Spring fine
Spring fine 登場人物:新堂 衛(しんどう まもる)、新堂 美薫(しんどう みか) 日本の学校が四月から始まるというのは、本当に素敵な事だと思う。 美しい桜の花が舞い散る中を、真新しい制服を着て入学する事ができるのだ。 私も今年から高校へと進学する。 後一週間もすれば新しい生活が始まり、クローゼットの前にかけられた制服を着て通学する毎日になるのだ。 第一志望の高校には落ちてしまったが、こうして制服を眺めていると、それも悪い事ではなかったような気がする。 第二志望だった高校の制服は、第一志望の物に比べてデザインも色も私の好みに合う。 「美薫、また制服を眺めてたのか?」 半分程開いた扉から、兄の衛が部屋の中を覗き込む。 地元を離れて東京の大学に通っているのだが、こうして休みになると実家に帰ってくる。 両親は別に帰って来いとは言わないのだが、兄は何故か休みに入ると直に実家に戻っていた。 「…うん」 まるで自分が遠足の前日にリュックの中身を確認している小学生のような気がして、私は少しだけ恥かしくなった。 制服が届いたのは一週間前。それ以来、時間があれば制服を眺めているのだ。 「聖霊か…」 「…そうだよ」 私が通うのは私立聖霊女子学園。 名前の通り女子高で、地元では「お嬢様学校」として有名でもある。 そして制服の可愛らしさでは、地元でも五本の指に入るだろう。 「可愛い制服だもんな。お前が眺めっぱなしなのも判るよ」 「…へへ」 少しだけからかうような響きを含ませて笑うと、衛兄さんは自分の部屋へと戻って行った。 兄は私がこの制服を着て通学する姿を見る事なく、私の入学式の前日には東京へと戻っていく予定だ。 私が一番見せたかった相手に見せられないのは残念だが、せめて制服姿だけでも見せておきたい。 私は兄の事が好きだ。 幼い頃から兄は私に優しかった。 大人しくてなかなか友達のできなかった私と、いつも一緒に遊んでくれていた。 周りの友達にからかわれる事もあったみだいだけど、私にはそんな素振りすら見せなかった兄。 兄が東京の大学へ行くと言った時、私は泣いた。 一晩中、泣いて泣いて泣いて真っ赤になった目で、翌日私は「頑張ってね」と兄に言った。 その時、私は気がついたのだ。兄の事が好きなのだと。 「…お兄ちゃん…」 中学・高校とバスケットを続けていた兄は、背も高くて体格も良く、顔だって妹の私の贔屓目だとしても悪くはない。 学校でも人気があったようだし、私のクラスメイト達も兄の噂話をしたりしていた。 私にとって自慢の兄だった。 そんな兄が私の元から離れていく。 当時まだ中学校に入ったばかりの私は、兄が旅立っていくその日に間に合うようにとセーターを編んだ。 『お兄ちゃん……これ…』 『これ…美薫が編んだのか?』 『……うん』 『そっか………サンキューな』 編目もバラバラで、けして出来の良いとは言えないセーター。 でも兄は嬉しそうにそれを受け取り、「大切にするよ」と言ってくれたのだ。 そして兄はそれを手に、一人東京へと旅立っていったのだ。 兄は今でもそのセーターを大切にしてくれている。 冬休みに帰って来る時には、必ずそれを着て家へと戻って来てくれるのだ。 休み毎に兄が帰ってくる度に、私は駆け出しそうな自分の心を必死に押さえ込む。 許される事ならば、兄にこの身の全てを任せてしまいたくなる。 でも、それは決して許される事ではない。 兄が家に居る間中、顔では兄に笑顔を浮かべて話しかけながら、行き場の無い気持ちを持て余していた。 休みが終わって兄が東京に戻る時には、寂しさと一緒に安堵する。 兄妹という関係を壊さずにいられた事を。 今回の休みでも、私は絶対に気持ちを打ち明ける事は無いだろう。 だからせめて、東京に戻ってしまう前に兄に見せておきたい。 成長した自分の姿を。真新しい制服に身を包んだ自分を。 「……お兄ちゃん?」 「んー……美薫か?、どうした?」 両親は既に寝静まっている。兄も寝てしまったかと心配したが、控えめな呼びかけに明確な返事が返ってきた。 私はそっと扉を開けて、久しぶりに主を迎えた兄の部屋の中を覗う。 兄はパイプベッドに腰を降ろし、父から譲り受けた型の古いビデオカメラを操作していた。 「それ、お父さんに貰ったんだ?」 「ああ……って、美薫…それ…」 「…お兄ちゃんに見せたくて……」 私は初めて制服に袖を通し、兄の部屋を訪れたのだ。 兄の視線が少しだけ恥かしくもあったが、やはりこの姿を見て欲しいという気持ちのが勝っている。 私はゆっくりと部屋の中へと足を踏み入れ、後手に扉を閉めて兄を見つめた。 「どう……かな…?」 期待と不安の緊張の一瞬。 兄が口を開くまでの短い時間が、私にはとても長く感じられた。 「……似合ってるよ」 照れくさそうに鼻の頭を掻きながら、眩しそうに目を細める兄。 優しい兄ならばきっとそう言ってくれると思ってはいても、ちゃんと自分の耳で聞くまでは不安で一杯だった。 そしてその不安は、兄の一言によってどこか遠くへ消え去ってしまう。 改めて兄は私の頭からつま先までを眺め、ビデオカメラを手に少し残念そうに呟いた。 「本当は入学式を…こいつで俺が撮影してやりたかったんだけどな」 私もそれを望んではいた。 でも入学式の前日には戻らないと、大学に間に合わなくなると聞いて諦めたのだ。 「じゃあ…今…撮って…」 ビデオテープに今の姿を焼きつけ、それを兄に持って行ってもらえれば、兄が東京に戻ってもずっと傍にいられそうな気がした。 兄も私の意図を察してくれたのか、バッテリーの残量を確かめるとカメラを構えて私に向けた。 赤い撮影ランプが灯り、ビデオテープが回り始める。 「美薫…ビデオなんだからさ…止まってないで」 自分から言い出した事なのに、いざ現実にビデオが回り始めると緊張して私は直立してしまった。 そんな私をレンズ越しに見つめながら、兄が笑いながら手を振った。 「う…うん…」 兄に手を振り返し、私はその場で遠慮がちに回って見せた。 折り目が強く付いたフレアースカートが、その動きに合わせて少しだけ広がる。 「ははっ…可愛いよ」 大好きな兄にそう言われると、私は嬉しさと同時に恥かしくなってしまう。 きっとレンズ越しの兄の目にも、私の頬が紅潮していくのが見えていただろう。 即席だがカメラマン気分の兄に色々と指示を出され、私はレンズの前で控えめにポーズを取って見せる。 次第に私の緊張もほぐれ、自然な笑顔をレンズに向ける事ができるようになっていた。 そんな私を、兄はレンズの向こうでどんな顔をして見ているのだろうか。 30分も撮影しただろうか、兄はレンズを向けたまま嬉しそうに呟く。 「いい土産ができたなぁ…これ、彼女にも見せていいか?」 何気ない兄の呟き。 でもその言葉は、私の動きを止めて表情を固めるには充分な効果を持っていた。 兄はビデオカメラを構えたまま、怪訝そうな声で私の名を呼ぶ。 「…美薫?」 「………彼女…できたんだ?」 必死に喉から声を振り絞り、少し擦れた声で私は辛うじて聞くことができた。 きっと顔は蒼白になっているに違いない。 カメラを構えていた手を降ろし、そんな私を兄は心配そうに見つめる。 「あ、あぁ………美薫は…どうなんだ?」 何も知らない兄は話しを変えるかのように、逆に私に聞き返してきた。 きっと私の気持ちを知っていたら、そんな事は絶対に聞けなかっただろう。 でも兄は知らないのだ、私の気持ちを。 私は胸の奥の苦しさを感じて、無意識のうちに制服の胸元を握り締めていた。 「……好きな…人は…いるよ…」 搾り出すような声の私の言葉を、兄はどんなふうに受け取ったのだろう。 少しだけ驚いたような表情を見せ、何度も小さく頷いた。 「そうか…そうか…」 もう限界だ。 これ以上、大好きな兄の前で自分を偽る事ができない。 押さえ続けていた自分の想いの全てが、堰を切ったように一気に溢れ出していく。 知らず知らずのうちに、頬には熱い物が伝っていた。 「み、美薫…」 「ずっと……ずっと……好きだったんだよ……お兄ちゃん…」 「…………」 「お兄ちゃんが好きなの……大好きなの……お兄ちゃんだけが好きなのっ…」 そのまま嗚咽を漏らし始めてしまった私を、戸惑いながらも兄はそっと抱きしめてくれた。 兄の温もりが伝わってきて、更に私の涙が溢れ出してしまう。 きっと兄を困らせてしまっただろう。 大好きな兄を困らせてしまった事が悲しかったが、それでも兄に抱きしめられて、私は嬉しかった。 「ごめんな…美薫…気付いてやれなくて……」 私が勝手に好きになったのに、兄には何の責任も無いのに、兄は申し訳なさそうに呟く。 そんな優しい兄が好きだったが、今はそんな優しさも私の胸を締め付ける。 優しさが、きっと私を拒絶する事のない優しさが、私の中に眠る言葉を呼び覚ます。 決して言ってはならない言葉。今の関係を壊してしまう言葉。 今を逃せば、その言葉を兄に告げる機会は二度とやって来ないだろう。今しかないのだ。 それが兄を困惑させ、更に苦しめると解っていても、私は自分自身を押さえる事ができなかった。 「……お兄ちゃんが……欲しい……」 兄の胸の中で呟いた言葉は、長い沈黙によって包まれる。 そして押し殺したような声で、兄は私の言葉を受け入れてくれた。 「……今日……だけだぞ…」 「………うん」 兄と妹という線を越えてしまうのは怖くもあったが、それ以上に私は兄を求めていた。 許されない想いならば、せめて一度だけでも結ばれたい。 思い出へと昇華できる自信は無かったが、それでも愛された証を身体に刻み付けたかった。 「美薫…」 名前を呼ばれ、零れる涙を拭おうと顔を上げた瞬間、兄の唇が私の唇を優しく奪う。 私のファーストキス。驚きよりも嬉しさが上回った。 兄の柔らかな唇の感触に、私の身体から力が抜けていく。 私の長い髪をそっと撫でながら、唇を離した兄が照れたように呟く。 「ひょっとしたら……俺も美薫の事が好きだったのかも…しれない」 「…お兄ちゃん」 「そりゃ…最初は驚いたけどさ………今は…嬉しいよ」 そんな兄に、私はもう言葉にならなかった。 私の気持ちは兄を困らせるだけだと、一方的な想いでしかないと思っていた。 自然に溢れてくる私の涙を、兄の指先が優しく拭い取る。 「今夜…一晩限りだけど、美薫が俺の恋人だ」 「お兄ちゃん……」 もう一度、兄の唇が私の唇を塞ぐ。 一度目よりも長く甘いキスに、私は自分の身も心も満たされていくのを感じていた。 髪から背中へと滑る兄の手。 そのまま唇を離し、兄は私をベッドへと誘った。 隣同士に並んでパイプベッドに腰を降ろすと、これからの事を思って、多少緊張してしまう。 その緊張をほぐすかのように、優しく私の髪を撫でてくれる兄。 「…制服…シワになっちゃうから脱ごうか」 「……うん」 兄に促されて、私は立ち上がると制服へと手をかけた。 見つめられたまま脱ぐのは恥かしかったが、兄の顔を見ないようにして上着から脱いでいく。 スカートのホックも外し、シワにならないように綺麗に折りたたんで床に置く。 飾り気の無い上下とも白い下着姿になり、改めて兄へと向き直る。 こんな事なら、もっと可愛らしい下着を身に付けておけばと後悔するが、今更言っても遅い。 「……可愛いよ」 下着姿で立った私に対する、それが兄の感想だった。 「…恥かしいよ……」 兄の視線から逃れるように、私は慌てて兄の隣へと腰を降ろした。 それでも見られている事には変わりが無く、恥かしさからどうしても兄の顔を直視する事ができない。 「美薫…」 兄は隣に座った私を眩しそうに見つめ、そしてその手を私の胸へと伸ばした。 一瞬、緊張で身体が強張ってしまう。 成長途中と言うには小振り過ぎる、兄の大きな掌に収まってしまう私の胸。 やはり兄も胸の大きな女の人が好きなのだろうかと、思わず問い掛けてしまった。 「そんな事ないよ…好きな女の子なら、大きさなんて関係ないさ……それに…」 「……それに…?」 兄はベッドの上で座り直し、私の脇の下から両腕を滑り込ませ、二つの大きな掌で私の胸を包み込む。 「俺は…美薫ぐらいの大きさの…可愛いおっぱいが好きだよ」 顔を近付けて耳元でそう囁くと、私が恥かしさに頬を染めて俯く間に、兄の掌は巧みに下着を押し上げてしまう。 小振りな乳房が露になり、直に兄の掌が肌に触れた。 その掌から兄の体温が伝わり、私の胸から高鳴る鼓動が伝わっていく。 「あ……ん……」 ゆっくりと優しく、掌が私の胸を揉み始める。 むず痒いような感覚と、痺れるような感覚とが胸から広がっていく。 背後から囁きかける兄の吐息が耳朶をくすぐり、背筋を何かが駆け抜けていく。 「敏感だな…美薫はおっぱいが弱いのか?」 「やぁ……お兄ちゃんの……エッチ……んんっ…」 「エッチなのは…俺じゃなくて美薫…だろ」 掌で乳房を完全に包み込んで優しく揉みながら、指先で摘むように胸の突起を弄ばれると、思わず私の口からは甘い溜息が漏れてしまう。 兄は余程私の胸の感触が気に入ったのか、いつまでも揉み続けていた。 敏感な胸を集中して愛撫され、気が付けば私の女の子の部分も潤み始め、無意識のうちに太股を擦り合わせていた。 それに気がついたのか、兄の手が私の脚へと伸びて来る。 触れるか触れないかの距離でゆっくりと太股を撫で、そして内側へと滑り込んでいく。 「あっ………はぅんっ……」 兄の手は肝心な部分には直接触れる事なく、太股の内側を行き来する。 まるで焦らすかのようなその手の動きに、私の声は切なさの度合いを増していった。 私は恥かしさよりも、早く兄に触れて欲しいという気持ちが増していくのを感じていた。 「お…お兄ちゃん……」 兄の手を掴んで訴えかける私に、兄は吐息を吹きかけるようにして耳元で囁く。 その囁きと吐息に、私の睫毛が小さく震える。 「切ない…?」 「……うん……早く……触って…」 今までの私なら、触って欲しいだなんて自分から言えるとは思えない。 でも、まるで恋人のように扱ってくれる兄に、私は自然に甘える事ができた。 多少、声には媚びるような音色が含まれていたかもしれない。 そして兄は私の要求に応えるかのように、太股を撫でていた手をゆっくりと奥へと進めていった。 「はぁ……お兄ちゃんっ……」 下着の上からそっと触れられただけで、私の全身を痺れるような快感が駆け抜けていく。 私の反応を見た兄の手は、少しだけ積極的になって動き出す。 少しだけ染みの広がったショーツの中心を、割れ目に沿って上下にゆっくりと擦り始める。 静かな部屋の中に、微かな水音が響く。 自分の身体の反応とは言え、その音の恥かしさに私は自分が耳まで真っ赤に染まっているのを感じていた。 「美薫…下着が汚れちゃうから……脱ごうか…」 「はぁ……はぁ………うん…」 私が応える間も無く、兄の指がショーツの脇にかけられる。 それを手伝うように私が腰を浮かせると、兄は太股の中程までショーツを降ろす。 そこから先は私が自分で脱ぎ、中心に染みを広げたショーツを制服の上へと置いた。 「こっちにおいで…」 その間に兄も衣服を脱ぎ捨て、下着姿になって私を待っていた。 兄に導かれ、私はベッドの上に仰向けに横になる。 その私の足元へと廻り込むと、兄は優しく微笑みながら囁いた。 「さぁ…美薫の大事な所…見せてごらん」 「……恥かしいから……あんまり…見ないでね…」 兄の求めに応じて脚の力を抜くと、膝の裏に手を入れられて、そのまま両足一緒に持ち上げられてしまった。 そうすると丁度、兄の目の前へと私の女の子の部分がやってくる。 優しい愛撫に敏感に反応している部分を見られ、私は恥かしさに顔を両手で覆った。 「やぁんっ……恥かしいよぉ……」 「美薫のここ……とっても可愛いよ…」 恥かしがる私などお構いなしに、兄はその部分へと手を伸ばしてくる。 直に兄の指先が触れる感触。 ピッタリと閉じられた二枚の唇を、兄の指先がゆっくりと開いていく。 今まで誰にも見せた事のない部分が外気に触れ、熱い物が零れ落ちていくのが自分でも解る。 「あふぅ……ん………」 兄の指先がその濡れた奥へと触れた瞬間、自分でも驚くような甘い声が漏れてしまった。 そして身体の奥からは、もっと触れられたいという欲望が際限無く湧き上がってくる。 「ここが…女の子が一番感じる部分なんだよ…」 経験の無い私に説明するかのように話しながら、指先で私が漏らした蜜をすくい取り、その上部にある突起へと塗りつける。 その瞬間、痛みにも似た鋭い感覚が、私の脳まで一気に駆け上がってきた。 「ひゃぁんっ……!」 私の声の大きさにも動じる事無く、部屋の明りに照らされて光るその突起を、兄の指先がゆっくりと弄び始めた。 兄の優しい指使いに、自然に私の口からは甘い喘ぎが零れる。 全身を包むような甘美な刺激に身を震わせながら、私は夢中でシーツを握り締めた。 「あっ……はぁっ……お…お兄…ちゃんっ…」 「…気持ちいいかい?」 「んっ……うん……気持ち…いいよぉ……っ」 自分で慰めた経験んすら無い私にとって、その未体験の快感は我を忘れ去るのには充分過ぎるぐらいだった。 次第に速度を増して激しくなっていく兄の指の動きに、私は翻弄されて乱れていく。 そして、私の女の子の部分は自分でも解るぐらいに、熱く潤って思い人を待ち焦がれていた。 「ここも…可愛がってあげないとね」 不意に兄の指先が小さな突起から離れ、その下の潤った泉へと滑り降りる。 指先が私の身体の中へと侵入してくる感覚。 微かな痛みの後、その指先は更なる甘美な刺激への扉を開いた。 「あぁんっ…!、お…お兄ちゃんっ……!」 小さな秘腔へと浅く沈んだ指先は、その感触を確かめるかのように周囲を探る。 身体の内部で感じる兄の指先の動きに、私は身体の奥から更に潤いが溢れていくのを感じていた。 「美薫のここ、もうトロトロだよ」 「はぁ……やぁん……そんな事…言わないでっ……きゃぅんっ…!」 少しだけ意地悪な兄の口調に、悲しい訳でも無いのに私の瞳からは涙が零れていく。 すると兄は慌てたように謝りながら、顔を近付けてそっと私の頬に唇を寄せた。 「お兄ちゃん……」 「美薫が可愛いから、ちょっと意地悪したくなったんだ…ごめん」 「……うん……いいの……」 間近に見る兄の申し訳なさそうな表情。 私は嬉しさと同時に、兄に対する愛しさが更に深まっていくのを感じた。 三度目のキスは私から唇を重ねた。 少しだけ驚いた表情を見せた兄だったが、すぐに私を抱きしめて受け入れてくれる。 そして私の唇を割るようにして、兄の舌が大胆に潜り込んでくる。 「ん……んん………んふぅ………」 初めての大人のキス。 甘く甘美なその行為は、私の頭を蕩けさせていく。 控えめな私の舌を誘うように刺激し、兄の舌先は私の口の中を確かめていくように動き回る。 そしていつしか誘われるままに、私からも積極的に舌を絡めていた。 「……んん……はぁ……んっ……」 永遠にも感じられる時間。唇が解放される頃には、私の呼吸は更に荒く乱れていた。 薄く目を開けると、目の前で兄が私を見つめている。 「お兄……ちゃん……」 「美薫…そろそろ一つになろうか…」 「…うん……きて……お兄ちゃん…」 長い間、夢に思っていた。永遠の夢のままで終わると思っていた。 その瞬間が、現実のものとなって私の目の前に迫っている。 喜びから溢れてくる涙を私は堪える事ができずに、兄の腕の中で頬を濡らしていた。 「美薫……」 その涙を優しく指先で拭い取りながら、兄が私の両足の間へと身体を割り込ませる。 私は瞼を閉じて、その瞬間へと身を委ねた。 「いくよ……力を抜いて……」 その言葉に私が小さく頷いた瞬間、熱い塊が私の身体へと触れた。 怖くて目を開く事ができなかったが、それが兄の男性自身なのだろう。 その熱い塊は、私の濡れた唇を押し開くようにして、ゆっくりと泉へと進んでいった。 「んっ…………!」 「大丈夫か?」 鋭い痛みが私の全身を駆け抜ける。 だがその痛みも、兄と結ばれる証だと思えば気にはならなかった。 私は苦痛を必死に堪えて、心配そうに見下ろしている兄へと微笑んでみせる。 「大丈夫だよ……だから……私をお兄ちゃんで…満たして…」 「……ああ、解った。…でも…無理はするなよ」 「……うん」 再びゆっくりと、私を気遣いながら兄は腰を進め始める。 その痛みに、私は無意識のうちに兄の背中へと爪を立てていた。 ゆっくりと、ゆっくりと侵入してくる熱い塊。 まるで全身を熱した鉄の棒で貫かれているような感覚に、私は思わず叫んでしまっていた。 「お…お兄ちゃんっ……!!」 苦痛が長引くのを心配したのだろう、兄は残りの部分を一気に私の体内へと埋め込む。 そして全てを埋没させると、そのままの態勢で私の身体を強く抱きしめた。 「美薫……」 「はぁ…はぁ……お兄ちゃんのが……入ってるんだね……」 「…ああ」 「……嬉しい………」 それが偽らざる気持ちだった。 破瓜の鋭い痛みよりも、愛しい兄と一つになれたという喜びの方が、大きく私を包み込んでいた。 私の体内で脈打つ熱い塊。それは兄と結ばれた事を私に実感させる。 結ばれた喜びと幸福感は、次第に身体から痛みを押しのけていき、兄の温もりだけを私に伝え始める。 「もう…大丈夫だから……動いて…お兄ちゃん…」 「…いいのか?」 「平気……だから…私を…いっぱい愛して…」 私の表情から、その言葉が嘘ではないと感じたのだろう。 兄は力強く頷き返すと、私の両足を持ち上げるように太股を抱え、改めて私を見下ろしながら見つめる。 自然に絡み合う私と兄の視線。その優しい瞳の色に、私の中に安心感に似た思いが広がっていった。 そしてゆっくりと、兄が動き始める。 「あっ……んんっ………」 まだ微かに苦痛が残るものの、兄と繋がった部分から不思議な感覚が広がり始める。 痺れるような、むず痒いような…。 それが快感なのだと解るまでに、それほど時間は必要じゃなかった。 間違いなく、私は兄に抱かれて身も心も快感を得ていた。 「ん……はぁ………あんっ………」 堪えようの無い甘い声が、自然の私の口をついて漏れていく。 そんな声を兄に聞かれるのは恥かしかったが、自分でも抑えようが無かった。 口に手の甲を当てて声を抑えようとする私に、兄が顔を近づけて小さく囁く。 「もっと…可愛い声を聞かせてごらん」 「……だって……恥かしいよ……はぁっ……」 「大丈夫だよ…」 そう言いながら、兄は動き続けながら唇を重ねてきた。 私も大人のキスに慣れたのか、その唇を受け止めて舌を差し出す。 甘いキスの甘美な刺激と、覚えたばかりの身体の快感とが交じり合い、私の頭を蕩けさせていく。 兄の唇から開放された時には、自然に私の口から甘い叫びが漏れるようになっていた。 「あっ……あぁっ……はぁんっ……!」 兄の動きも、より速く力強くなっていき、私を激しく貫いていく。 全く初めての経験だというのに、私は大きな快感に包まれて乱れてしまう。 それは私が兄を愛するが故と信じ、もう何も考えずに身を任せようと心に決めた。 そう決めてしまうと、控えめだった声も自然にボリュームを増してしまう。 階下で寝ている両親の事も忘れ、私は兄の背中に両手を廻して快感に酔っていった。 「お兄ちゃんっ…お兄ちゃんっ……!!」 「美薫……感じるかい?」 「うんっ……はぁ……あぁっ……凄いのっ……気持ちよくて……私……私っ……んんっ!!」 私の言葉に安心したのか、兄は更に力強く動き始めた。 その動きに合わせるかのように、私の小さな胸も激しく揺れる。 もう何も考える事はできず、私はただ兄の名を叫びながら、全身を包み込む快感に震えるだけだった。 「あっ…あんっ…!、んっ…んふっ…はぁっ……お兄ちゃぁんっ……!」 「美薫っ……美薫っ……!」 「変なのっ………私……飛んでっちゃいそうっ……!!」 身体が自分の物では無くなり、どこかへ飛んでいってしまいそうな感覚。 私は意識の奥の方で、それが絶頂なのだと無意識のうちに悟っていた。 その不思議な感覚に微かな恐怖心を覚えるが、肌に伝わる兄の体温がそれを打ち消す。 「…一緒に…な」 呟くように言う兄の言葉は、どこまでも優しく、そして暖かい。 「はぁっ…ん……んんっ…!、お兄ちゃんっ…お兄ちゃんっ……もうっ…はぁっ……ふぁぁぁぁっ!!!」 目の前でフラッシュが光ったかのように、頭の中が真っ白になる。 そして次の瞬間、私は大きく仰け反るようにして達していた。 兄も慌しく私の中から離れると、私のお腹の上に白い精を撒き散らす。 「はぁ……はぁ……はぁ………」 「美薫……」 微かに額に汗を光らせた兄は、私の髪をそっと撫でながら見つめる。 そのまま、自然に私と兄の唇が近づいていった。 兄は私の制服姿を映したビデオを手に、東京へと戻っていった。 『夏にはまた帰ってくるよ』 そう言葉を残して。 私は新しい生活を始めながら兄を待ち続けるだろう。 決して許されない想いを胸に抱き続けたまま…。 END |