New Desire

 

New Desire

「はぅぅっ……!」

 大きな寝台の上、まるで獣のように四つん這いになったレイリアの膣内へと、カシューは何度目かの射精をした。
 もう既に膣内は受け止めきれる許容範囲を超えており、注がれた精液のせいで下腹部が大きく膨らんでいた。

「ハァ……ハァ……ハァ……へい……か……」

 そしてカシューがようやく膣内から男性器を抜き放つと、レイリアは豊かな乳房を大きく揺らしながらシーツの海に崩れ落ちていった。

(レイリア……)

 目の前で延々と繰り広げられた二人の痴態に見入っていたディードリットは、冷たい石の床に座り込んだまま両腕で自分の体を抱きしめていた。
 倒れこんだレイリアの上に薄布をかけたカシューは、そのまま寝台の縁へと、大きく足を開いて腰を降ろす。
 その股間の間には、つい今しがたまでレイリアの膣内に納められていたものが、未だに隆々とそそり立っていた。

「さて、何が聞きたいんだったかな」

 部下の妻と関係を結んでいるにも関わらず、その態度は実に堂々としたもので、カシュー王らしい豪胆さを改めて感じさせられる。
 あまりにも驚くべき現実に気後れしていたディードリットも、気を取り直して目の前の事実を問い質す。

「……どうしてレイリアと?」
「欲しかったからだ。女を抱くのに他に理由がいるのか?」
「でもレイリアはっ……スレインがいるわ……それにニースも」

 魔術師というよりは学者のような風体をしたレイリアの夫と、まだ幼い二人の子供のことを思い浮かべる。
 その二人のことを思えば、カシューの行いは絶対に許す事が出来ない。

「スレインは納得して差し出したがな」
「そんなこと……あるはずないわ!」

 いくら相手が自分の仕える王だからといって、自分の妻を黙って差し出すような男など居るはずが無い。
 スレインのレイリアに対する気持ちをよく知っているディードリットには、尚更その言葉が信じられなかった。
 だがディードリットの思いを否定する言葉を、当事者でもあるレイリア自身が放った。

「陛下の……言う通りなのよ、ディードリット」
「レイリア……」

 カシューの背後でゆっくりと体を起こしたレイリアは、薄布を肩から羽織っただけの状態でディードリットを見つめた。
 その瞳はまだ熱く潤み、薄っすらと上気した頬や汗ばんだ肌に、終ったばかりの情交の残滓が感じらる。

「どういうことなの?」
「この国……フレイムの国家基盤は脆いわ」

 国王を前にしているにしてはやや不遜な物言いだったが、カシューは咎める事無く黙って聞いていた。
 レイリアは少しだけ熱を感じさせるような声音で、淡々とフレイムの置かれた状況について語っていく。
 カシューによって一代で築かれた国、それがフレイムだ。
 もちろん、元からこの地方で生活する数多くの部族の協力があって始めて成った事だが、カシューという巨大な存在が無ければこの地方は今も混迷を極めていただろう。
 そしてフレイムが国家として成熟していく中で、ある事が大きな問題となりつつあった。
 どこの国家でも起こり得る問題───世継ぎ問題である。

「でも、カシュー陛下はまだ若いじゃない」

 確かに、カシューの年齢を考えれば慌てて世継ぎを求める必要があるとも思えない。

「そう。でも、いずれ世継ぎは必要になるわ……そしてどの部族から陛下の后を輩するのかで争う事になるでしょうね」
「それは……」

 以前からその事について問題になっていたのは、ディードリットもよく知っていた。
 風の部族の指示を得てフレイムの王となったカシューだったが、風の部族も一枚岩という訳ではない。
 その内部で様々な勢力争いが繰り広げられるなったのも、国家というものの宿命だろうか。
 更には炎の部族の存在もある。
 族長であるナルディアさえ生きていれば、これほどカシューの后として相応しい女性は居なかっただろう。
 風の部族と炎の部族がまさしく一体となり、フレイムの国家としての基盤を強く支えたに違いない。
 だが、そのナルディアも今はいない。
 そして更に、カシュー本人は世襲制である事にも拘ってはおらず、ナルディアを失った炎の部族の中から、力のある者が次の王になれば良いと思っている節がある。
 だが、フレイムの要職を占める風の部族の者達の多くは、それをよしとはしなかった。

「そこで、正室である王妃を決めるのは後回しにして、せめて血統だけは途絶えないようにするために、妾となる女たちが集められたわ」
「じゃあ、レイリアも……」
「そう、私もそのひとり。最初は部族の有力な家柄の子女だけから選ぶはずだったのだけれど、それではまた部族内での争いに繋がってしまう」
「だから貴女を……そういう事なのね」
「ええ」

 レイリアであればどの部族とも深い繋がりはない。そのうえ、マーファの神官である事で他者を牽制する事もできる。
 その意味を理解したからこそ、国家としてのフレイムの未来を考えたスレインは全てを受け入れたのだろう。

「でも、本当にそれで納得しているの!?」

 スレインがフレイムの事を愁い、そんなスレインの思いを汲み取ったとはいえ、愛する男とは別の相手のものになるなど、そう簡単に受け入れられる事ではない。

「でも、ディードリット……貴女だってそうだったのでしょう?」
「っ……!」

 レイリアのそのひと言がディードリットの胸に深く突き刺さる。

(そうだ……私もパーンの為に……)

 自らが穢れる事も顧みず、男達に体を差し出してきたのはレイリアと同じ事ではないか。
 これまでの自分を思えば、レイリアがどんな気持ちで現実を受け入れたのか、全て理解できてしまった。

「そうよね……分かったわ、レイリア」

 カシューに対する憤りが完全に拭い去れた訳では無かったが、少なくともレイリアが現実を受け入れている以上、もうディードリットが口を挟む事ではない。
 そして二人の会話を黙って聞いていたカシューが、そこでようやく再び口を開いた。

「そういう訳だ、納得できたか?」
「……ええ」

 事情については納得できた。だが全てを認められた訳でもない。
 彼を慕うパーンには悪いと思ったが、これからは付き合い方を改める必要があるように思えた。
 だが、そこでふとディードリットは気になってしまった。
 二人の関係がそうであるとして、どうしてわざわざそれを呼び出して伝えたのかだ。
 そんな素朴な疑問に対して答えたのは、淫蕩な笑みを浮かべたレイリアだった。

「ディードリット、貴女にも陛下の妾になってもらいたいのよ」
「な……何ですって!? ど、どうして私がっ」
「陛下がそうお望みなのよ……ね、陛下?」

 甘えるように顔を覗きこむレイリアに、カシューはその体を抱きしめるように引き寄せた。

「ああ、そうだ。なに、すぐに決めろとは言わん……暫く考えてみるのだな、何があの男の為になるのかを」
「くっ……」

 カシューの言葉は、案にパーンの為に受け入れろと要求しているようなものだ。
 この国を追い出されたとしたら、もうパーンを回復させる手立てが無くなってしまう。

(パーン……!)

「んふふ……へいか……あ……あん……」

 再び行為を始めた二人を残し、ディードリットはカシューの自室を後にした。
 だが、心の動揺を表すかのようにその足取りは不安定で、壁を手にしなければ真っ直ぐに歩けない程だった。



 共に休めるよう用意された部屋へと戻り、横になっているパーンの傍らへと膝を着く。

「パーン……」

 助け出した時と比べても遥かに顔色もよくなり、肉体的にはかなり回復しているのは間違いない。
 あとは傷ついた精神さえ回復させられたら、きっと元通りの姿を取り戻すはずだ。

(レイリアにその事をを聞きそびれたわね……)

 あの状況では、とてもそんな事を聞ける雰囲気ではなかった。
 しかし、果たしてレイリアはパーンの精神を甦らせる手立てに心当たりがあるのだろうか。
 もし手の施しようがないと言われたら、これからいったいどうすればいいのか。
 ようやくここまで辿り着いたというのに、ディードリットの胸に安らぎが訪れる事はなかった。


 そんな二人の元をレイリアが訪れたのは、その日の深夜の事だった。

「レイリア」
「こんな時間にごめんなさい」
「いえ、それはいいけれど……」

 昼間の光景が頭に浮かび、つい目線を合わせられず視線を逸らしてしまう。

「少しいいかしら?」
「あ……ええ、お願い」

 ディードリットに断りを入れてから、レイリアは横になっているパーンへと近付き、その額にそっと手を触れた。
 マーファの司祭であるレイリアは、癒しの呪文の使い手だ。
 その癒しは肉体的な損傷だけではなく、対象となる人物の精神にまで及ぶものもある。
 今のパーンは精神を司る精霊の力がかなり弱まっており、もうディードリットではどうしようもないのが実情だ。
 今はレイリアの力に頼るしかない。

「……」

 パーンの額に手を当てたまま、暫く目を閉じて精神を集中させていたレイリアだったが、不意に力なく首を振った。

「駄目だわ」
「そんな!」

 レイリアに見放されてしまったら、後はもう頼る術は無い。
 パーンの古くからの友人であるエトを頼るという手が無いわけではなかったが、彼はもうファリスの国王なのだ、そう簡単に頼る事もできない。

「これは癒しの力の及ぶところではないわ。でも、彼なら何か分かるかも……」
「彼?」
「この国の宮廷魔術師よ」

 フレイム王国の宮廷魔術師、それはつまり彼女の夫であるスレイン・スターシーカーに他ならない。

「そう言えばスレインはどうしているの?」

 ブレードに辿り着いてから、まだ一度もスレインの姿は見ていない。

「貴女と入れ違いでアラニアへ向かったわ。あと数日で戻るはずだから、それから見てもらいましょう」
「そう……」

 レイリアに駄目だと言われた瞬間は、目の前が真っ暗になったような気がしたディードリットだったが、どうやら首の皮ひとつ繋がったようだ。
 しかし、そのスレインとて必ずパーンを救えるという保証がある訳ではない。
 もしもスレインまで首を横に振ったら、その時はどうすればいいのか。
 そう考えて背筋が寒くなり、思わずディードリットは自分の腕で体を抱きしめた。

「そう言えば……どうするのか決めたの?」
「え?」
「陛下の妾になることよ」
「それは……」

 部屋に戻ってから、どうするのがパーンにとって一番よい選択なのか、自分なりに考えてはいた。
 もちろんパーンの意識さえ戻れば、そんな事を受け入れる必要は無い。
 だが、もしもこのままの状態が続くのだとしたらどうだろうか。
 例えスレインにも不可能だったとしても、ディードリットは諦めるつもりはない。
 ロードス島全土はもちろん、場合によっては北の大陸へと渡る事も考えている。
 だがその間、パーンはいったいどうするのか。
 ひとりでは満足に歩く事もできない彼を安全に預けておけるのは、フレイムを覗けばヴァリスぐらいしかない。
 ヴァリスの国王エトであれば、喜んでそれを引き受けてはくれるだろう。
 だが、ヴァリスは未だ戦争の傷から癒えきってはおらず、一部ではエトの力が及ばず混乱している部分もあると聞く。
 それにヴァリスの国力を疑う訳ではなかったが、万一の事を考えるとカシュー王の膝元が最も安全なのは間違いない。

「どうするの?」
「……」

 本当はエトの元へと向かうのが正解なのかもしれない。
 だが、もうこれ以上は厳しい移動をパーンに強いたくは無いという思いもある。
 けしてそれが最善の策だとは思わなかったが、やや迷いを残しつつディードリットは決断を下した。

「分かったわ……カシュー陛下に貴女から伝えてくれる?」
「そう……」

 ディードリットがカシューの妾という立場を受け入れた瞬間、レイリアは安堵のような笑みを口元に浮かべていた。



「そうか、決めたか」
「はい」

 翌日の夜、政務を終えたカシューの元へと、ディードリットは改めて引き合わされた。
 その姿は普段の若草色をした服装ではなく、膝丈ほどの純白のドレスだった。
 以前からこの城での宴などの時に身に着けていたものだが、改めて手を入れられている。
 元々は丈の長い普通のドレスだったのだが、カシューの前でのみ身に付ける愛妾としてのドレスとして、丈を短く、そして背中や胸元を大胆に開けた意匠になっている。
 それに合わせて髪も女官達の手で結い上げられ、見ていたレイリアが思わず溜息を漏らすほどの色香を放っていた。

「どうした、早く来い」

 部屋の入り口で直立しているディードリットをカシューが手招きするが、それには応えず代わりに決意を込めた表情で口を開いた。

「その前に、お願いしておきたい事があります」

 パーンの為にとカシューの求めを受け入れたディードリットだったが、その立場は同じ妾のレイリアとは明らかに異なる。
 フレイムの世継ぎ問題の為に受け入れた訳ではないし、パーンが回復すればこの場に留まるつもりもないのだ。
 そしてもうひとつ、パーンの回復の手掛かりを探す為に旅に出る可能性がある事を、予め認めさせておかなければならない。

「なるほどな、それがお前の条件か」
「はい。もちろんパーンの事は……」
「それは分かっている。あいつは……俺にとっても特別な男だからな」

 過去を懐かしむかのような表情で呟くカシューに、ディードリットは内心で胸を撫で下ろしていた。
 今のカシューの態度を見る限り、この城に残していけばパーンの身は安泰だろう。
 スレインが戻ってきて回復の手立てがあればよし。そうでなくとも、何らかの手掛かりを求めて世界を巡るとしても、安心して旅立つ事が出来る。

「そのお言葉が頂ければ、もう思い残す事はありません」

 昨日、レイリアと激しく情を交わしていた寝台の上、大きく胡坐を組んで座っているカシュー。その姿は既に何も身に着けてはいない。
 全ての迷いを吹っ切った表情で、ディードリットは静かに歩み寄っていった。

「陛下……時が訪れるまで、この身を捧げて尽くします」
「その身か……心はあいつのもの、という事か」
「……仮初めの心でよろしければ」
「構わんよ、来い」

 長い娼婦としての生活で身に付いたやり取りを、カシューもまた楽しんでいるようだった。
 そしてディードリットは寝台のすぐそばまでやって来ると、その場でドレスを脱ぎ落とす。そして簡素な下着だけになってしまうと、カシューの待つ寝台の上へと上がっていった。
 ディードリットの軽い体が増えたくらいでは、木製の寝台は軋みすら上げはしない。

「陛下……失礼します」

 カシューが両脚を投げ出すように広げると、その間へと這うようにして近付いていく。カシューの股間では昨日レイリアを貫いていた男性器が、早くも硬くそそり立っていた。
 ディードリットはそれに手を伸ばすと、竿の部分を握ってゆっくりと上下に扱いていく。
 はしたないとは思いつつも、ついその逞しさを比べてしまう。
 これまでに何人もの男達のものを見てきたが、そのどれよりもカシューのものは逞しかった。

(レイリアの言う通りだわ……)

 昨夜、カシューの妾となる事を受け入れると告げた後、ディードリットは改めてレイリアの心境を尋ねてみた。
 愛する夫と、その間に生まれた愛娘。二人の存在がありながら、どうしてこんな事が受け入れられるのか。
 いくら夫の意思があったとはいえ、そう簡単に割り切れてしまえるものではないはずだ。
 そんなディードリットの真剣な問いかけに、レイリアは複雑な表情を浮かべて胸のうちを明らかにした。

「……まだ過去を引きずっているのよ」
「過去……?」

 レイリアが『カーラ』という名で呼ばれていた頃、灰色の魔女は部下達に対して報酬代わりに自らの体を与えていた。
 その中にはカーラが参ってしまう程の性豪もおり、激しい性交を幾度となく繰り返していた。もちろんレイリアにもその間の記憶は残っており、サークレットを外されて肉体を取り戻してからも、その影響は強く現れていた。

「恥ずかしい話だけれど、あの人だけでは……」
「それで……だったのね」

 スレインの顔を思い浮かべて、ディードリットは妙に納得させられてしまった。
 魔術師というよりは学者肌の青白い顔と細身の体。見た目からの印象では、あまり激しくレイリアを愛しているようには思えない。
 その点、カシューとレイリアの絡みはディードリットから見てもかなり激しいものがあった。
 あれだけの激しさと逞しさがあれば、満足させられない女はいないだろう。
 戦士としての腕前だけではなく、女性に対する強さも相当なもののようだった。
 その後もレイリアはカシューがどれだけ逞しいのかを、自らの経験談としてディードリットに語って聞かせた。
 そして今、その話の内容が事実である事を、身を持って体感しようとしているのだ。

「ん……」

 ディードリットはひとつ喉を鳴らし、その男性器の先端へと顔を近づけ、まずは挨拶代わりに軽く口付けをした。

「ちゅ……」

 それからおもむろに先端部分に唾液で濡れた舌を絡め、硬くそそり立った男性器を唾液で濡らしていく。
 その舌使いに激しさは無いものの、繊細な動きで丹念に舐めていった。
 カシューもその舌使いには満足気な表情を浮かべ、特に注文も付けずにディードリットに任せてしまっている。

「ちゅ、ちゅる……れろ、れろ……ん……ちゅぱ……んん……れろぉ……」

 そして先端部部んを唾液に塗れさせると、おもむろに唇を開いて咥えていく。
 その小さな口いっぱいに頬張り、先端が喉の奥に当たるまで咥え込むと、ディードリットの頭がゆっくりと上下し始める。
 口腔内では舌が生き物のように複雑に絡みつき、唾液を啜る音を響かせながら男性器を刺激していく。
 奉仕を受けながらカシューがその髪に触れると、ディードリットは心地良さそうに目を細め、特徴的な耳が小さく震えた。

「んちゅ……ん、んん……ちゅ、ちゅぅ……ぢゅ、ぢゅ、ぢゅるっ……んん……」

 付け根の辺りを手で優しく刺激しながら、先端からじっくりと唇と舌で奉仕していくディードリット。
 カシューはそんなディードリットの頭を見下ろしながら、触れていた手で結い上げられていた髪を解き解いた。
 流れるように広がった髪は、結い上げられていた跡も見せず白い肌へと降り注ぐ。
 その髪を片手で掻き上げながら、ディードリットはカシューの男性器を大きく咥え込んでいった。

「ん……んん……」

 そのまま頭を上下に動かし、唇で扱くようにしてしゃぶり上げる。
 口腔内で舌を絡め、喉を鳴らして激しくしゃぶられると、カシューも堪らず小さく呻き声を漏らした。

「むぅ……」
「んっ……んっ……んっ……んっ……んぢゅるっ……」

 小気味よく頭が上下し、黄金色の髪が軽やかに舞う。
 そしてその奉仕もいよいよ佳境へと差し掛かり、カシューにも限界が近付いていた。
 唇や舌、それに口腔から伝わる感触、そして何よりカシューの反応から射精が近いことを悟る。
 これまでの経験から身に付いてしまったことだったが、そんな事を察してしまう自分が少しだけ惨めに思えた。
 と、ディードリットの気持ちがほんの僅かだけ逸れてしまったその瞬間、カシューはディードリットの頭を抑えるようにして熱い迸りを解き放っていた。

「出すぞ!」
「んくっ……!」

 勢いよく放たれるそれを慌てて舌で受け止め、口の中へと溜め込んでいく。
 カシューの男性器は大きく脈打ちながら、恐るべき量の精液をディードリットの口腔内へと注いでいった。

(凄い量……昨日だってあんなに出していたのに……)

 武力に秀でた者はその精力も激しいのか、ディードリットが感じるカシューの印象は、まさしく性豪といった感じだった。
 そしてカシューはディードリットの口の中へたっぷりと射精すると、ようやくその口を解放して大きく満足気な溜息を漏らす。
 口の中を生臭い精液で満たされたディードリットは、舌に絡みつく男性的なその体液をゆっくりと飲み下していった。

「ふぅ……」
「ん……んく……ゴク……ゴク……ゴク……」

 量もそうだったが、その味も他の男達と比べると濃密で、カシューという人物の男性的な強さを感じさせる。
 これだけ濃い精液を注がれていれば、レイリアがカシューの子を宿すのも時間の問題かもしれない。
 そして同様に、種族的な問題から人との子を成すのは難しい自分ですら孕ませられるのではないかと、その精液を味わいながらディードリットは感じていた。

「んふぅ……はぁ……ん……あっ!」

 口の中に堪った精液を全て飲み干し、口元を拭っていたディードリットをカシューがいきなり押し倒した。
 寝台の上で仰向けにされ、そのまま細い脚を大きく開かされる。
 カシューは遠慮の無い視線で両脚の付け根を直視すると、口髭を蓄えた口元を歪めて微笑んだ。

「濡れているな」
「はい……」

 男性器への奉仕はけして一方的なものではない。
 淫らに奉仕しているのだという思いや、これからこの逞しいもので貫かれるのだと思うと、ディードリット自身の体も熱く火照っていく。
 カシューの言った通り、美しいとさえ言えるその女性器は薄っすらと蜜に濡れていた。
 充分とまではいかなかったが、もう挿入には問題のない状態だ。しかしカシューはそれで納得はせず、ディードリットの股間へと顔を近づけていった。

「へ、陛下……ああっ!」
「返礼だ、受け取れ」

 カシューはその無骨な指先でディードリットの可憐な秘唇を左右に広げると、いきなり核心である突起へと吸い付いた。

「んはぁぁっ!!」

 硬く尖り初めていた小さな突起は、それだけで一気に充血してしまい、控えめに包皮から顔を覗かせる。
 そしてそれをカシューは舌で弄びながら、指先で小さな膣口を探り始めた。
 いきなりの刺激に小さく蠢く膣口は、すぐに指先の腹にその感触として探り当てられる。
 カシューは濡れ始めた狭い穴へそのまま指先を潜り込ませると、クリトリスを舌で弄びながらディードリットの膣内をほぐし始めた。

「んんっ……んあぁっ……!」

 寝台の上、透き通るような肌を朱に染めて喘ぐディードリット。
 淫らに喘いでしまうことを恥らいながらも、甘く切ない声を抑える事ができない。
 節くれだった男らしい指先に掻き乱されるうちに、膣内も激しく潤んで蜜を溢れさせていく。
 唾液の音なのか、それとも自らの愛液の音なのか。どちらかは分からなかったが、淫らに響く水音に羞恥を刺激されつつ、ディードリットはその快感に飲み込まれていった。

「あっ、あっ、あっ……んんーっ!」

 寝台の上で悶える度に、美しい髪と乳房が激しく揺れる。
 これまでの男の中にも、技巧という点ではカシューを上回る者はいた。
 しかしカシューのものは荒々しさと巧みさが混在となった愛撫で、ここまで乱れさせられたのはディードリットも初めての経験だった。
 膣奥からは絶え間なく蜜が溢れ続け、柔らかな膣襞はカシューの指先に絡みつき、更なる刺激を求めて蠢いていく。

「くぅっ……へ……陛下っ……もうっ……はぁっ……!」

 このまま達してしまいたいという衝動もあったが、それ以上にもっと満たされたいという内なる欲求が、ディードリットにカシューを求めさせた。

「お願いします……陛下のお情けを……下さい……」

 潤んだ瞳でそう求めるディードリットに、カシューは股間から顔を上げて口元を拭って頷いた。
 そしてそのまま体の位置を変え、一度目の射精から回復した男性器の狙いを定める。
 髪と同じように黄金色をした恥毛を指の腹で撫でながら、濡れた膣口へと先端部分を押し当て、ゆっくりと体重を乗せて挿入していった。

「んっ……んんっ……んはぁっ……!」

 膣内に溜まっていた愛液を押し出し、その代わりに硬く逞しい男性器が膣内を埋め尽くしていく。
 小柄なディードリットらしく狭い膣内は限界まで拡がり、その男性器を柔らかく締め付けていた。
 カシューはまずディードリットの膣内を味わうかのようにゆっくりと出し入れし、焦れたディードリットが視線で訴えかけるのを待ってから、おもむろに激しく腰を突き動かし始める。

「フフフ、ハイエルフというのがこれほど淫蕩だとはな」
「んくっ……わ、私は……くふぅんっ……!」

 カシューがそう言うのも無理はない。
 亜人とは言っても普通のエルフとは違い、ハイエルフはより精霊に近い存在だ。
 外界の争いごととは隔絶された世界で暮らし、長い時の中を生きている孤高の存在。
 彼らはその尽きる事の無い寿命故に、性欲というものが人よりも遥かに少ない。
 ディードリット自身も人間の世界で暮らすようになるまでは、自分がそのような行為に及ぶとは思いもしていなかったほどだ。

「穢れなく美しいエルフの娘も、男を知って変わるか……」
「うぅ……へ、へい……か……うぅんっ……あ、ああっ……!」
「まあ、だからこそ男は汚したくなるのだがな」

 それはディードリットを抱いた男達の総意に近いものだった。
 人にはない美しさと清廉さを持ち、そして何よりたったひとりの男を愛しているディードリット。
 本来は知るはずの無い愛と欲を知った美しきハイエルフ。男達はその魅力に引き寄せられていく。

「ほら、どうした。もっと欲しいんじゃないのか?」

 カシューは腰の動きを緩めると、ディードリットを焦らすように煽っていく。
 ディードリットはその細胞のひとつひとつまで、男に抱かれる喜びを刻み込まれてしまっている。
 カシューの剛直を挿入されて肉欲に目覚めた肉体は、もう抑える事などできない状態にまで高まってしまっている。
 ディードリットは自分の行いがパーンを裏切っていると知りつつも、より強い刺激を求めずにはいられなかった。

「お、お願いします……もっと、もっと突いてっ……陛下ので犯してくださいっ……!」

 その言葉を引き出して満足したのか、カシューは改めて激しく腰を打ちつけ始めた。

「んはぁぁぁっ……!」

 ディードリットの体を押え付けながら、太く硬い男性器で膣内を掻き乱す。
 それまでとは比べ物にならない激しさと逞しさで、ディードリットの細身の体が悲鳴を上げるほど、強く激しく貫いていく。

「あ、あ、あ、あ、んああぁっ! すごいっ、すごいっ、すごいのぉっ……!!」
「……どう凄いんだ」
「全部……全部擦られてるっ……ああんっ! んんっ……や……やぁんっ……!」

 激しく首を左右に振りながら、その手をカシューの厚い胸板へと伸ばし、無意識のうちに脚が腰へと絡みつく。
 切なく喘ぎ乱れるディードリットを見下ろしながら、記憶の中にある彼女の姿を思い描いていた。
 まるで舞うかのように軽やかに動き、その存在自体が鋭利な刃物であるかのように敵を切り裂いていく。
 そしてその隣には、常にパーンの姿があった。

「……お前は美しいな」
「はぁ、はぁ、はぁ……え……?」

 カシューの言葉を聞き漏らしたディードが不思議そうな表情を浮かべるが、カシューは何ごとも無かったかのようにディードリットの上半身を抱え上げた。

「あ……ん、んん……」

 繋がったまま自分を跨らせるようにして、向かいあったまま座らせる。
 そしてディードリットの唇を奪いながら、体を揺らすようにして下から突き上げ始めた。

「んんっ……んっ、んふぅっ……んちゅ、ちゅぅ……んはぁっ……!」

 ディードリットもカシューの動きに合わせて自ら腰を上下させ、その逞しい体に抱きついて唇をねだり、一気に絶頂へと昇りつめていった。

「はぁっ……んんっ……ちゅ、ちゅぅ……んん……ああ……へいか……私もう……っ!」
「このまま出してやるから、共に果てろ!」
「んくぅっ……!」

 その言葉はまるで求婚のようではないかと思いながら、ディードリットはカシューの肩口で切なく叫びながら達してしまった。
 同時にカシューも小さく呻き、ディードリットの熱く蕩けた膣内へと射精する。

「んああっ! イクッ、イクッ、イクッ……イクぅぅっ……!!」
「くっ……!」

 口腔内で感じたあの激しい射精が、今度はディードリットの膣内で炸裂する。
 膣内を限界まで広げた硬く太い男性器が暴れ、膣内から子宮までを大量の精液で埋め尽くしていく。

(ああ……熱いのが……こんなにも……)

 その精液の熱さを胎内に感じながら、ディードリットは仰向けに寝台へと倒れこんでいった。

<続く>