No6

 

【めんどくさいなぁ】

面倒だとは思いながらも目の前の段ボールをやっつけていく。
「なんつうでかさだよっっと…」
ルナのオプションとして届けられた荷物はかなりの量があるみたいだが、
それが全部一つの段ボールに入れられて送られてきた。
オプションはルナの服一式(変わったデザインだな)となぜかナイフ(な、
ナイフ?!)…ASLIGHTは何を考えてるんだ?
「マスターこれ、どこにおいて置けばいいですか?」
僕が段ボールから出した荷物をルナに渡して部屋に運んでもらう。
「これはそこにおいといてー」
まいった、今日はルナの服を買いに出かけようとしていたのに…ルナの服
はルナが届けられたときに着ていた下着のようなスーツしかない、いつも
は僕の服を着ているんだから高いのは無理だけどせめて2、3着は買って
あげたかった。
なのにこれだ、さぁ出かけよう!! と部屋のドアを開けたら宅急便の兄ち
ゃん(ルナ届けてくれた人だ)が、馬鹿でっかい段ボール(まただ)の横
にたって僕を呼び出そうとしていた。
「あ、ちょうどよかった、これお届物です、ハンコお願いできますか?」
すっごいにこやかな笑みを浮かべて兄ちゃんはハンコを求めてきた、それ
が一時間前。
やっと段ボールの処理が終わったよ…時計を見てもまだ買い物に行くには
十分な時間がある。
「よし、今度こそ君の服を買いにいこう!!」

【女性の買い物って…(苦笑) そして始まり…(真面目に)】

やっぱり女性の買い物って長いんだね…
ルナが買った荷物を持ちながら僕は心の中で苦笑する、もう辺りは暗くな
っている、でも少しおかしいかな? 人がいない…
「ねぇルナ、人…少なくないかい?」
「そうですねぇ…何故でしょう?」
シーモール前のバスターミナルの上、この時間ならまだ人がいっぱいいる
はずなのに…
誰一人もいなくなってしまう、いや、まだ数人残ってる、その中の何人か
がこっちに歩いてくる。
「…森河流佳君、だね?」
男の人が話しかけてくる、何かを確認するように。
「そうですけど…何か?」
男の人の質問に答えると、その人の隣にいた女の人がの姿がふっと消える
、次の瞬間には僕は地面に抑えつけられていた。
「まっマスター!!」
よく見るとその女の人はバディだった、それもこんなところにはいないは
ずの軍事用の…
「単刀直入に言おう、悪いが君のバディをいただく」
男が言う、ルナをいただくだって?
「な、何でそんな事を…」
抑えつけられている僕を見てルナはオロオロしている
「知りたいか? 知ってしまえば君は死ぬことになる」
「マスターを離してくださいっ!! 誰かぁっ!! マスターを助けてくださ
い!!」
ルナが、少なくなった回りの人達に叫ぶ、だけど誰も助けようとは…それ
以前に動こうとはしない。
「ムダだ、ここにいる人間は全員俺の部隊の者だ、それにここら辺一帯は
既に封鎖してある、誰も助けにはこん」
絶望的な答えが返ってくる、男は僕の方に向き直ってもう一度聞いてくる。
「君のバディを渡してもらおう、素直に渡してくれれば悪いようにはしな
い…」
男の目を見て気付いた。嘘だ、この男は素直に渡しても、渡さなくても僕
を殺す気なのだと。
ルナもそれに気付いたようだ。
「…マスターは殺させません」
男は僕達の反応を見てにやっと笑う。
「そうか、素直に渡す気はないんだな、ならまずバディの方からだ、君はそ
のまま見ているんだな」
男がニヤリと笑いながら手をあげる、周りにいた何人かの女性、やはり彼
女らも軍事用バディ…ドローンだ、が、ルナを取り押さえようとする。
「ルナッ!! 逃げるんだ!!」
ルナがドローン達に囲まれる前に逃げるよう叫ぶ、だけどルナはその場を
離れようとはしなかった。
「私が逃げたらマスターは殺されてしまいます。それにこのまま私が捕まっ
てもそれは同じ…なら、私はマスターを助けるために戦います」
静かな決意を秘め、ルナが男を睨む。
「…君のその心意気に免じて、君がこいつらに捕まるまで彼には手を出さな
いようにしよう、おい、彼を立たせてやれ」
男の言葉に僕を抑えつけているドローンが僕を立たせようとする、その時
彼女の腰にナイフがくくってあるのに気付く。
やるしかない、このままだったら僕もルナもただ捕まったままこの連中に
殺されるだけだ…
すでにルナもジリジリとドローン達に囲まれている、男もルナの方に気を
向けている。
やるなら…今しかない!!
「ルナ!!」
僕は叫んでルナの方に身を乗り出そうとする、その動きに僕を捕まえてい
るドローンは僕を抑えつけようと掴んでいる腕を引っ張る。
グッと引き戻されるその瞬間、僕は彼女の腰のナイフを掴み取る。
それはあまりにあっけなく成功した。
奪い取ったナイフをそのまま彼女の首に突きたてる、抵抗というものを感
じることなくそれは彼女の首に吸い込まれる。
「なっ!!?」
男がその光景を見て絶句する。
そのままナイフに力をこめ彼女の首を難なく切り離す、血のように噴出した
赤味のある琥珀色の液体が僕の顔に吹きかかる。
「くそっ!! バディのほうよりまずそいつだ!」
男の言葉にルナを取り囲んでいたドローンのうち何人かが僕の方に駆け出し
てくる。
「マスター!!」
バディの血で顔を濡らした僕にルナが駆け寄ってくる、それよりもドローン
たちのほうが早く僕を戦闘不能にしようと攻撃を仕掛けてくる。
僕に駆け寄ってきたドローンの三人のうち、右にいるドローンがナイフを構
え切りかかり恐ろしい切れ味を持ったそれが僕に襲いかかってくる。
運が良いとしか言いようがない、僕はナイフを紙一重でかわした、そしてそ
のまま彼女にナイフを突き刺す。
胸に刺さったナイフのせいで彼女の活動が停止する、しかし幸運もここまで
しか続かなかった。
残りの二人のうち左にいたドローンがいつのまにか懐にもぐり込んでボディ
に一発叩き込んできた。
「ゲふっ!!」
痛い、なんてものじゃなかった…手放しそうな意識を必死に繋ぎとめる。
もうナイフもない、体も動かない…だけど動かさなきゃ…
大振りなドローンの攻撃を痛みに苦しみながら転がるようにかわしていく、
やはりいつまでもかわせるはずがなく次の一撃がかわせない事を覚る。
痛みによるものか、段々と朦朧としていく意識のせいか、時間の流れがゆっ
くりとしてくる。
ドローンの蹴りが僕の体に突き刺さろうとするのがわかる、その後ろにルナ
がいるのが見える…
「それ以上はさせない!!」
普段の生活からは考えられないようなルナの動き、それは意思のないドロー
ンにはできない柔軟な、しかし破壊をおこなうための動き。
後ろからドローンに膝蹴りをかます、ボギン!! と凄まじい音を立てて僕に
蹴りを当てようとしたドローンの腰がありえない角度で曲がる。
腰を砕かれ、行動不能になったドローンには目もくれず、僕の前にルナはか
がみ込む。
おかしい、ルナに違和感を感じる…いつものルナじゃない、なにか…違う。
残ったドローンはルナを警戒してか近づいてはこない
「マスター、大丈夫ですか?」
それでもルナは僕の顔を泣きそうな顔で見つめる。
「はは…大丈夫、といいたいけど結構きつい…」
ルナに引きつってはいるが笑顔を見せる、ただボディの一発はやはり内臓に
大きいダメージを与えていた、
「ゴホッ!」
少し血の混じった咳をする、手に吹きかかった血をみてるなのかおが蒼白に
なる。
直後、ルナの雰囲気が変わった…氷のように冷たくなるルナの雰囲気、そし
てその氷の奥に感じる激しい激情。
「赦さない…」
段々と薄れていく意識の中でうっすらと聞こえるルナの呟き、そして激昂し
た叫び。
「貴方達を絶対に赦さない!!」
ぼやけた視界のむこうに男やドローンにむかって叫ぶルナが見える、暗くな
っていく視界の中でルナの姿だけが光って見える、もしかしたら実際に光っ
ていたのかもしれない。
光りに包まれたルナはまるで天使のようだったがその光りはやすらぎを与え
てくれる天使の光ではなく…目の前のものに裁きを下す破壊天使の光りに思
えた。
「ル、ナ…」
ジェノサイド・エンジェル…
意識が闇に包まれる瞬間、その言葉が頭に浮かんだ…

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