日暮かごめ

 

日暮かごめ

 弥勒と珊瑚がそういう関係になっているのは、かごめも薄々と感じ取っていた。深夜、皆が寝静まった頃に二人でそっと抜け出し、物陰に消えて行くのに気付いた事もある。二人が愛し合っているのなら、それをとやかく言うつもりはなかった。珊瑚の一途さを知っているだけに、かごめとしても応援したい気持ちになる。
(でも、毎晩っていうのはどうなのかな……)
 鈍感な犬夜叉は全く気付いた様子もなく、七宝も寝てしまえば朝まで目覚めることはない。二人の様子に気付いてしまうのは、いつもさんご一人だった。
 遠く離れているつもりなのだろうが、最近は風に乗って睦みあう甘い声が聞こえてくる。以前より激しさが増し、声が大きくなっているのだろう。
(こんなの聞かされたら私だって……)
 犬夜叉と七宝の寝息を感じながら、かごめはスカートの中へと手を潜り込ませ、汚れてしまわないようにとショーツを太股の途中まで降ろした。この程度なら、誰かが目を覚ましても下着を脱いでいるとは気付かれない。
 かごめはもう一度だけ二人が寝ていることを確かめると、既に濡れ始めている割れ目の間へと指先を沈めていった。
「ぅ……ん……」
 陰唇の内側の濡れた粘膜を、声を堪えながらゆっくりと擦る。そして染み出した愛液に指先が濡れると、そのままクリトリスを触れ始める。それは繰り返される行為の中で、かごめの指先が覚えてしまった一連の流れだった。
(ピリピリ……する……)
 膨らみ始めたクリトリスを、包皮の上から指先で挟むようにして擦る。或いは指先で軽く引っ掻くように弾くのが、最近のかごめのお気に入りだった。
 そうやってクリトリス中心に愛撫を続けていると、興奮状態と共に感度が高まってくる。クリトリスも更に充血し、包皮から顔を覗かせ始めた。
「はぁ……はぁ……はぁ……ぅんっ……!」
 溢れ出す愛液を何度も指先に絡めとり、それを塗りつけるようにしてクリトリスを捏ね回す。充血して硬く勃起したクリトリスは、指の動きに合わせて電流が流れるような快感を生んだ。
 陰唇も同じように充血して膨らみ、まだ幼さの残る割れ目が次第に淫猥さを増していく。膨らんだ陰唇によって割れ目は綻び、内側の桜色の粘膜まで見えるようになっていた。
 当然、微かに蠢きながら愛液を滴らせる膣口も、簡単に触れられる状態になる。かごめはそれを待っていたかのように、クリトリスを捏ね回していた指先で膣口を探った。
(こ……ここに……犬夜叉のが……!)
 一度だけ、暴走して我を忘れた犬夜叉と結ばれた事がある。犬夜叉は全く覚えていなかったが、かごめにとってそれは犬夜叉との密かな繋がりとして心に刻まれていた。
 獣のような咆哮をあげた犬夜叉に、乱暴に乱暴に押し倒されて初めてを奪われた。愛し合ったとは言えず、獣に犯されたのと変わらないのかもしれない。それでもかごめは、犬夜叉と結ばれた事を素直に喜んでいた。
 しかし犬夜叉の記憶に残っていない以上、二度目を求めることはできない。火照る体を持て余していても、自分で慰めるしかない。
(今度はちゃんと……私を見て欲しい……犬夜叉っ……!)
 暴走して獣の欲望のままに犯されるのではなく、ひとりの女として求められたい。その時は躊躇うことなく受け入れられるように、もう心は定まっているのに、その時はまだ訪れない。
 かごめは記憶の中の感触を思い描きながら、濡れた膣口に指を沈めた。
「っ……くふっ……んんっ……!」
 理性を失った赤く光る目と、鋭く伸びた牙の間から唾液を滴らせ、力ずくで圧し掛かってきた犬夜叉。
 獣の衝動がそうさせるのか、かごめを四つん這いにさせると下着を剥ぎ取り、もちろん前戯など無く一気に貫いた。その痛みは今でも鮮明に思い出すことができた。
 体を引き裂かれるような痛みの中に、犬夜叉に求められたという喜びを感じた記憶。桔梗に対する優越感のようなものさえ感じた事を、今なら冷静に受け止められる。
 それくらい、犬夜叉と結ばれた事はかごめにとって大きな意味を持っていた。
(すごい……おまんこの中……熱くなってる……!)
 沈めた指先が火傷してしまいそうなほど、膣内は熱く蕩けてしまっている。たった一度しか経験は無いが、暴走持の犬夜叉の剛直を受け入れた事で、もう痛みを感じることはない。かごめは慣れた手つきで指を出し入れさせ、トロトロになった膣内を掻き乱す。
 息を殺し、声を潜ませ、犬夜叉や七宝が目を覚まさないように気をつけながら、歳に似合わない指使いで快感を貪る。二人を起こしてしまうかもしれないという緊張感が、かごめの快感と興奮を更に刺激していた。
「ぁ……ぁ……っ……んっ……ぅ……くっ……」
 漏れそうにな声を必死に堪えて、巧みに快感を紡ぎ出し続ける。もう周囲を気にする余裕は無く、意識は自分自身にだけ集中してしまう。
 絡み付く膣襞を掻き乱し、愛液を飛び散らしながら快感を貪る。スカートを穿いたままでなければ、その淫猥な匂いだけで犬夜叉が目覚めてしまっていたかもしれない。
 かごめは背中を丸めるようにして横になり、両手を股間に挟み込むようにして、一心不乱にオナニーに耽り続ける。
 押し殺した喘ぎと微かな衣擦れの音が、犬夜叉達の寝息へと重なり合う。
(私がこんなことしてるって……知ったらどうするかな……)
 鈍感なくせに純情で、それでいて大胆な事を言ったりもする。その言動の一つ一つに、かごめが一喜一憂しているとも知らずに。
 まだ十六にも満たない少女が、夜半に自らを慰める切なさ。その快感が強く鮮やかなだけに、寂しさがより際立ってしまう。
(犬……夜叉ぁ……私……切ないよ……!)
 爪先をピンっと伸ばし、潜り込ませた指を激しく出し入れする。その指は犬夜叉の男根に見立てられ、実際にそうされたように、荒々しく掻き乱す。
「くふっ……んっ……んんっ……!」
 高まり続ける快感に衝き動かされ、かごめはそのまま寝返りを打つようにしてうつ伏せになる。そしてそのまま膝立ちになりながら腰を持ち上げると、上半身だけ突っ伏した四つん這いのような体勢になる。それはあの日、暴走した犬夜叉に犯された格好だった。
(犬夜叉っ……犬夜叉ぁっ……!)
 最後はいつも、この格好だった。
 乱暴に激しく出し入れされた事を思い出しながら、その時の感覚を反芻するように指を動かし続ける。
 背中に圧し掛かる犬夜叉の重さや、耳元で聞こえる荒い息遣い。そして何より、未発達な膣内を乱暴に穿つ、太く逞しい男根の感触。その全てを思い出しながら、その時には得られなかった絶頂へと昇りつめていく。
「ぅんっ……! んっ、んんーっ……!」
 快感は更に昂ぶり、絶頂はもう目の前に迫っていた。
 綺麗に折り目のついたプリーツスカートの裾を激しく揺らしながら、かごめの指先は淫らな快感を導いていく。その激しい出し入れのあまり、溢れ出した愛液が白く泡立つほどだった。
(激しすぎるよっ……壊れちゃう、私のおまんこ壊れちゃうっ……犬夜叉ぁっ!!)
 心の中での叫びと同時に、かごめは絶頂へと昇りつめていた。
 そして眩いばかりの絶頂へと達した瞬間、犬夜叉が注いだ熱い精液のイメージが脳内で重なる。それまでの苦痛を忘れてしまいそうな、熱を帯びた幸せな感触。かごめの膣内もそれを思い出しているのか、小刻みに収縮を繰り返し精液を迎え入れようとしていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
 絶頂の余韻に浸りながら、かごめはゆっくりと指を動かす。その動きで広げられた膣口の隙間から、粘り気の強い濃い愛液が溢れ出していた。
 そして余韻が波の様に引いていくと、気だるそうに体を起こして立ち上がる。そして汚れてしまった手や股間を洗い、弥勒や珊瑚が戻る前に横になっておかねればならない。
「……」
 珊瑚のように愛されることができれば、こんな切ない思いをすることは無いのに。
 射し込む月明かりの下で犬夜叉の寝顔を見つめ、かごめはひとり溜息を漏らすのだった。

 

 

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