[黄金の奸計]

※当作品はoru氏の執筆された作品です。
感想等は必ずoru氏宛でお願いします。

[黄金の奸計]

――1――

 涼やかな風が、ディードリットの髪を揺らしている。
 雲一つない青空のなか、視線を下ろせば丘の麓に小さな街が見える。
 そこを見つめるディードリットの顔には、不安の色がありありと浮かんでいた。
「大丈夫か、ディード?」
 恋人の横顔に憂いの表情が浮かぶのを見て、自由騎士パーンがその肩をそっと抱く。
「ぁ……」
 ぴくん、とハイエルフの華奢な身体が震える。
「パーン、大丈夫だから……」
 それでも気丈に答え、ディードリットは肩に回されたパーンの手に自分のそれを重ね、ゆっくりと離した。
「大丈夫だって……? 本拠地を出発してからずっとそんな調子じゃないか。具合でも悪いんじゃないか?」
「ううん、平気よ。具合が悪いならこの旅に志願なんかしないわ」
 心配そうな表情を向けるパーンに、ディードリットは笑顔をみせる。
「だけど……」
「久しぶりの旅だから緊張しているだけよ。貴方と2人だけになるのも久しぶりだし……」
 それでも表情を変えないパーンを見て、ディードリットは拗ねたように口を尖らせた。
「それとも……貴方は私以外の人とふたりっきりで旅をする方が良かったの……?」
「そんなこと……」
 パーンが絶句して頭を掻く。
 そんな自由騎士の仕草に微笑んで、ディードリットは丘の道を下りはじめた。
「さあ、行きましょう……領主殿は待っているはずよ……」
「待てよ、ディード」
 丘を駆け下りるディードリットを追うように、パーンはその脚を早める。
 何度も振り返ってパーンに笑顔を向けながら、ディードリットは丘を下っていく。

 ――自由軍に、その街の領主から援助の申し出が届いたのは一月ほど前のことだ。

 カノンのほとんどはマーモから派遣された騎士の手で治められているが、それでもマーモに恭順の意を示した元カノン貴族によって統治されている地域がいくらかはある。
 援助の申し出をしてきたのも、そんな領主が統治している街のひとつだった。
 無論、いかに慢性的な物資不足に喘いでいるとはいえ、そのような申し出に無防備に乗っていては命がどれだけあっても足りない。自由軍の将であるカノン第3王子レオナーは即座に密偵を送り、街と領主についての情報を集めさせた。
 街は主街道を結ぶ、今は寂れた細い街道の中程にあり、規模も小さい。地理上の重要性も低く、農業や工業が特に盛んであるというわけでもない。ただ、それだけにマーモ軍も街を重要視はしておらず、監視こそ置いてはいるものの、統治は領主である元カノン貴族に任せているらしい……等々。
 それらの情報を元に討議した結果、罠である可能性は低いと結論を出したレオナーは自分が最も信頼する男――自由騎士パーンに全権を委任し、ディードリットと共に街へ向かわせたのだった。


――2――

 街が夜のとばりに包まれる。
 ディードリットとパーンは領主が書状にしたためられていた方法通りに砦へと潜り込み、指定された部屋へと入った。
 部屋には小さな空気穴のほかには窓もなく、灯りは壁に掛かった小さな蝋燭のみ。
 揺らめく炎がぼんやりと部屋を照らし、ディードリットの影を揺らす。
「パーン……」
 ディードリットが小さく呟き、自由騎士の手に自らの指を重ねた。
「大丈夫……周囲にそれらしい気配はない。少なくとも、衛兵が雪崩れ込んでくるようなことはないさ」
 小さくしなやかな指をそっと握り、パーンが安心させるかのように微笑む。
「……うん……」
 微かに頷くディードリット。しかし、その表情は緊張にこわばっている。
「……」
 更に元気付けようと口を開きかけたとき、パーンの耳に小さな足音が届いた。
「来たようだ……」
 パーンが呟き、膝をついた。一見跪いているだけのように見えるが、その実片手は軽く剣の脇に置かれており、その気になれば一足で立ち上がりながら抜き打ち、必殺の一撃を放つことが出来る。
 ディードも同じようにしながら、いつでも呪文を唱えられるように精神を集中させる。
 微かに軋む音を立て、木製の重いドアがゆっくりと開いた。
「お待たせしたようですな……」
 男の声に、ディードリットとパーンが顔をあげる。
「…………!!」
「貴方が……この街の領主ですか……?」
「さよう。ロウルと申します、カノン自由軍の勇士殿よ」
 パーンの言葉に、ロウルは重々しく頷いた。
「申し遅れましたロウル殿。私はパーン……」
「おお、貴方があの……お噂はかねがね伺っております……ということは、隣におられるのがディードリット殿ですかな?」
「はい」
 ロウルの問いに頷くと、パーンはディードリットを促すべく横顔を一瞥した。
 その表情が一瞬こわばる。
 ディードリットはロウルを凝視していた。驚きと、恐怖と――恍惚がない交ぜになった、複雑な表情を浮かべて。
「……ディード?」
 パーンが思わず漏らした呟きに、ディードリットがはっとなる。
「ディ……ディードリットです、ロウル様」
 慌てて名乗り、頭を垂れるディードリットに向かって、ロウルは優しく声をかけた。
「そのように緊張されることはありません。この砦には確かにマーモより派遣された監査役もいますが、今は薬によってぐっすり眠っております……ご安心を」
「そう……ですか……」
 ディードが答え、ゆっくりと立ち上がった。
 それに合わせてパーンも立ち上がり、ロウルに向かって左手を差し出す。
「今回は、カノン自由軍への援助の申し出ありがとうございます。早速、そのお話に入りたいのですが……」
「判りました。薬を盛ったとはいえ、万が一監査役が目を覚まさぬとも限りません。手早くするとしましょう」
 パーンの手を握り返し、ロウルは笑った。

 会談の結果は、パーンにとって満足のいくものだった。
 物資の援助と情報収集における協力……いずれもカノン自由軍が喉から手が出るほど欲しいものばかりであったし、それに対する見返りも『カノン復興の際には、自分をカノン貴族として取り立てて欲しい』という、レオナー王子が予測したとおりのものだった。
 しかし、何よりもディードリットがロウルと深く話し合い、その話の内容に妥当性と理解を示しつつ同意していたことがパーンを安心させていた。
 ディードが信頼するものならば、自分も信頼できる……それが、10年以上も行動を共にした結果、パーンが得た結論だったのである。
「危険はあるが、いい話だな」
 腰からベルトと剣を外しながら、パーンは明るい声で言った。
 ここは町中にある娼館。
 会談の後、ロウルはディードリットに紹介状を渡してこの店の名を告げ、宿泊するよう勧めたのだ。
「宿屋には監査役も目を付けておりますが、ここの客には比較的無頓着ですからな」
 そう言って笑うロウルに従ってディードリットとパーンの2人はその店へ向かい、紹介状を手渡したのだ。
 店の主人は紹介状とディードリットの顔を見比べると得心したように下品な笑みを浮かべ、パーンをこの部屋にまで案内したのだ。
「……そうね。今のところマーモに嗅ぎつけられている様子はなさそうだし、彼の提案した情報と物資の引き渡し方法も、双方に被害が及ばないようによく考えられていたわ」
「だろう?」
 破顔すると、パーンはベッドに腰掛けた。男の重みにベッドが軋み、小さく音を立てる。
「ここの領主……自らマーモに恭順の意を示したと聞いたときはどんな卑怯者かと思っていたが……なかなかの人物のようだ」
 きっとマーモに恭順の意を示したのも、領民のことを思ってのことなのだろう……自らの矜持を守り果てるよりも困難な道を、恐らくここの領主は選んだのだ。
 自分が見立てた領主の人物を熱心に語るパーンに緩やかな微笑みを返し、ディードリットはベッドの脇に置かれている葡萄酒の瓶に手を伸ばした。
「ねえ、パーン……乾杯しない?」
「そうだな……いいか、そのくらい」
 嬉しげにパーンが応える。
 それに頷くと、ディードリットは瓶の封を開け、パーンに背を向けた。
 杯から酒の溢れる、とくとくという音が部屋に響く。
 やがて振り返ると、ディードリットは微笑みを浮かべながら右手の杯を差し出した。
 パーンも笑顔と共にそれを受け取る。
「乾杯……」
「自由軍に乾杯!」
 杯が軽く打ちあわされ、赤い液体が2人の喉を滑り落ちていった。


――3――

 青い月が星とともに浮かんでいる。
 ベッドの上では、大の字になったパーンが軽い寝息を立てていた。
 ディードリットは普段と同じ草色の短衣を身につけ、パーンの傍らに佇んでいる。
 その瞳は暗く沈み、視線は緩やかに上下しているパーンの胸元と顔に向けられていた。
「……パーン……」
 薄い唇が小さく開き、愛しい男の名前を紡ぐ。
 そのままハイエルフの娘は身体をかがめると、微かに開いた自由騎士の唇に自分のそれをそっと重ねた。
 月の光が床に影を落とし……部屋に静寂が訪れる。
 それを破ったのは、ドアをノックする小さな音だった。
「…………!」
 パーンから唇を離し、ディードリットが息を呑む。
 再び、ドアがノックされる。
「……」
 ディードリットはのろのろと足を進め、ドアの前に立った。
「……奴は眠らせたか?」
 気配を察したのか、ドアの向こうから声が聞こえる。
「……は……い」
 蚊の鳴くような声で答え、ディードリットは震える指先をノブにかけた。
 静かにドアが開き、大きな人影がのっそりと部屋に入ってくる。
 ロウルであった。
「ククク……成程、よく眠っておるわ……『答えよ。間違いなく薬を盛ったのだな?』」
 下位古代語による問いに、ディードリットの身体がびくりと震える。
「……は、い……」
 頷くディードリットを満足げに見下ろすと、ロウルはディードリットの腰に手を回し、その華奢な肉体を抱き寄せた。
「あぁ……っ」
 久しぶりに感じる主人の温もりに、ディードリットが安堵の吐息を漏らす。しかしその表情はすぐに険しいものに変わり、美貌のハイエルフは自分を陵辱しつくした男へ畏怖の視線を向けた。
「何故……貴方が……」
「ククク……儂はあのとき死んだ筈……そう言いたいのだろう?」
 下碑た笑みを浮かべ、ロウルはディードリットの引き締まった尻肉に掌を這わせる。
「や……ぁぁっ……」
 嫌悪と快楽を同時に感じ、ディードリットは男の腕の中でもがく。その動きを楽しみつつ、両の掌でみずみずしい肢体をまさぐりながら、ロウルはディードリットの耳元に唇を寄せて囁いた。
「簡単なことよ……あのときの約束を果たしただけのこと。何しろ、あの時には自由騎士殿をマーモ本島へと運ぶよう、評議会から圧力がかかっていたのでな……ディードリット、お前が儂のものになると誓ったように、儂も奴の命を救うために一芝居うったのだ」
「……!?」
 男の囁きに、ディードリットが驚きの表情で振り返る。
「評議会に自由騎士殿を生かしておく理由はないし、儂とて評議会に表だって逆らうわけにはいかぬ。故に……お前が自由騎士救出のために砦に単身乗り込み、ピロテースの率いるダークエルフどもを殺してあの男を奪い、脱出した……そういう事にしたのじゃよ。お陰で、儂はピロテースという監視役を付けられてしもうたわ……ククク……」
「そ……れでは……」
「そう……ピロテースもあの芝居に一役買ってくれたわ。今では儂の可愛い牝犬として毎晩儂に甘えてきおる。今夜は儂に奉仕できぬから、今頃火照った体を自ら慰めておるだろうよ……クク……」
 口端を淫らな形に歪め、ロウルはディードリットを抱きしめた。そして片手を尻側から内腿へと差し込み、下着越しに秘唇を擦りあげる。久しく感ることのなかった甘い痺れにディードリットはぶるぶると体を震わせ、半ば無意識のうちに男の背中へと両手を回す。
「さあ、ディードリット……唇を捧げて貰おうか」
 ロウルの言葉に泣き出しそうな表情をして、ディードリットは小さく首を振った。
「そんな……そんな、こと……」
「出来ぬのか?」
「……お願いします……パーンの……パーンの前では……」
 弱々しく懇願するディードリットを見下ろし、男はしばし考え込んだ。
「この男の前で、再び儂に使われるのは嫌か?」
「……は、はい……」
「だがな……儂はそうしたいのじゃよ、ディードリット」
「…………」
 ディードリットの表情が暗く沈んだ。支配の枷の魔力がある限り、下位古代語によって命令されればディードリットの肉体はその意志に関わらず動いてしまう。いや、精神すら、男の命令次第では自由に作り替えられてしまうのだ。男はそう望みさえすれば、ディードリットの心も体もまさに自由にすることが出来る……。
 そこまで考え、ディードリットははっと顔をあげた。
「……今頃気付いたか」
 ディードリットの表情を見て、ロウルは嘲笑した。
「脱出して後、なぜお前は契約の枷を外さなかった? 確かにそれは知る者も少ない稀少品ゆえ、他の者がそれに気付くことはまれかも知れん。だが、お前自ら高位の司祭……マーファ神殿のレイリア司祭にでも頼めば、解除することも不可能ではなかったはず……なのに何故それをしなかった?」
「ぁ……ぁ……」
 畳みかけるようなロウルの言葉に、ディードリットの身体ががくがくと震えだす。
「解っておるのだろう? お前自身がそれを望まなかったのだ……! 儂の奴隷となって身も心も捧げることを、ディードリット、貴様が望んでいるのだよ……!」
「そ、んな……いや、いやぁぁぁぁぁっ……!!」
 激しく首を振り、ディードリットが叫んだ。長い艶やかな金髪が左右に揺れ、顔を寄せている男を打つ。それを避けようともせず、ロウルは華奢な肉体を抱きしめたままディードリットの首筋に舌を這わせ、囁いた。
「良いのか……? 薬で眠らせているとはいえ、あまり騒ぐと自由騎士殿が起きてしまうかも知れんぞ……?」
 びくりとディードリットの動きが止まる。
 同時にロウルの指が下着越しに肉芽を強く擦り、ハイエルフの娘は女の声をあげた。男の指先で弄ばれる肉芽は下着越しの刺激にみるみる膨らんでいき、その度に秘唇からは蜜液がこぼれて下着を濡らしていく。
「ククク……安心しろ……儂は約束を違えはせん。お前が儂の奴隷として仕えている限り、自由騎士殿にも、カノン自由軍へも出来うる限りの協力を約束しよう……。無論、この事に自由騎士殿が気付かぬよう、細工もしてやるぞ……」
 下着越しに秘唇を指で嬲りつつ、エルフ特有の長い耳に舌を這わせながら、ロウルは最後の抵抗を砕くべく誘惑の言葉を囁き続ける。
「そうだな……儂との非常連絡役に就くとでも理由を付けて、この砦にいるがいい……なに、実際に連絡役としても動いて貰うのだから、自由騎士殿が疑いを抱かない程度には奴の元に戻ることも許そう。場合によっては奴と旅をすることも、な」
 それでも儂の奴隷であることが認められぬというなら……。
 ロウルが厳しい視線をディードリットに向ける。
 だが、もはやディードリットにそのような脅しは不要だった。
「……本当に……」
「ん?」
「本当に……パーンの側にいることを……許していただけるのですか……?」
「ああ。……無論、お前は儂のモノなのだから儂の側で仕えるのが当然であるし、儂の許しがない限り自由騎士殿と肌を重ねることは許さぬがな。それでも、奴と永遠に別れて儂に飼われ続けるよりは遙かに良かろう?」
「…………はい……」
 男の瞳を真っ直ぐに見つめ、ディードリットは静かに答えた。
(この男の奴隷になっても……パーンと逢うことは出来る……短くとも、側にいることは出来る……)
 ディードリットの心の中で、ぐるぐると言葉が踊る。
(それに、この男が自由軍を援助してくれれば、カノン解放というパーンの目的を達することも容易になる……私が……私さえ、この男……ご主人様の奴隷となれば……それだけで、全てが……上手くいく……きっと……)
 ディードリットの心は、自己憐憫という甘美な毒に冒されていた。
 自分さえ堕ちれば……自分さえ犠牲になればいい。愛する者と結ばれぬ事も、卑劣な手で自分を奴隷に堕とした男にその全てを捧げねばならないことも、歪んだ献身に浸っている彼女にしてみれば、汚れた自分が背負わなければならない罪であるように思えてくる。
(私……だけが……)
 ディードリットの瞳から一筋の涙がこぼれ、頬を伝った。
「どうじゃ、ディードリット? 身も心も儂に捧げ、儂の奴隷となることを……この場で、自由騎士殿の前で、再び誓えるか?」
「はい……」
 小さく頷くと、ディードリットはその儚げな唇をロウルの分厚い唇にそっと重ね、そっと離した。
「……私、ディードリットは……ご主人様だけにお仕えする奴隷として……ロウル様に、身も心も捧げることを誓います……ん……」
 そして再び奴隷としての誓いを立てると、ロウルに唇を寄せる。今度は唇だけでなく……鼻先や頬、瞼にまでキスの雨を降らしつつ、微かに覗かせた舌先でちろちろとくすぐるように舐めしゃぶる。
 小鳥が啄むような甘い刺激に相好を崩しつつ、ロウルは両手をディードリットの尻に回し、掴むようにして乱暴に刺激しながら指先を下着の中に潜り込ませた。
 溢れ出ている蜜液が絶好の潤滑油となり、男の指はにゅるん、と容易く秘唇を割って奥へと滑り込んでいく。
「ふぁぁぁ……っ!!」
 久しぶりに味わう主人の指を、ディードの媚肉は絡みつくように受け止めて締めつける。
 内腿がきつく閉じられ、力の入った尻肉がきゅっと上がる。
 それらを楽しみつつ、ロウルは更に指を這わせた。直に秘唇を触り、肉芽を弄び、恥丘を撫でる。そこにしゃりしゃりとした手応えを感じ、ロウルは唇を歪ませた。
「ディードリット……どうやら、儂の元を離れている間、ここの処理はしてなかったようじゃの。こんなに生やしおって……」
「ぁぁ……も、申し訳ありません、ご主人様……」
 しゃわしゃわと恥毛を擦られ、ディードリットは甘えるように鼻を鳴らす。
「どうか……ご主人様の手で、私の、はしたないあそこを綺麗にしてください……ご主人様にお仕えしていた時のように……つるつるに、剃り上げて下さい……」
 更に秘唇を男の手に擦り付けるようにくねらせ、自らの意志で剃毛をおねだりするのだ。
「クク……よかろう、儂の手で奇麗にしてやる。自由騎士殿にその肌を見せられぬようにな……」
「ぁ……そ、そんなこと致しません……私が……ディードリットが肌を晒すのは、ご主人様の前だけです……」
 ロウルの嘲りに頬を赤らめ、ディードリットは媚びるように身体を寄せた。ロウルの唇を啄むように舌を這わせ、秘唇と尻穴を男の指に捧げるように押しつけ、更に上半身を密着させ、短衣越しに乳房を男の胸へと擦り付ける。
「この胸も……唇も……あそこも……お尻も……全て、ご主人様だけのものです……」
 そうして、男へと隷従の言葉を囁き続けるのだ。
 高貴な種族であるハイエルフが恥辱に甘んじ、自分の所有物であることを自ら誓う。
 その美貌には快楽と隷従と……苦悩と嫌悪の感情が交互に見え隠れし、男の支配欲を満たしていく。
「お前の全ては儂だけのものなのだな、ディードリット?」
「はい……ディードリットは、身も心も、全てご主人様だけのものです……永遠の従属を誓った、ロウル様だけの奴隷です……」
 媚びを含んだディードリットの言葉に、ロウルが破顔した。
「よかろう……その言葉通り、お前を奴隷に相応しい身体にしてやる」
 言い放ち、唇を奪う。ディードリットの小さく薄い唇を被うように唇を押しつけ、熱く太い舌を差し入れて柔らかな舌と口腔を蹂躙し、とろとろと唾液を流し込む。
 きつい匂いの液体を喉を鳴らし嚥下しながら、ディードリットは恍惚にきゅっと眉を寄せた。理知的な瞳は快楽に霞み、与えた全てを快楽と受け止めている事を男へ知らせる。
 それを視界に認め、ロウルはゆっくりと唇を離した。
 力無く開いたディードリットの唇から微かに覗く舌は蹂躙された名残でてらてらと輝き、一筋の糸をひいている。
「ぁ……」
 ディードリットが小さな喘ぎを漏らす。それは羞恥から出たものではなく、むしろ更なる快楽を求める身体の疼きによるもののようだった。
「……見せろ」
 潤んだ瞳で主人を見つめるディードリットに、ロウルが短く命じる。
 その命令に小さく、だがはっきり頷くと、ハイエルフの娘は名残惜しげに主人から体を離し、その手を草色の短衣にかけた。
 しゅる……。
 衣擦れの微かな音とともに、ディードリットの肌を隠していたものがひとつ、またひとつと取り払われていく。やがて最後の一枚……下肢を被っていた薄布が一筋の蜜糸を引いて床に落ち、青白い光の中に輝くように白い裸身が浮かび上がる。
「……ご主人様に……私の、ディードリットの全てをお見せ致します……」
 微かに頬を染め、ディードリットは肩幅ほどに脚を開くと、主人へと捧げるように腰を前に突き出して左手を秘唇へと伸ばし、ゆっくりと左右に広げた。
 ぬちゃ……。
 愛液で濡れた秘唇が開き、内奥が露わになる。粘膜は内奥から分泌されているものでてらてらと光り、不意に開かれたことで溢れだした蜜液が白い内腿を濡らしている。
「ふむ。凄い濡れようだのう……儂に弄られて感じたか?」
「は、はい……ご主人さまの指で……感じてしまいました……」
 男の言葉に頬を染めつつも、ディードリットは従順に答える。そしてもっとよく見て貰おうと指に力を込め、はしたなく腰を突き出すのだ。
「クク……そのままでいろ」
 高貴なるハイエルフの淫猥な姿を満足げに眺め、ロウルは短く命じると部屋から出ていった。
「……」
 腰を突き出し、秘唇を広げた恰好のまま、ディードリットは息を潜める。
 薬で眠っているとはいえ、万が一にでもパーンが目覚めてこの姿を見られてしまったら……その恐怖に、ハイエルフの娘は指一本動かすことも出来ず、ただその場に佇んでいた。
「待たせたな」
 どれほどの時が経ったのか、音もなく扉が開き、ロウルが姿を見せた。
 右には湯気の立っている銀の洗面器を、左手にはタオルと……剃刀が握られている。
「ぁぁ……」
 剃られる。
 しかも、おそらくはこの恰好のまま。
 男の考えを察し、ディードリットは恥辱に小さく喘ぐ。そんな表情を看てとったのか、ロウルはにたにたと下碑た笑みを浮かべると、どっかとディードリットの目の前に座りこみ、股間に顔を寄せた。
「ひぅ……っ」
 剥き出しの粘膜に男の吐息を感じ、ディードリットの腰がひくりと跳ねる。
「クク……相変わらず、生娘のような色だ……使わせたか?」
 こぷこぷと蜜液を溢れさせている膣穴を覗き込み、ロウルが指先を秘唇に走らせる。
「ひきゅぅぅっ……! ぁ、だ、誰にも……使わせていません……」
 男の指が動く度に奔る、雷で打たれたような快楽に肢体をひくつかせながら、ディードリットは切れ切れに言った。
「自由騎士殿にも、か?」
「……は、はい……パーンにも……使わせてはいません……」
 消え入りそうな声で、答える。
「彼の傷が……癒えたあと、何度か、誘われましたが……全て、断りました……」
 それは、幾多の男に身を任せた自分では彼に相応しくないと感じたからか、首輪の魔力によるものなのか、それとも、最後の希望を失うのが恐かったからか。いずれにせよ、ディードリットはパーンにも、他の誰にも身体を開く事なく、ロウルの元へ戻ってきていた。
 主である男に操を立てるように。
「ククク……儂以外には使わせなんだか……良い心がけだ」
「……ありがとうございます……私は、ご主人様だけのもの、ですから……」
 ロウルの言葉に体を震わせ、ディードリットは嬉しげに答えた。彼女の心を代弁するように秘唇からはこぷり、と愛液が溢れだし、女性器を弄んでいるロウルの掌に滴る。
「これは丁度良い」
 機嫌良く呟き、ロウルは掌にこぼれた愛液をディードリットの恥丘へと塗りつけた。
 たっぷりとした粘液が金色の茂みを濡らしていく。
「ふむ……このくらいで良かろう」
 蜜液に濡れ、てらてらと鈍く輝く茂みに満足げに頷き、ロウルは剃刀を手に取った。
 恥丘の上端にそっと刃を押し当てると、慎重に手前へと引く。
「っ……」
 敏感な肌の上を刃が動く感覚と、微かに感じる痛みにディードリットが眉を寄せる。
「動くなよ……儂とて、お前の肌を傷つけたくはないのだからな……手をどけろ」
 秘唇を開かせていた手をどかせ、ロウルはディードの肌に丹念に剃刀を当てていく。
「ぁぁ……っ!」
「じっとしておれ。ここは特に繊細に扱わねばいかんからな……」
 硬く目を閉じ、恥辱に震えるディードリットの耳にじょり、じょりっと微かな音が届く。
 その度に股間にひんやりとした空気を感じ、ハイエルフの美貌は更なる羞恥に染まっていく。
「……ふむ、こんなものか」
 やがて、男の呟きとともに股間が柔らかな布で拭われた。
「見ろ……奴隷に戻ったお前のここをな」
 男の命令に従ってゆっくりと瞼を開き、視線を下に向けたディードリットは、
「ぁぁ……」
 と、羞恥に喘いだ。股間には男の手で小さな鏡がかざされており、女のしるしを失って全てを剥き出しにされた白い秘唇を、はっきりとディードに見せつけていたのだ。
「ククク……やはり、お前にはこの方がよい……何も知らぬ、少女のような姿がな……」
 股間越しにディードリットを見上げ、ロウルが嗤う。
「あ、ありがとうございます、ご主人様……」
 その笑みに鼓動が早くなるのを感じながら、ディードリットは主に感謝の言葉を述べた。
 嬉しげなロウルを見ただけで一瞬前まで感じていたはずの屈辱と羞恥が煙のように消え、身体の奥がじわりと更に熱くなる。
「ど、どうか……ロウル様だけの奴隷である証として……これからも、ディードリットのあそこの毛を……ご主人様の手で、剃り落として下さい……」
 自ら羞恥の行為を請い願うディードリットの秘唇から、ぴゅるっ、と蜜液が吹きこぼれ、床にぽたぽたと滴っていった。


――4――

「さて……次は、儂への服従を近いながら、手淫でもして貰うとするか」
 ようやくポーズを解く事を許され、床に両手をついて息を整えていたディードリットの頭上で、ロウルは静かに呟いた。
「……は、はい」
 男の言葉に、ディードリットは頭を床に擦り付けるようにすると尻を高く持ち上げ、両手を股間へと導いていく。
「ディードリットの……お、オナニーを……どうかご覧下さいませ……ご主人様……」
 羞恥と悦びのない交ぜになった表情を肩越しに向け、ディードリットは右手を秘唇に、左手をアナルに添え、自ら弄ぼうとする。
「待て」
 寸前でロウルがそれを止めた。
「……?」
「床でやるのもいいが……それでは、儂しか楽しめんではないか。寝ているとはいえ、自由騎士殿にもお前の乱れるさまを見せてやらんとなあ……」
「!?」
 驚愕の表情を向けるディードリットを見下ろし、ロウルはゆっくりと言葉を紡いだ。
「奴の目の前で自らを慰めろ。自由騎士殿に、お前が何者なのか……誰のものとなったかを、知らせてやれ」
「そ……んな……」
 顔をあげ、ディードリットは弱々しく首を振った。
「お願いします、ご主人様……それは、それだけは……」
「心配するな。自由騎士殿に飲んで頂いた薬は魔法薬でな。朝の光を浴びるまでは、何をされようと目は醒めぬよ。何をされようとな……」
 膝をつき、ディードリットの輝くような美貌に顔を寄せて、ロウルが囁く。
「儂は約束を違えはせん……お前が、儂だけの奴隷として命令に従っている限りは、な」
 そう言うと、露わになっているディードリットの乳房を左手で包み、ゆるゆると揉みしだいた。大きくはないが形よく張りのある乳房の感触を楽しみながら掌で乳首を押しつぶすようにすると、乳首はみるみる硬くしこり、濡れた唇からは甘い喘ぎが漏れだす。
 ロウルの手で快楽を教え込まれ、躾けられてしまったディードリットの肉体は軽い刺激にも敏感に反応し、より大きな快楽を求めてしまう。
「さあ、ディードリット……」
「……は、はいっ……」
 耳に息を吹き込まれるように囁かれ、ディードリットはぶるりと身体を震わせた。
 快楽に潤み、半ば焦点を失った瞳をベッドに向け、ふらふらと立ち上がる。
 ベッドの上にはパーンが眠っている。シャツ越しにも判る、よく鍛えられた筋肉質の胸が緩やかに上下し、規則正しい寝息を立てている。
「……パーン……」
 10年以上も共に過ごしてきた仲間であり、最愛の人間でもある自由騎士の名を呟くと、ディードリットはゆっくりとした動作でベッドに上がった。そのまま、膝をついた姿勢で傍らにまでいくと、そっと……恥じらいを滲ませながら大きく股を開き、ディードリットはパーンの頭を左右の太股で挟むように跨いだ。
「っ……ひぅっ……!」
 秘唇にパーンの呼吸を感じ、ディードリットがひくり、と身をくねらせる。それでも腰を崩すようなことはせず、ディードリットは両の手を前後から股間に這わせた。
 右手の指が秘唇を左右に開き、左手の指がアナルを弄る。
「はんっ……んくっ……ご、ご主人様……私の……ディードリットのオナニーと、奴隷の誓いを……ど、どうかご覧下さいませ……んふぅぅっ……!」
 自らの指の刺激に喘ぎ声をあげつつも、男に向けて媚びを含んだ笑顔を向けるディードリット。男が頷くのを確かめると、右手の指を秘唇の中へと潜り込ませ、途切れ途切れの喘ぎをあげながら、身体の下で眠っているパーンに向かって語りかける。
「んっ……ぱ、パーン……判る……? わ、私、あなたの目の前で……お、オナニー……んぁっ……して、いるの……あそこにも、お尻にも……指、入ってるでしょ……?」
 右手の指が秘唇を掻き分け、左手の中指がアナルにずぶずぶと沈んでいく。
「あなた……はっ……ここしか……使わなかったけど……っっ……! 私……お尻も……お尻でも、出来たのよ……おま×こ……っっぅんっ……!」
 パーンに見せつけるように尻をくねらせ、アナルに潜り込んだ左手指を出し入れする。
 ディードリットのアナルは中指を容易く呑み込み、出し入れする度に粘膜の擦れる湿った音を奏で続ける。
「ふぁぁぁっ……! ね、ねっ……? 私、お、お尻でも……イっちゃうの……とっても、気持ちいいのぉ……それに、ここも……おま×こも……」
 右手の人差し指と薬指で肉襞を広げ、パーンの眼前に粘膜を内奥まで晒しながら、中指で膣口をくすぐるように刺激して蜜液を溢れさせる。
 湧き出る蜜液はディードリットの秘唇からぽたぽたと滴り、パーンの顔を濡らした。
「とっても、気持ちいいの……ここも……んっ! ここ、もぉ……んきゅっ! おま×この中、いっぱい気持ちいいの……あなたのは、あんっ、か、感じさせてくれなかったけど……んんんっ……!!」
 前後の穴に指を差し入れ、激しく出し入れするハイエルフの娘。その度に濡れた粘膜が激しく擦れ、ぐちゅぐちゅと粘液を白く泡立たせながら淫らな音を立て続ける。
「わ……私の身体……とっても……とってもいやらしいの。気持ちいいの、大好きなの……ご主人様が、そう躾けて下さったから……」
 感極まったのか、深く瞼を閉じ、動きを止める。
「……紹介、するわね……」
 一瞬の静寂のあと、ディードリットはパーンの顔を主人が見る事の出来るように身体をずらし、
「見える……? あの方がロウル様……私のご主人様、よ……」
 ロウルへと視線を捧げて悦びの笑みを浮かべた。
「ご主人様……ディードリットは、パーンの目の前で……ご主人様を想って、自分で慰めています……ひんっ……!」
 指が肉芽に触れたのか、ディードリットの腰が跳ねる。その動きで蜜液がパーンの顔にぼたぼたと落ち、閉じられた瞼から頬を伝った。
「ね、ねぇ、パーン……私……私ね、ロウル様の奴隷としてお仕えさせていただいているの……お口も、おま×こも、お尻も躾けていただいて……ご主人様だけの奴隷になれたの……っっ」
 再び足を進め、パーンの顔にふたつの秘腔を晒す。
 指で激しく掻き回しつつ、白く泡立った蜜液を自由騎士の顔へと降らせる。
「もうっ……おま×こも、お尻もっ……、おっぱいも、唇も、舌も……ぜんぶ、ぜんぶっ……ご主人様だけのものなのぉ……毎日っ、いつでもっ、どこでもっ……ご主人様のご命令があれば、どんなことでもする牝奴隷なのぉっっ!!」
 前後の秘腔を激しく刺激し、ディードリットは叫んだ。
 眠っているとはいえ、愛しい人に全てを晒した挙げ句、他の男への隷従を自ら告げなければならない悲しみに、ディードリットの瞳から涙が溢れる。
 だが、同時に不思議な充足感が言葉を紡ぐ度にディードリットの身体を包み、ロウルへの愛着にも似た感情が媚肉を熱くたぎらせる。愛しい男との決別に泣く心と、醜悪な男への隷従に啼く体……相反する肉体と感情の渦にディードリットは翻弄され、それから逃れるようにただひとつのことを叫び続けた。
 男への、隷従を。
「ご主人様ぁ、ご主人様ぁっ! ディードは、ディードはご主人様だけのものですぅっ! ご主人様だけに身も心も捧げた、ご主人様だけに永遠にご奉仕する牝犬ですっっ!! どうか……どうか、ディードの、私の全てをご主人様が独占して下さいぃっ……!!!」
 男への隷従を誓い、奴隷として所有されることを自ら望むハイエルフ。
 涙をぼろぼろとこぼし、眉根を苦しげに寄せながらも両手指は前後の秘処に差し込まれ、秘腔を抉り、肉襞や肉芽を擦り立てている。膣穴からは指が動く度に蜜液が飛沫のように飛び、自由騎士の顔を粘液で被っていく。
「お前は儂だけの奴隷なのだな、ディードリット?」
 ディードリットの痴態を眺めていたロウルが、静かに訊いた。
「はい……はいっっ……! ディードはご主人様だけの奴隷でございますっっ……!」
「儂に全てを捧げるのだな?」
「捧げますっ! おま×こもお尻もおっぱいもお口も、私の全てはロウル様の……ご主人様だけのものですっ……!!」
「ククク……よかろう……」
 低く笑い、ロウルはベッドにあがった。ディードリットの側に寄るとパーンの体を跨ぎ、眼前に下半身を突きつける。ロウルの男性器は下着越しでもはっきり判るほどいきり立ち、牝を求めてひくついていた。
「あぁ……っ……ご主人様の……」
 つんと匂う牡の……いや、主の匂いに、ディードリットの美貌が恍惚に歪む。
「欲しいか……?」
「は、はいっ……どうか、どうかディードリットにご奉仕させて下さい……」
 激しく指を動かしながら、ロウルの男性器への奉仕を懇願するディードリット。
「ククク……よし、奉仕しろ、ディードリット」
「……! あ、ありがとうございます、ご主人さまぁ……」
 男の命令に笑みを浮かべ、ディードリットはロウルの下着に顔を埋めた。鼻と舌で懸命に布をかき分け、いきり立った男性器を横咥えにして引き出す。
 すぐに、ぶるん、と音を立てそうな勢いで男性器は露出し、先程より更に強烈な牡の匂いがディードリットの鼻孔をくすぐる。
「ご、ご奉仕、いたします……んっ、ちゅ、ちゅるっ……」
 一言断ると、ディードリットは男性器の先端に唇を這わせた。愛しい男の唇に捧げるようにピンクの唇を這わせ、鈴口を舌でちろちろとくすぐる。
 先端から溢れ出ている先走りの液を舌先で舐めとると、唾液を混ぜて何度も呑み込む。本来ならば苦く生臭いだけであるはずのそれも、今のディードリットにとっては甘露のように感じられ、先端に吸い付くようにして次々と溢れ出るものを啜りとっていく。
「そんなに儂の肉棒は美味いか、ディードリット?」
「ん……じゅる……ちゅ……は、はい……ご主人様のおつゆ、とても美味しいです……ん……んっ……」
 一旦鈴口から唇を離すと、ディードリットは上目遣いに主人を見つめながら男性器に美貌を寄せ、愛しげに頬ずりする。すべやかな肌が竿の部分を擦り、それだけでロウルの男性器はびくん、と跳ね、更に一回り大きくなる。
「ぁ……」
 それを肌で感じ、ディードリットは至福の表情を浮かべた。
「もっと……もっとご奉仕いたしますね、ご主人様……ちゅ……」
 そう囁き、頬ずりしたまま舌を伸ばして根本に這わせる。
 更に袋を舐め上げ、はむりと咥えては玉を舌先で転がす。やがてゆっくり口を離すと、自分の唾液でとろとろに濡れた袋に啄むようなキスをし、そのまま男性器の裏側を舌で舐めあげていく。
 その間にも両の手指は動き、くちゅくちゅと粘膜を擦りあげては蜜液を絞り出している。
「んっ、ちゅ……ちゅる、じゅっ……」
 大きく張った笠に舌を絡ませ、ディードリットは陶然と牡肉を味わっている。ロウルの男性器は全体からハイエルフの唾液を滴らせててらてらと光り、更なる刺激を求めて震えていた。
「ぁ……はぁ……っ……っむぅっん……っ……んん」
 それを察知したディードリットは大きく唇を開き、顔を寄せた。
 舌で先端をすくい上げるようにして支え、そのままロウルの長大な男性器を咥えていく。
「んんんん……んっ……」
 圧倒的な肉塊に苦しげに眉を寄せながらも、根元までを深々と口腔に納めると、ディードリットは唇で根元を締めつけながらうねうねと舌を這わせ始めた。更にはこくり、こくんと喉を鳴らして唾液を呑み込み、先端に喉奥の粘膜を絡みつかせていく。
 根元まで全てをハイエルフの濡れた粘膜に包まれ、ロウルの男性器は快楽に脈打つ。
 更に熱を帯びていく肉塊を口腔いっぱいに感じ、ディードリットはより一層の熱を込めて口唇を捧げ始めた。唇と口腔を締めつけながらゆっくり引き抜くと、唇を引っかけるようにしてぬぷぬぷと先端から中程までをスライドする。更に根元まで銜え込み、男性器を喉奥で扱き立てると、再び引き抜いて鈴口へと丹念に舌を這わせていくのだ。
 高貴なハイエルフが我を忘れて一心に口唇奉仕する姿を見下ろし、ロウルは快楽に歪んだ顔に笑みを浮かべた。ディードリットの口元からは涎が、股間からは蜜液が絶え間なく溢れ、粘膜が擦られてじゅぷじゅぷと湿った音が響いている。
 見下ろせば、ロウルとディードリットに跨がれてパーンが眠っている。ディードリットの下肢に隠れて自由騎士の顔は判らないが、眠りながらも愛する女の痴態に興奮したのか、男性器をいきり立たせているのがズボンの上からでもはっきりと見て取れる。
 愛する男の眼前で二穴を自ら慰め、更には他の男の性器を陶然と舐めしゃぶる美貌のハイエルフ。
 自分の上で愛する女が陵辱されている事も知らず、前を膨らませて眠っている自由騎士と呼ばれる男。
 自分が演出した性の饗宴に酔いしれ、ロウルは急速に高まっていった。
「んふぅぅんっ……!?」
 不意に口腔から引き抜かれ、怪訝な顔をするディードリットの眼前で男性器が一際大きく膨らみ、はじける。
 半ばゼリー状の塊となった白濁が勢いよく飛び、ディードリットの美貌に降り懸かる。
 額に、瞼に、鼻に、頬に、唇に……顔中に白濁液を浴び、ディードリットは被虐の快楽と共に達した。前後の秘腔には根元まで指が差し入れられ、絶頂の収縮を見せている。
「あっ、ああっ、あ――――っっ!! ご、ご主人様ぁ……ご主人さまぁっ……!!」
 強烈な牡の匂いに啼きながら自ら男性器に顔を寄せ、主人の精を受け止める。
「舌を差し出せ」
 右手で男性器を扱き、大量の精液でディードリットの美貌を存分に汚しつつ、ロウルは短く命じた。
「は、はいっ……」
 絶頂の痙攣をみせながらもディードリットは従順に頷き、桜色の舌を差し出す。
 そこに狙いを定め、ロウルは男性器を扱きたてた。
「ぁ……ふぅん……ああぁ……」
 びゅるびゅると精が吹きだし、見る間にディードリットの舌にはゼリー状の塊がこんもりと盛られてしまう。
「ククク……どうだ、ディードリット……顔も舌も儂の精にまみれさせてやったぞ?」
「は……はひ……」
 頷きつつ、ディードリットは大きく差し出した舌をひくひくと震わせていた。舌の上にはこんもりと白濁塊が乗っているために喋ることもままならず、命令がないために呑み込むことも味わうこともできない。
「飲みたいか?」
「……! は、はひっ……」
 ロウルの言葉に、ディードリットは必死に頷いた。
「よし……ゆっくりと味わうがいい」」
「……はひ……んっ……んんっ……んく……」
 主に許され、ディードリットはゆっくりと精塊を口に含んだ。強烈な牡の匂いを放つ塊をゆっくり舌先で転がし、大量に分泌される唾液と混ぜていく。瞳を閉じ、まるで極上のワインを飲んだかのように男の精を丹念に味わうディードリット。
 その表情を楽しげに眺め、ロウルはエルフ特有の長い耳に手をやった。
 所々に精を浴び、白くまだらになった耳を指先で弄びながら、「飲んでも良い」と合図をだす。
「んっ……んん……こく……ん」
 ディードリットは小さく頷き、口腔の白濁液を少しずつ呑み込んだ。唾液で薄められたとはいえ非常に濃く粘つきのあるそれは、喉に絡みつきながらゆっくりと胃へ落ちていく。
 時間をかけ、じっくりと味わいながら全てを胃に収めると、ディードリットは小さく恍惚の吐息を吐き、上目遣いにロウルを見つめた。
「ご主人様の精をご馳走して戴き……ありがとうございます……」
 至福に満ちたその美貌には液状化した白濁塊がとろとろと伝い、ほっそりとした顎から滴り落ちている。そしてそれはパーンの……膨らんだ股間へと落ち、まるで彼自身が放出したかのように、大きな染みをつくっていった……。
 ……。

 月明かりの中、ふたつの影が重なり踊る。
「あっ! ああっ! いっ、いいっ! ご主人さまぁっ……気持ちいいですぅっ!」
 ベッドの端に手をつき、尻を突き出した恰好でロウルに腰を抱えられ、ディードリットは激しく喘いでいた。
 ディードリットの膣穴にはロウルの長大な男性器が挿入され、大きなストロークで抽送されている。愛液に濡れ光る男性器は我が物顔でディードリットの膣を蹂躙し、啼き声をあげさせていく。
「あっ、ああっ! んっ、あっ、あくんっ、ひんっ……ひっっ……ひぁぁっっ……!!」
 激しく突き上げられ、何度目かの絶頂に押し上げられるディードリット。
 大きく背を反らせて華奢な肢体を震わせ、膣内の男性器をきつく締めあげる。
 その目も眩むような収縮に顔を歪ませながらも、ロウルは放出することなく更に激しくディードリットを突き上げる。
「あっあああぁぁっっ……! ご、ご主人様ぁっ……!!」
 達したばかりの体を激しく刺激され、ディードリットは苦痛混じりの喘ぎを漏らす。
「ほれ、どうしたディードリット……儂はまだ満足しておらんぞ……?」
「ああっ……も、申し訳……くぅ……ありませんっ……こ、これで……っ……ああっ!」
 絶頂の余韻を味わう間もなく、腰を振り立てては自らの膣肉で主の男性器を締めつける。だが、それは即座に自身の快楽となってディードリット自身を灼き、更なる絶頂へと向かわせるのだ。
「っっ……うあっ……ご主人様……ご主人様ぁ……わ、私、もうっ……」
 終わりのない絶頂に翻弄され、ディードリットが涙混じりの声でとどめを懇願する。
 だが、それを笑い飛ばすと、ロウルは覆い被さるようにディードリットに密着し、首筋に舌を這わせながら囁きかけた。
「まだまだとどめをくれてやる訳にはいかんな……」
 そしてディードリットの細い顎に手をかけ、前を向かせる。そこには顔中に粘液の跡をつけながらも未だ寝息を立てているパーンがいた。
「……パ……パーン……」
「……ほれ、自由騎士殿に言うべき事があるだろう……?」
 ゆったりと抽送を繰り返しつつ、ロウルは囁き続ける。「ほれ……パーン殿に、お前が今、誰に、何をされているか教えて差し上げろ……」
「ぁ……は、はい……」
 一瞬哀しげに顔を歪め、ディードリットは頷いた。
 男性器が膣肉を抉る度に頭の芯が痺れていくような感覚を憶えながらも、なんとか身体を前にずらしてパーンの耳元に顔を寄せる。
「パ、パーン……っぅんっ……!」
 膣壁を擦られ、ディードリットは顔を快楽にしかめる。それでも何とか言葉を紡ぐと、パーンの耳元に囁いていく。
「わ、私……いま、ご主人様に……おま×こを捧げているの……ご主人様の、堅くて熱いものが……っぁ……おま×こを擦って、抉ってぇ……す、凄いのっ……気持ち、いい……いいのぉ……っ……!」
 次第に激しさを増していく抽送に途切れ途切れになりながらも、愛する人へと恥辱の告白を続けるディードリット。
 その腰は男を求めるようにくねり、繋がった部分からは抽送の度に蜜液が溢れて床へとこぼれ落ちていく。
「ククク……どうした? 続けろ……」
「ぁぁ……は、はい……パーン……私、ね……これから、ご主人様の精液を、膣に注いでいただくの……ご主人様がお望みだから……っぅぅっ……! そ、それにね……ご主人様のを子宮に感じると、とっても……とっても、気持ちいいのぉ……イっちゃうのぉ……」
 ディードリットの言葉に合わせ、ロウルはエルフの小振りな膣内を激しく蹂躙していく。
 粘膜の擦れる音と濡れた肌のぶつかる音がが部屋に響き、それに女の啼き声が重なる。
「ね、ねぇ……パーン……見て……わたし……っぅんっ……私がぁ……ご主人様に、な、膣に出されてイくところ……イっちゃうところぉ……見て、見てぇ……!」
 眠っているパーンの耳元で喘ぎ混じりに言い放ち……ディードリットは後ろを振り返ると、必死に膣肉を締めつけ、腰をくねらせながら感極まったように叫んだ。
「ご主人様ぁ……! お願い、お願いしますぅ……! なかに……膣内にくださいぃぃ……!! ご主人様の熱くて濃い精液を、ディードの子宮に注いで下さいぃっ……ご主人様のチンポで、ディードをイかせて……とどめをさして下さいぃぃっ……!!!!」
「おぅっ……!」
 一際強い締めつけと粘膜の絡みつきに、ロウルが限界の声をあげる。膣壁に包まれた男性器がぐっと膨らみ……そして、爆発した。
「あああああああああぁぁぁぁぁっっ!! いく、イくっ、いくぅぅぅぅぅっ!!!!」
 ディードリットの背が大きく反らされ、汗に濡れた金髪が宙を舞う。
 火花を散らす天井。
 熱くたぎる子宮。
 男の匂い。
 静寂。
 全身を絶頂に震わせ、ディードリットはゆっくりとパーンの上に崩れ落ちていった。
 自由騎士の逞しい胸……久しぶりの、そして、おそらくは二度と得られないであろう温もりを感じながら、ディードリットは快楽の深い淵へと意識を滑らせる。
 ……それは一見、恋人同士が身を寄せあい、夢の世界をたゆたっているようにも見える。
 しかし、男の顔は女の蜜液で、女の美貌は別の男の精液でべっとりと汚されており……ふたりの顔はこれからの運命を暗示するかのように、月の光を受けて暗く蒼く輝いていた。


――5――

 涼やかな風が、傍らに立つハイエルフの髪を揺らしている。
 雲一つない青空のなか、視線を下ろせば丘の麓に小さな街が見える。
 そこを見つめるパーンの顔には、不安の色がありありと浮かんでいた。
「どうしたの、パーン?」
 恋人の横顔に憂いの表情が浮かぶのを見て、ディードリットはそっと顔を覗き込んだ。
「い、いや……なんでもない」
 慌てて視線を逸らし、それから改めて笑顔を作り、自由騎士と呼ばれた男は恋人に顔を向けた。
「ただ……また離れる事になるな、と思ってさ」
 出来るだけ軽い調子を装おうとするが、パーンの言葉には再びディードリットと離れなければならない寂しさが滲んでいた。
「そう、ね……」
 ディードリットが寂しげに顔を伏せる。
 それを見て、パーンは慌てて言葉を紡いだ。
「い、いやっ、判ってる! 別にディードが悪い訳じゃないし、緊急のための連絡役が欲しいって言うロウル殿の意見も間違っちゃいない! ただ……」
「うん……判ってる」
 言い澱んだパーンの胸鎧にそっと手を置き、ディードリットは微笑んだ。
「大丈夫よ。月に1度は定期連絡で戻るし、貴方が私を必要とするときはいつでも駆けつけるから……ね?」
「あ、ああ……」
 ディードリットの、普段と変わらぬ笑顔を見て、パーンの心にあった不安が薄れていく。
「そうだな……二度と逢えない訳じゃないんだ」
「……そうよ」
 パーンの笑顔に、ディードリットが一瞬表情を曇らせる。それに気付くことなく、自由騎士はディードリットの肩をそっと抱いた。
「報告を終えたらすぐに戻ってくる……ディードも、しっかりな」
「ええ……パーン、貴方も……ね」
 そう言うと、ディードリットは自由騎士の頬へ、そっと美貌を寄せた。
 草花の甘い香りと共に、パーンの頬に唇が触れる。
「……行ってくるよ、ディード」
「またね、パーン」
 軽く頭を下げると、パーンは街道から離れ、森の中へと消えてく。
「…………」
 ディードリットはその背中を見つめ……いつまでも、見送っていた。
 風がそよぎ、鳥が木々の間から空へと飛んでいく。
『……行ったようね』
 不意に、ディードリットの側で声がした。
「ええ……」
 驚く様子もなく、ディードリットは頷く。
『大丈夫。ここ一帯はロウル様の支配下よ。警戒を緩めているから、自由騎士ほどの男であれば本拠地まで戻るのも難しくはないはず』
「判っているわ、ピロテース」
 姿なき声に答え、ディードリットは振り返る。
 そこには銀色の短衣を身につけた、漆黒の肌のエルフが立っていた。
「そう。ならばこれ以上見送る必要はないでしょう。今日からの貴方は、私と共にロウル様にお仕えする身……あの男の事は忘れなさい」
 鋭い眼差しでディードリットを見つめ、銀髪のダークエルフ――ピロテースが言い放つ。
「……判っているわ」
 ピロテースから視線を逸らすように俯き、ディードリットが答える。
「ふん……」
 小さく鼻を鳴らすと、ピロテースは無言で背中を向けた。
 そのまま無造作に足を進め、眼下の街へと戻っていく。
「……ピロテース……」
 その背中に向けて、ディードリットは呟いた。「貴方……本当に、あの男の奴隷になったの……? アシュラムを捨てて……?」
 ピロテースの足が止まる。
 止んでいた風が、再び吹き始める。
「……それは……」
 背中を向けたまま、ピロテースが呟いた。
「それは、貴方自身が一番よく判っていることでしょう……?」
 一陣の風が、金と銀の髪を空に舞わせる。
「……もう、戻れないのよ……貴方も、そして……私も」
 最後の呟きを、シルフが空へと運んでいく。
 再び歩み始めたピロテースの背中を見つめ……ディードリットは哀しげに頷いた。
(そう、ね……私達はもう……戻れない)
 首を巡らせ、愛する男が消えていった森に視線を向ける。
(さよなら……パーン……)
 心の中で呟くと、ディードリットは主人に仕えるもうひとりの奴隷……ピロテースに遅れないよう、足早に丘を下っていった。


[to be continued...?]


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