山本岬

 

山本岬

 それはクラスの誰かが持ち込んだ一冊の雑誌。ティーンズ向けのファッション誌というのが表向きで、モノクロページの記事は恋愛相談だの体験記事だの、少女たちを耳年増にしていくような内容ばかりだ。
 以前は全く見向きもしなかった岬だったが、有原を意識するようになってから、密かに興味を抱いていた。しかし休み時間に雑誌を開いてはしゃぐ輪の中には入れず、遠巻きに眺めるしかなかった。だがそれを、ひょんなことから岬が持ち帰る事になってしまう。
(捨てていいって言ってたけど……)
 内容が気になって仕方なく、急いで家に持ち帰ると、着替えもせずベッドに寝転がって雑誌を開いていた。
 興味の無いカラーページを読み飛ばし、怪しげな広告ページをめくると、岬と同年齢の読者からの投稿や相談ページがあった。
 そこには赤裸々に語られる初体験や、初々しい恋愛相談などの見出しの文字が躍っている。そんな中で岬が目を止めたのは、初めて男の子を好きになった少女が、夜な夜な自分を慰めてしまっている事を相談する投稿だった。
 クラスの男子を好きになったものの、告白できずに悶々としている事。そして毎夜、大好きな男子を思うと体が火照り、つい自分でしてしまっている事が相談されていた。それに対する答えは実に簡単で、勇気を持って告白するようにと書かれている。そして自慰行為も、誰でもする事だから気にしないように、と書き添えられていた。
 何気ないそんな投稿に岬は心を奪われながら、更に他の記事を読み進めていく。すると、まだ封を切られていない袋綴じページが現れた。岬は迷うことなくページを破り、その中の記事に視線を落とす。そこに書かれていたのは、より刺激的な内容だった。
 どうやら普通にあった投稿や相談は比較的大人しいもので、特にきわどい内容の物を袋綴じにしていたらしく、そこには直接的な単語が並べられていた。
(彼と楽しむ……濃厚な……セ、セックス……開放的な屋外でのオ……ナニー……って、うわぁ……)
 小見出しを読んでいるだけでも、岬の鼓動は早鐘のように高鳴ってしまう。
 その多くは読者を煽るように、意図的に過激に書かれた物なのだが、岬にそこまでの事は分からない。書かれた内容を素直に受け取り、驚きと戸惑い、そしてほんの少しの興奮を覚えていく。
(みんな普通に……してるの……?)
 それまで自慰行為の経験など皆無だった岬には、本当に誰でも普通にすることなのか、雑誌に書かれている事を俄かには信じ切れない部分がある。しかしそれ以上に、十六歳の少女の好奇心は騒ぎ出していた。
 幸いにして家族はまだ誰も帰宅しておらず、家には岬ひとりしか居ない。同年代の少女達の赤裸々な記事に刺激され、うつ伏せになった体の下を腕が通って、丈の短い制服のスカートの上から股間へと伸びる。
 最初は恐る恐る、控えめに押さえる様に触れているだけだった。しかし、少女向けとは思えないような、淫らな体験手記を視線で追っているうちに、岬の手つきも本格的なものへと変わりつつあった。
「ン……はぁ……はぁ……ぅ……」
 ほんのりと頬が朱に染まり、洗い呼吸に上下する豊かな胸は、シーツに強く押し付けられて歪んでいる。
 飾り気の無いショーツの上から、細くしなやかな指先がクレヴァスをなぞる。風呂で体を洗う時ぐらいしか触れた事の無い場所へ、全く別の目的で触れていく。
 淫らな事をしているという意識が更に興奮を煽り、もう歯止めが利かないくらい心も体も淫猥に蕩けてしまう。
(あたし……オナニーしちゃってるよ……すごく恥ずかしいのに……気持ちよくて、何も考えられない……!)
 今まで異性を意識することすら無かっただけに、岬には何もかもが新鮮な驚きだった。
 ショーツの底には大量の愛液が染み出し、淫らに貼り付いてクレヴァスの形を浮き上がらせている。岬は濡れた下着の不快感に、躊躇うことなくショーツを下ろしていた。
 しかし最後まで脱ぎ去るのさえもどかしいのか、太股の途中まで下ろしてしまうと、その手は再び股間へと戻る。そして充血して綻び始めたクレヴァスの間へと指を潜り込ませると、陰唇の内側を擦るように動かし始めた。
「ぅ……んっ……んっ……はぁっ……んんっ……」
 下着の上から触れるよりも、遥に鮮やかな快感が広がっていく、比喩ではなく、確かに一枚ベールを脱いだような刺激だった。そしてその快感が岬を更に夢中にさせる。
「あっ、あっ……だめっ……うぅ……くぅっ……!」
 押し殺すような喘ぎを漏らし、クレヴァスの間を激しく擦る。やがてその指先は無意識のうちに、岬の女としての入り口を探り当てていた。
 指先に感じた小さな窪みのような感触。本能的にそこが膣口なのだと理解する。
(こ、ここに……男の子のオチンチンが入るんだ……あたしの……オマンコ……っ!)
 それはそのまま、体験記事に書かれていた少女の台詞だった。それを真似て頭の中で呟いてみると、背筋をゾクゾクと何かが駆け抜けていく。
 淫らな言葉なのか、それとも挿入される場面を想像してしまったことなのか、岬には分からなかったが、とにかく刺激的な何かがあった事に変わりが無い。
 岬はその刺激的な何かに衝き動かされ、躊躇うことなく指の動きを加速させてた。
 刺激的な快感に昂ぶらされて、岬の腰が上下に揺れる。その度に丈の短いスカートの裾が乱れ、淫らな指使いが見え隠れする。それはとても初めてとは思えないほど、巧みに快感を追い求める動きだった。
 膣口周辺を揉みほぐすように刺激し、愛液に濡れた指先でクリトリスを捏ね回す。快感に対する好奇心と、現実をありのままに受け入れられる素直さが、初めての自慰行為を思い切り淫猥なものにさせていた。
「あっ、あっ……! くぅっ……ん、んんっ……やっ……あんっ……!」
 自然に腰が浮き上がっていくと、スカートの裾が腰の方へと捲くれ上がっていく。白く滑らかな肌があらわになり、その光景をより淫らに彩った。
 家族は全て外出中で、自室にひとりという開放感がそうさせるのか、その唇から次第に淫らな言葉が溢れ出す。
「気持ち……いい……オナニー……気持ちいいよっ……んくぅっ……!」
 そして快感を言葉にして表現することによって、岬の快感と興奮は更に高まっていった。
 けして大きな声では言えない行為。法に触れる訳ではないが、いけない事をしているという罪悪感。何よりも淫らな行いをしているという自覚が、岬から理性を奪っていく。
(もっと……もっと気持ちよく……)
 快感への好奇心を抑えきれずに、中指が膣口へと浅く潜り込む。純潔の証へと触れる程ではなかったが、膣内への浸入はそれまでに無い快感を生み出した。
 膣奥に溜まっていた愛液が溢れ出し、指先を更に激しく濡らしてしまう。
「ふぁぁっ……! あ、あんっ……だめっ……!」
 そのまま膣奥まで指を沈めたい衝動に駆られる。しかし、微かに残っていた理性と、破瓜への抵抗感が辛うじて指を止めた。
 しかし快感に強さに心を惹かれ、完全に抜いてしまう事は出来ない。岬は処女膜を傷つけないように気をつけながら、入り口付近を浅く刺激し始める。経験の無い岬には、それがよい結果を生む事になった。
 膣内よりも膣口の方が感覚は鋭く、覚えたばかりの拙い愛撫でも十分に感じることができた。
 同じように、浅くとはいえ指を出し入れすることで、擬似的にセックスを経験しているような気持ちにもなれる。
「ああっ……やっ……感じちゃうよっ……はぁんっ……!」
 くちゅくちゅと淫らな音を響かせながら、岬は夢中になって指を動かし続けた。
 溢れ出す愛液も粘り気が強くなり、出し入れされる指先に絡み付いてくる。岬は片手の指で膣内を刺激しながら、もう一方の手でクリトリス捏ね回し始めた。
「ふぁぁっ……! あっ、あっ、あっ、あぁっ!」
 家には誰も居ないという開放感からか、溢れ出す声を抑えようともしない。それどころか、声を出す事も快感を高める要因なのだと、無意識のうちに理解しているようだった。
「いいっ、すごく感じるっ! だめ……おかしくなりそうっ……んんーっ!」
 今までに経験したことのない性的な快感。しかもそれは最高潮にまで達して、絶頂までもが目の前に迫っていた。
 心も体も蕩けてしまいそうな快感を追い求め、岬は貪欲に貪っていく。迫りつつある絶頂の予感に微かに怯えもしたが、それ以上に今の快感の先にあるものを知りたかった。
 激しくクリトリスを掻き毟りながら、陰唇の内側を擦りあげていく。腰を持ち上げるように膝立ちになった足が震え、岬が昇りつめるのと同時に下半身全体が小刻みに痙攣した。
「んくぅっ! あっ、ああーーーーーーっ!!」
 ビクッ、ビクッと何度も腰が跳ねる。岬は声も無く悶絶し、初めての絶頂感に震えていた。


 生まれて初めての味わったオナニーの快感と、気を失いそうになってしまうほどの絶頂感。しかもそれは、雑誌の記事を読みながらの衝動的な行為でしかなかった。
(有原のこと考えながらしたら……もっと気持ちいいのかな……)
 絶頂の温かな余韻に浸りながら、ぼんやりとした頭でそんな事を考えてみる。
 有原のことは気になっているものの、それが恋愛感情なのかさえまだ岬自身は判断できていない。分からないまま、胸にモヤモヤとした感情を抱き続けているのは、岬の性分ではなかった。
(次はそうしてみよう……)
 有原のことを考えながらした時、さっきとは違った感覚になってしまうのか。今度はそれを確かめてみようと思いつつ、岬は再び股間へと手を伸ばしていった。
 

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