LはLOVEのL

 

LはLOVEのL

(何でこんな事になってるんだ?)

 青葉春助は戸惑っていた。
 休日の午後、暖かな陽気に誘われて寮の自室で昼寝をしていたはずだ。
 それがどうだろう。ふと気付くと隣りで小さな寝息を漏らす人影がある。

(……エルか?)

 薄目を明けて隣りを覗うと、春助の顔のすぐ横にエルこと朝丘夏美の寝顔があった。
 たぶん、春助に会いに男子寮を訪れて眠っている春助を見つけたのだろう。
 普通ならそこで声をかけて起すか、また時間を変えて会いに来る所だが、そのまま横で一緒に寝てしまうのがエルという女の子の性質を見事に現している。

(ったく、何考えてるんだか)

 無防備な寝顔を向けるエルに少し呆れながら、春助は再び眠りに落ちようとしていた。
 隣りに女の子が寝ているという状況も、この季節の午後の陽気には勝てないのだ。

(畳も暖かくて、気持ちいいんだよなぁ……)

 二つに折った薄っぺらい座布団を枕にした午睡は、最高の贅沢だと春助は思う。
 普段ならこんな自堕落な生活は好まないところだが、今日だけは特別だ。
 それほど、今日の陽気は心地良かった。

(もう少しだけ……もう少しだけ寝よう……)

 だが、再び春助がまどろみの中に沈もうとした瞬間、それは聞えた。

「ン……んふぅ……」

(ッ!?)

 エルの鼻腔から漏れる甘い吐息。一瞬寝言かと思ったが、どうやら違うらしい。
 春助は再びそっと薄目を開けて、隣りで寝ているはずのエルの様子を覗う。

(寝てる……よな?)

 隣りのエルの様子は先程と特に変わった様子は無い。
 強いて言うなら、頬が少し上気しているように見えるぐらいだ。

(やっぱり寝言か? やれやれ……)

「……あ……あぁん……」

(!?)

 やはり寝言にしては様子が変だ。
 ひょっとしたら熱か何かでうなされているのではないか。そう思った春助だったが、次の瞬間そんな考えは無産してしまった。
 薄目を覗う春助の視界の先で、エルの肉感的で大きな体がもぞりと動いた。
 そして春助がほんの少しだけ首を動かした瞬間、いきなりそれが視界に入った。

(お、おい……何やってるんだよ)

 隣りで寝ているエルは、上は体のラインがはっきりと出たTシャツに、下はミニのプリーツスカートだ。
 そしてそのスカートの中へと、彼女の両手が潜り込んでいたのだ。更には、その手は間違いなくスカートの生地の向こうで動いているのが分る。
 もぞもぞと太股を擦り合せながら、小さく両手を動かしているエル。
 それが何を意味しているのか、ようやく春助にも理解できた。

(ば、馬鹿野郎っ……いや、女だから野郎じゃないけど……いやいや、そうじゃなくて……)

 あまりに衝撃的な出来事に、春助の頭も激しく混乱しているようだ。

(エ、エルが……エルがそんな事するなんて……)

 すぐ隣りで女の子が自慰行為に耽っているという事実よりも、エルという女の子がそんな事をするのが信じられなかった。
 エルは普段から積極的に抱きついたり、自分からキスを求めてみたりとスキンシップを好むタイプではあったが、そこから先はまだまだ縁遠いものだと思っていた。
 この年代は女の子の方が成熟していると言うが、性に関しては春助は明らかにオクテと言えた。

「はぁ…………はぁ…………はぁ…………」

 前髪が少し表情を隠していたが、目を閉じたエルの頬は薄っすらと赤く上気して見える。
 そして時折、甘い溜息に似た吐息と共に、唇の間から濡れた舌先が顔を覗かせた。
 その光景に春助の男性自身も瞬く間に反応していくが、狸寝入りを続けている以上、そこを手で押える訳にもいかず、反応するがままに任せておくしかない。

(し、鎮まれ、鎮まれっての!)

 だが、いくら念じても、罵倒しながら命じても、血液の流れが集中していくのを留められはしない。
 気が付けばズボンの中心がまるでテントのように、不恰好に盛り上がっている。実に情けない姿だ。

「あふぅ……ンッ……春助くぅん……」

 そんな春助の苦労も露と知らず、エルは相変わらず自慰行為を続けたままだ。
 こうなってしまってはどうしようもない。春助は黙って狸寝入りを続け、事が終るのを待ち続ける事にした。
 もちろん、身動きを取り様がなかった事もその理由の最たるものだが、それと同時に、純粋にスケベ心からの興味もあった。

(ったく……)

 心の中で諦めたように呟くと、春助は寝返りをうつ振りをして少し体勢を変えた。
 これで先ほどまでよりもエルに近付き、エルの様子をより詳しく覗う事ができる。

(しかしこれは……凄いな)

 仰向けになって寝ているエルの乳房はTシャツの胸元を押し上げ、その発育のよさを誇らしげにアピールしている。
 その胸がエルの手の動きに合わせて扇情的に揺れ、春助の欲望をダイレクトに刺激する。
 自分の鼓動がどんどん早くなっていくのが、春助にもよく分っていた。

「ンッ……んふぅ……あ……やん……んっ……」

 いつの間にかミニスカートの裾が乱れて捲くれ上がり、エルの両手がショーツの中へと潜り込んでいるのが見えた。
 その手の動きはかなり激しく、甘い喘ぎに混じって淫らな水音が春助の耳にも届く。
 部屋の中に充満する甘い香りと刺激的な水音で、春助はもう頭の奥が痺れてまともな思考が出来ないような気がした。

「あ……あぁん…………んっ……くっ……あ……しゅ……春助くぅん……んんっ……」

 かなり高まってきたのだろうか。エルは大きく体をくねらせると、片手でTシャツの裾をたくし上げていった。
 薄手の生地が胸元まで捲り上げられると、その下から豊かな乳房が顔を覗かせる。
 瑞々しい乳房は誇らしげに上を向いて形を崩さず、それでいてエルの体が動くと柔らかそうに小気味よく揺れた。

(服の上からでも大きいと思ってたけど……)

 同世代の女の子と比べて明らかに発達している乳房に、春助は完全に目を奪われてしまった。
 そして狸寝入りをしていたのも忘れ、吸い寄せられるようにエルの体へと近付いていく。

(ハァ……ハァ……ハァ……)

 興奮で鼻息も荒く、今にも涎を垂らしそうに口をだらしなく開き、春助はエルへと引き寄せられていった。

(エ、エル……)

 とその瞬間、仰向けに寝ていたエルが春助の方へ向かって寝返りをうった。

(ッ!?)

「……しゅんすけ……くん……?」

 その瞬間、二人の目が合い、時間が凍りつく。
 短い沈黙の時間が流れ、そして凍り付いていた時が再び流れ始めた。

「あ、あのなエル、これはその……」

 慌ててその場を取り繕うとする春助だったが、春助自身も激しく動揺しており言葉が上手く繋がらない。
 一方のエルは現状を理解していないのか、潤んだ瞳で目の前の春助を熱く見つめている。

(だ、駄目だぞ、雰囲気に流されるような事があっては、男としてあまりに情けない!)

 春助は、エルと結ばれる時はお互いの気持ちを確認し合い、将来を誓ってからだと密かに考えていた。
 硬派というよりは、ある意味でロマンティストな春助だった。
 だからこそ、今のこの雰囲気に流されたくは無いと強く思うのだが、エルの瞳に引き寄せられるように、春助の顔がエルの顔へと少しずつ近付いていく。

「……春助くん」

 そのまま瞳を閉じて唇を差し出すエル。

(わっ、馬鹿! なんで目を閉じるんだ!)

 微かに濡れた唇を目の当たりにして、更に激しく動揺する春助。
 今にもその唇に自分の唇を重ねてしないそうになるが、それを寸前で必死に堪える。

「んぐ……ぐぐぐぐ」
(駄目だ駄目だ駄目だ! こ、ここでキスなんてしたら……)

 しかしそんな春助の努力を嘲笑うかのように、不意をついてエルの方から唇が重ねられた。

(ッ!!!!)

 驚きのあまり目を見開く春助。
 そしてその唇の柔らかな感触と、エルから漂う甘い香りに、理性は吹き飛ばされる寸前だった。

「……春助くぅん……」

 どれほどの時間キスしていたのだろうか。
 春助にとっては無限とも思える長い時間だったが、たぶんほんの数十秒の事だろう。
 春助の唇を解放したエルは、今度は嬉しそうに春助の頬に顔をすり寄せる。

「だぁいすきよ……春助くん」

 春助は聞き慣れたその言葉を、今にも切れてしまいそうになる理性を必死に繋ぎ止めながら聞いていた。
 そうしなければこのまま流されて一線を越えてしまう、そう確信していたからだ。

(そりゃ俺だって興味はあるけど……まだ早いだろ、まだ……)

 しかしエルの方はもう完全にその気に……というか、自慰行為の途中だった為か、完全に発情状態である。

「春助くぅんってばぁ……ねぇ、もっとキスしよ?」
「ちょ、ちょっと待てエル! さっきのは不意打ちであって、俺の本意ではないぞ!」
「じゃあ春助くんはしたくないの? 私は……したいなぁ……大人のキス」
「お、大人の…………っ!?」

 完全に春助の敗北だった。

「キ、キス……だけだぞ」
「うんっ」

 口ではそう言ってみたものの、春助自身、キスだけで終れる自信は無かった。
 体が密着しているので視界には入らないが、直前の状態のエルはTシャツを捲り上げて乳房を露出していた。
 手を伸ばせばいつでも触れられる距離に、それはあるのだ。
 そんな春助の思いを察したのか、エルが小さく笑った。

「うふふ」
「な、何だよ」
「何でもないよ……ね、しよ?」
「あ、あぁ……」

 緊張で手が震えているのを隠す為に、春助はエルの体を強く抱きしめる。
 そして二人は同時に瞼を閉じ、ゆっくりと唇を重ねた。
 軽く唇が触れ合い、それから深く重ねられる。同時にエルの方から舌先が伸び、春助の唇を割って口腔へと進んでいった。

(は、入ってきやがった……)

 頭では理解していても、実際に体験するとそれは驚き以外の何者でもなかった。
 そして同時に、その心地良さに春助はもう白旗を上げる他なかった。

(なんだよこれは。キスってこんなに気持ちいいのかよ)

「ん……ちゅ……ちゅ……」

 舌先を絡め、互いの舌を吸う。それは舌を使っての甘美な愛撫。
 二人はその心地良さに酔いしれ、何度も何度も唇を重ねては舌を絡ませ合った。

「んふぅ…………はぁ…………しゅんすけくぅん……」
「……エル」

 春助の胸に頭を預けるようにして、エルは甘えるよな仕草を見せる。
 そんなエルの頭を優しく抱くようにして、春助はこの後の事に考えを巡らせていた。

(やっぱりエルもその気なんだよな。だったら…………いやいや、ここは男子寮だぞ、誰が来るか分ったもんじゃないし……)

 すると春助の胸に頭を預けたままエルが、小さな声で囁くように問い掛けてきた。
 その言葉が春助の考えを蹴散らし、新たな展開へと二人を強引に導いていく。

「ねぇ春助くん……私がしてたの、見てたんだよね?」
「え……あ、それは……」
「……続き……見てみたい?」
「は…………はぁ!?」

 一瞬、何を言っているかと思った。だが、その言葉が意味する事を理解した瞬間、春助の口から出た言葉がそれだった。
 首筋まで真っ赤にしながら、春助の顔を覗き込むようにしてエルは言葉を続ける。

「だって、ずっと見てたんでしょう? 興味……あるのかなぁって」
「そ、そりゃ俺だって興味ぐらい………………いいのか?」
「恥かしいけど、春助くんが見たいって言うなら……」

 そう言われて断れるほど、今の春助に自制心など残されてはいなかった。
 悩んだのはほんの数瞬、気が付けば春助はエルの言葉に頷いていた。

「アハ……やっぱり春助くんも興味あるんだ」
「わ、悪いかよ」
「ううん、悪く無いよ。それどころか嬉しいかも」
「嬉しい?」

 何が嬉しいのか解らないといった表情の春助に、エルは頬を赤く染めて少し俯いた。

「だって春助くん、私がキスしようとすると怒るでしょ……だから、そういう事に興味無いのかなって」

 それはエルが場所を選ばず迫ってくるからだ、そう言いかけた春助だったが、俯き加減のエルの表情を見て言葉を飲み込んだ。
 少し照れながらも、エルは本当に嬉しそうにしていたのだ。
 硬派を自称する春助としては簡単に受け入れてしまうのは抵抗があったが、そのエルの表情を見て何となく自分も嬉しくなっているのに気がついたのだ。

(まぁ……こういうのも悪くはないよな……でも……)

 春助には一つだけ気になっている事があった。
 それを聞いておかないと、どうにも収まりがつかないのだ。

「ひとつだけ聞いていいか?」
「なぁに?」
「……いつからなんだ」
「え?」
「だから、いつからその……してるんだよ」
「あ……」

 春助が何を尋ねているのかを理解して、エルの顔がまるで火が点ったように一気に真っ赤になる。

「…………春助くんと会ってからだよ」
「俺と?」
「うん。春助くんと出会って、どんどん好きになって……そしたら……」
「そ、そうなのか」

 面と向かって言われると、流石に春助も何と言って返したらいいのか解らない。
 一方のエルは告白してしまった事で逆に興奮が再燃し、瞳を激しく潤ませながら春助を見つめている。

(か、可愛い……エルってこんなに可愛かったのか……)

 その瞳に吸い込まれそうになる体を、辛うじて残った理性で必死に繋ぎ止める。
 そしてエルはそんな春助から体を離すと膝立ちになり、黙ってスカートの中へと両手を入れた。

「エ、エル……」

 やはり恥かしいのか春助の方は見ようとせず、床に視線を落としたままエルはショーツを下ろしていった。
 太股を下りていったショーツが丈の短いスカートの裾から顔を覗かせ、そのまま膝の上まで下ろされる。
 その時、一瞬だけエルが春助の方を見た。

(ゴク……)

 だが、春助はエルの下半身に気持ちが集中していてそれには気付かない。
 そしてエルはそのまま座り直すと、ショーツを足首まで下ろし、片方の足だけを抜いた。
 目の前で繰り広げられる扇情的な光景に、春助の喉は限界まで渇いていく。

「…………春助くん……見て」

 囁くように言いながら、エルは両膝を立てるように座ったまま、少しずつ膝を開いていく。
 スカートの裾は太股の付け根まで捲くれ上がり、下腹部を覆う物は何もない。
 膝が肩幅ほどに開かれると、微かに濡れたエルの女性器が完全に露出した。

(これが……これがエルの……)

 恥毛はやや薄く、秘肉はぴったりと閉じて合わさっている。
 間違いなくそれは男を知らない乙女の処女地だ。
 エルは暫くそのままの姿勢で春助の気が済むまで見せ続けてから、おもむろに指先を這わせていった。

「ン…………ハァ……」

 閉じた秘肉の上を指先が何度も行き来し、そしてゆっくりと秘唇へと沈んでいく。
 目の前で見ている春助には、その微かな水音も聞えてくる。

「ぁ……あぁ……ンッ……はぁ……あふぅ……」

 口元から漏れる甘い溜息の一つ一つが春助の脳を刺激し、少しずつ理性を殺ぎ落としていった。

(凄ぇ……)

 秘唇へと滑り込んだエルの指先は、入り口付近を軽くノックするように触れてから、その細くしなやかな指先に蜜を絡め、小さな秘腔へと進入を試みる。
 しかし未開の膣口は異物を拒絶するかのように指先の進入を拒み、硬く閉じたまま沈黙を守る。
 エルの指先は一旦は退き、今度はその周辺部からの攻略を試みる。

「ハァ……ハァ……んっ……んんっ……」

 指の腹でマッサージするかのように、秘腔の周辺を丹念に愛撫していくエルの指先。
 その指先を濡らす蜜の量も次第に増え、陽射しに照らされてキラキラと光っている。
 
「ン……あふぅ……ん……ちゃ……ちゃんと……見えてる……春助くぅん……ハァ……ハァ……」
「あ、あぁ……見てるぞ」

 行為に没頭する為か目を閉じて、エルは指先の動きだけに神経を集中させる。
 濡れた指先は肉襞の間を滑るように前後し、もう一方の手はTシャツの裾をたくし上げ、その豊かな乳房を揉みしだく。
 中央に押し寄せるように揉みながら、指先は巧みに乳首を弄ぶ。
 その手馴れた感じのする動きに、春助はあらぬ興奮を覚えていた。

(……まさかな……そんなはず無いよな……)

 エルの秘所は明らかに処女地なのだが、経験も知識も無い春助にそこまでの事は分らない。
 ただ、目の前のエルが繰り広げる痴態から、彼女が自分よりも遥かに経験豊富なのではないかと想像してしまうだけだ。

(……エル)

 そう、春助はエルが既に経験済みなのではないかと思い始めていたのだ。
 エル自身はただ自慰行為に没頭しているだけなのだが、その姿のあまりの淫らさに、春助の目にはまるで淫猥な娼婦のように見えていた。
 だからと言って彼女を軽蔑したり気持ちが醒めたりする訳ではなく、ひょっとしたらエルが既に他の男性と経験済みなのではないか。そう思う事で不思議な興奮を覚えていたのだ。

「あっ……あぁん……ンッ……んふぅ……ハァ……ハァ……ひぅっ……!」

 そんなはずはない、心ではそう思っている。
 けれど、目の前で繰り広げられる光景が、春助を惑わし続ける。
 そしてそんな春助の気持ちなど微塵も感じていないエルは、ひたすら快感だけを追い求めて指先を動かしていた。

「ハァ、ハァ……んっ……あっ、あっ、あぁっ! やっ……んんっ……やんっ!」

 秘唇の間を行き来し、蜜にぬれて顔を覗かせているクリトリスを弄ぶ。
 エルの指先は慣れた動きで巧みに快感を紡ぎ出し、彼女をめくるめく絶頂へと導こうとしていた。

(ダメだ……何考えてるんだよ俺は……エルは……エルは……)

 『そんな軽い女じゃない』、そう考えようとして言葉に詰まってしまった。
 頭の中では、あられもない姿のエルが見知らぬ男に抱かれている。
 そして春助は思い余って、行為に没頭していたエルに声をかけた。

「エ、エル……!」
「んんっ……ハァ……ハァ……しゅんすけ……くん……?」
「お、お前……しょ、しょ、しょ……」
「?」

 エルは閉じていた目を開いて目の前の春助を見つめる。
 その濡れた瞳に見つめられながら、春助はゴクリと息を飲んだ。
 そして暫しの沈黙が二人を包む─────

「処女……なんだよな?」

 春助の喉はカラカラに渇いていが、辛うじてそれだけの言葉を喉の奥から搾り出した。
 そしてエルは突然の問いかけに一瞬だけ戸惑ったような表情を見せたが、すぐに春助の気持ちを理解して小さく微笑んだ。

「そうだよ」

 その言葉で、限界ギリギリまで高まっていた緊張感から春助は解放された。

「はぁ………………そうか、そうだよな……」
「だって私のバージンは春助くんのものだもん。いつか絶対に春助くんにあげようって……そう決めてるんだもん」
「エ、エル……」

 そしてエルは春助を見つめたまま、中断していた行為を再開した。

「ハァ、ハァ……んんっ……あっ……ダメッ……んぁっ!」

(ゴク……)

 春助の息を飲む音がエルの耳にも届く。

「見られてる……春助くんに見られてるのっ……ン……はぁ……あぁんっ!」

 小振りのクリトリスは痛いほど固くしこり、エルの指先がリズミカルに弄ぶ度に、その快感によって甘い叫びを迸らせる。
 同じく小さな膣口からは絶え間なく蜜が溢れ、花が咲くように綻んだ秘唇をそれこそ朝露に濡れる花弁のように輝かせ、指先の動きをより滑らかにしていく。

「あふぅ……ん……ダメ……感じちゃう……いっぱい感じちゃうっ……あっ、あっ、あっ、あぁっ!」

 いつの間にか中指を膣口へと浅く滑り込ませ、蜜の飛沫を撒き散らしながら繰り返し出し入れさせている。
 その動きによって膣内から更に大量の蜜が掻き出され、春助の部屋の畳を濡らしていく。

(ゆ、指があんなに……)

 上気してほんのりと桜色に染まった肌。
 薄っすらと浮かんだ透き通る汗。
 耳朶を刺激する甘く艶やかな喘ぎ。
 そして淫らに繰り広げられるエルの痴態。

 気が付けば春助はテントのように膨らんだズボンの前を両手で押え、その窮屈さに必死に耐えていた。
 できる事なら今すぐに開放して、思い切りシゴキたい。いや、目の前の少女へと欲望の全てをぶつけてしまいたい。
 そんな衝動さえも体中に渦巻いていた。

(ダ、ダメだ、そんな事できるわけねぇよ……)

 しかし春助の必死の努力とは無関係に、エルはもう限界を迎えようとしていた。

「あっ、あぁんっ! しゅ、春助くぅんっ!! わたしっ……もうダメェッ……!!」

 指先の動きは更に加速し、腰までも指の動きに合わせて淫らにくねっている。
 春助はその光景に目を奪われたまま、自分の欲望の象徴を必死に押さえ込む。
 しかし、それさえも次第に快感へと変わり、押さえつける手の力に自然と強弱が付いてくる。

(エルッ……エルッ……!!)

「春助くんっ、春助くぅんっ!! あっ、あぁっ、イっちゃうよっ! 私……イっちゃうのぉっ!!」

 薄く目を開き、恍惚とした表情でエルは叫んでいた。
 そして、膣口へと浅く潜り込んでいた指先が一段と深く突き立てられた瞬間、少女は絶頂へと昇りつめていた。

「あっ……あぁっ……イクッ……あっ、あっ……あぁ……イクぅっ……!!」

 そして同時に、春助も自らのズボンの中へと射精していた。

(あぁ…………出ちまったよ……)

 情けないと思いつつも、その射精の快感に肩を振るわせる春助。
 絶頂の余韻に浸りながらゆっくりと目を開いたエルは、そんな春助の姿を潤んだ瞳で見つめた。

「春助くぅん……」

 ズボンの前を押えたまま動けない春助に、ゆっくりとエルが這うように近付いていく。

「エ、エル……こらっ、こっち来るんじゃねぇ!」
「……春助くぅん……」

 大量の愛液に濡れた指先が伸びて春助の頬に触れる。
 そしてそのまま頭を抱えるように胸元へと力いっぱい抱き寄せ、エルは春助の頭に頬擦りした。

「春助くん……だぁ〜いすきよ」
「い、いいから離れろって! コラ! そこに触るな! や、止めろ〜〜〜!!!!」

春助の叫びが寮内に響き渡り、聞えて来た足音に二人が慌てるのは、ほんの数十秒後の事である。

END