや」と書かれていた。

「……久しぶりだな」

 思わず呟いていた浩介の言葉に、その浩介の手を握る亜由美の手の平に力が込められる。
 そして改めて覚悟を決めると、綺麗に片付けられた部屋へと約五年振りに浩介を招きいれた。

「…変わってないな………」

 小さな洋服ダンス、木製のシンプルな勉強机、赤いパイプベッド、全てが記憶の中の亜由美の部屋と同じだった。
 そして昔と同じようにベッドの端へと腰を降ろすと、改めて亜由美へと向き直った。

「で、何があったんだ…話してみろよ」

 浩介に対して正対して立った亜由美は、両手でスカートの横を握り締めながら、俯いていた視線を浩介へと移した。
 そして最後の覚悟と同時に息を飲み込み、乾いたその唇をゆっくりと開く。

「………………私ね………………………木村先生に…………………………抱かれた………」

 たっぷりと時間をかけてそれだけを言い終わると、止まっていた涙が再び双眸から溢れ出す。
 亜由美の口から言葉が紡ぎ出されるうちに、それを聞いていた浩介の表情は瞬く間に険しくなっていた。

「…もちろん…嫌だったんだよ……でも……でもねッ………浩介の退学処分を…取り消してもらう為には………仕方なかったの…」
「………………そん…な…」
「なのにどうしてッ…………どうして…学校辞めちゃうの…私…何の為に…」

 後はもう言葉にはならなかった。
 亜由美はただ嗚咽を漏らし続け、浩介は両手の拳を握り締めて、視線を床へと落として身動き一つしていない。
 二人とも、その肩を小刻みに震えさせていた。
 そしてどれくらいの時間が経過しただろうか。不意に浩介が立ち上がると、複雑な視線で亜由美を一瞥し、そのまま側を通り過ぎようとする。

「……浩介君……」
「…あの野郎………ブッ殺してやる!」
「止めて!……もうこれ以上……無茶しないで……」

 慌てて浩介にすがり付いて引き止めると、亜由美は必死になって懇願する。
 木村に手を出せば、浩介の人生は完全に終わってしまう。それだけは何としても避けなければならない、そんな思いで必死に引き止めた。
 浩介は怒りで震える拳を、手の平に爪の跡が付く程に握りしめ、天を仰いで怒りの咆哮を上げていた。

「……くそうッ!!」

 自暴自棄になり、似たような仲間達と無為に過ごした日々の影で、亜由美がそんな目に合っていたと知り、浩介は木村への怒りと同時に自分自身への怒りにも打ち震えていた。
 ここ数ヶ月は疎遠になっていたが、目の前の少女は間違いなく自分が想いを寄せていた存在である。
 そんな亜由美が、自らを犠牲にしてまで必死に浩介の退学処分を防いでいたのに、安直な考えで違う道を選択してしまった自分自身へと、激しい怒りと憤りが燃え上がっていた。

「……もういいよ……もういいの………浩介君……」


 嗚咽を堪えながらそう呟く亜由美を、浩介は堪えきれなくなった想いと同時に激しく抱きしめていた。
 突然の事に一瞬驚きの表情を見せた亜由美だったが、木村よりも遥に逞しい腕に抱かれて、その表情にようやく安堵の色が浮かぶ。
 暖かな温もりが懐かしい香と共に全身を包み込み、それによって全てが癒されていくような、そんな気すらしてしまう。
 抱きしめられた浩介の背中へと亜由美も手を廻し、その厚い胸板に頬を預けて瞳を閉じて、ようやく自分の居場所へと戻ってきたのだと実感した。

「亜由美…」
「……浩介君」

 そして二人は互いの名前を囁き合い、まるで吸い寄せられるかのように唇を重ねていった。
 ゆっくりと唇が重ねられ、それが一度離れて二人は見つめあい、再び唇は重ねられていく。
 二度目の口づけは一度目よりも長く、探るように控えめに差し出された浩介の舌を、亜由美は優しく受け止めて導いていった。
 唾液を飲み干し、互いの口腔を舌先で愛撫し、舌と舌とを激しく絡め合う。
 全ての思いを乗り越えて、すれ違っていた時を取り戻すかのように、濃厚な口づけが深く刻まれていく。

「……いいのか?」

 名残惜しそうに唇が唾液の糸を引きながら離れると、浩介はやや不安そうな面持ちで亜由美の顔を覗き込む。
 その短い言葉の意味を正確に理解し、頬を赤らめた亜由美は俯きがちに小さく頷き返す。

「…初めてはあげられなかったけど………私、ずっと………ん……んっ……」

 言葉尻をかき消すかのように再び唇を重ねる浩介。
 今度は抱きしめていた両腕から亜由美を解放し、背中から腰、そして以前より柔らかく成長した尻へと手を伸ばしていく。
 亜由美はされるがままに身を任せ、浩介の差し出す舌に夢中で舌を絡めていた。
 浩介の手は制服のスカートの裾を持ち上げるようにして、柔らかな膨らみを包み込むショーツへと達し、その上から両手の平で包み込むようにして亜由美の尻を愛撫する。
 木村のように巧みさは無いものの、自分が想いを寄せた相手に愛されているという事実が、亜由美の性感を刺激する事を手伝っていた。

「あふぅ………ん……んん………はぁ…………」

 鼻腔から甘い香の吐息を漏らしながら、全身に広がる甘美な刺激に太股を擦り合わせる亜由美。
 尚も濃厚な口づけを交わしつつ、浩介の手は更に大胆な動きを見せ、激しく亜由美の尻を揉みしだいていく。
 淡いブルーのストライプのショーツが、手の平の下で激しくその模様を歪める。
 若さ故のやや荒々しい浩介の愛撫にも、それすら自分への想いの激しさとばかりに、亜由美の気持ちは更に昂ぶっていく。

「亜由美………」

 再び唇を開放した浩介は焦る気持ちを必死に抑え込み、亜由美の制服を丁寧に脱がせていく。
 上着とスカートを脱がせて下着姿になった亜由美を見つめ、更に下腹部を熱くさせながら下着へと手を伸ばし、まずは乳房を露にさせた。
 小さな布地に包まれていた乳房が零れ落ちると、浩介は思わず息を飲んで魅入ってしまった。
 瑞々しく張りのある乳房は立っていても上を向いて形を崩さず、先端の桜色の突起は控えめながら固く尖って自己主張している。
 そんな浩介の視線を感じ、亜由美は恥かしげに胸元を両手で覆い隠した。

「あ……ごめん……」

 我に返った浩介が気まずそうに視線を反らすと、今度は亜由美が浩介へと手を伸ばし、シャツの釦へと指をかけた。
 愛しそうにシャツを脱がしていく亜由美の表情に、緊張が続いていた浩介の心も、少し落ち着きを取り戻していた。
 だが、シャツを脱がし終えた亜由美の手がベルトへと伸び、ズボンを脱がせてそのまま下着へと伸びた瞬間、浩介は戸惑った。
 戸惑う浩介を置き去りにして、亜由美はその場に膝をつくと、浩介の下着をゆっくりと降ろしていく。
 そして目の前に飛び出してきた若々しい男性器を目の前にして、思わず息を飲んでしまった。

(…これが……浩介君の……………)

 自然に手が伸びて男性器に添えられ、ゆっくりと艶やかに濡れた唇が近付いていく。
 その光景を見下ろしながら、浩介は激しい喉の渇きを感じていた。

「……浩介君……亜由美の口で…気持ちよくなってね……」

 そう呟く瞳の輝きは、浩介の初めて見るものだった。

「…んっ……ちゅ………ちゅっ……」

 透明な体液が染み出している先端へと軽く口づけすると、おもむろに舌を伸ばして先端部分へと這わせていく亜由美。
 丹念に唾液を塗すように先端を舐め、充血して血管の浮き上がった茎の部分を、指先で輪を作るようにして擦り上げていく。
 木村に教え込まれた全てを駆使して、亜由美は気持ちの入った奉仕を繰り返す。
 浩介は初めて味わうその強烈な快感を必死に堪えながら、つい数ヶ月前までは初心な少女だった亜由美が、ここまで巧みな性技を身に付けている事に驚きを隠せなかった。
 そして亜由美を汚した木村に対する怒りや、嫉妬にも似た感情よりも、自分の知らない間に淫らに成長していた幼馴染に、浩介は抑えきれない興奮を覚えていた。

「…んっ……んっ……ぢゅっ……ぢゅぷっ……」

 男性器を先端から口に含み、口内で舌を絡めながら頭を前後に動かして、熱心に口淫を続ける亜由美。
 その舌使いはまるで、舌が別の生き物のように複雑に動き、経験の浅い浩介には強烈過ぎる刺激だった。
 反り返った男性器は唾液に濡れて淫猥に光り、口淫の発する淫らな水音が部屋中に充満し、二人を包み込む空気が濃度を上げていくかのように思えた。
 亜由美は上目使いに潤んだ瞳で浩介の様子を覗いながら、教え込まれて身に付けた巧みな舌使いを駆使して、浩介を射精へと着実に導いていく。
 一方、気を抜けば今にも暴発してしまいそうな下半身に意識を集中して、浩介は必死に亜由美の奉仕を受け止めていた。

(…くぅ………もう駄目だ………)

 額に汗を浮かべながらも堪えつづけた浩介だったが、圧倒的な経験の差を埋める事はできなかった。
 亜由美が意識的に歯を先端に軽く触れさせた瞬間、浩介は亜由美の頭を抱えるようにして、湧き上がる精液を口腔へと放ってしまった。
 声にならない叫びを上げながら、膝と腰を震わせて大量に放たれる精を、亜由美は巧みに舌を使って受け止め、口の中いっぱいに溜め込んでいく。
 そして最後の一滴まで注がれたのを確認すると、男性器から口を離し、浩介を見上げながらゆっくりと嚥下していった。

(…あ……亜由美………)

 たった今、自分が放った精液を飲み干していく幼馴染の姿に、萎えかけていた浩介の物は既に勢いを取り戻しつつある。
 喉を鳴らしながらそれを嬉しそうに見つめていた亜由美は、微かに白濁した物が溢れた口元も拭わず、床に腰を降ろしたままの姿勢で囁いた。

「……浩介君………して……」
「…あぁ……」

 浩介は無性に喉が渇き、その声もやや擦れて喉に貼り付く。
 全身を軽い虚脱感が包み込んでもいたが、それでも湧き上がる衝動は勢いを失わず、浩介は亜由美をベッドへと寝かせると、足元に廻りこんでショーツを降ろしていった。
 既に見た目にも明らかな程にショーツには染みが広がっており、両脚を軽く開かせるとそこは簡単に綻んで開き、奥に見える小さな窪みからやや粘性のある愛液が浩介の目の前で零れ落ちた。
 まるで呼吸するかのように収縮を繰り返す秘腔は、豊富な地下水を湧き出させる泉のように、絶え間なく淫らな蜜を溢れさせている。
 暫くその光景に魅入ってしまっていた浩介だったが、我に返ると亜由美の両脚を抱えるようにして太股に乗せ、反り返った男性器を押さえつけるようにして狙いを定めた。

「…いくぞ……」
「…いいよ……来て、浩介君………ん……んんッ!」

 柔らかな肉襞を押し広げるようにして、燃え滾る欲望の証しである肉の塊は、亜由美の膣内へと進んでいく。
 その内部の感触に全身を震わせながら、浩介は残りの全ても埋没させると、一つ大きく息を吐き出して亜由美を見下ろした。

「入った…」
「………うん………やっと……やっとだね……」

 自然に溢れ出してくる涙を堪えようともせず、涙で滲んだ視界の向こうに居る浩介を見つめ続けた。
 大きな擦れ違いを乗り越えて今、ようやく結ばれたのだと実感を噛み締めながら、亜由美は始まった抽送に身を任せた。

 舌や唇からの快感とは異なる、複雑で何とも言えない膣内の締め付けを味わう余裕も無く、浩介は一心不乱に腰を動かしていた。
 つい今し方放ったばかりだというのに、気を許せばすぐにでも再び精を放ってしまいそうになる。そんな強烈な快感に耐えるには、ただひたすら動き続けるしかない。

「あッ…あんッ……んぁっ……あぁっ!」

 浩介の動きの激しさを示すかのように、亜由美の乳房は前後に激しく揺れ動き、年月を刻んだパイプベッドが悲鳴をあげる。
 切ない喘ぎと乱れた吐息、額から滴り落ちる汗、乱れていく純白のシーツの海。
 もう少し経験があれば、浩介もある程度の余裕を持って亜由美を抱けたのかもしれない。
 だが、現実には獣のように荒々しく腰を突き動かし、柔らかな膣内を蹂躙する事しかできかなった。

「はぁ……はぁ……はぅんっ…!」

 それでも亜由美は歓喜の喘ぎを漏らし、浩介の動きに合わせて自然に腰を擦りつけていた。
 そして終わりは呆気なく訪れる。
 ひたすら腰を振り続けた浩介は、込み上げる射精感を堪える事ができず、そのまま亜由美の膣内へと放っていた。

「………ごめん…」

 申し訳なさと気恥ずかしさで顔を背けながら、浩介の口をついたのはその一言だった。
 亜由美が性的に満足していないのは明らかであり、自分の不甲斐なさに浩介は情けなくなる。
 だが、亜由美はそんな事は関係無いとばかりに、浩介の頬へと両手を伸ばし、精一杯の笑顔を浮かべてみせた。

「…いいの……嬉しかった……ありがとう…」

 その言葉で救われはしなかったが、それでも浩介は亜由美の顔を正面から見つめる事はできた。
 そして二人はこの日何度目かの口づけを交わし、愛の言葉を囁きあった。



 ────深夜

 浩介も自宅へと戻り、仕事から帰ってきた両親も既に就寝している。
 そんな中、亜由美が足音を忍ばせて玄関から現れ、隣りにある浩介の家の二階、既に灯りの消えた浩介の部屋の窓を一瞥し、静かに夜の闇へと紛れていった。