Hard Escape

 

Hard Escape

 ピロテースを救い出したダークエルフの一団は、ロウルの屋敷へと火を放っていた。ディードリットがその細腕でパーンを抱えて地下室から抜け出す頃には、その炎は屋敷の上部の全てに広がっていた。
 パーンを連れ出すのがあと一歩遅れていたら、二人はその炎と煙にまかれて命を落としていたかもしれない。燃え上がる炎を見上げながら、ディードリットはその細い肩を小さく震わせた。

 屋敷で働いていた者達が逃げ惑う中、ディードリットは逃げ場を探す。ロウルが死んだ以上、もう追っ手がかかる事も無いのだが、人目を避ける為に急いでこの場から離れる必要があった。パーンは一人で立つ事すら出来ない状態であったし、何よりディードリット自信が全裸のままなのだ。
 屋敷の裏側から人目を避けるようにして必死にパーンを抱えて移動するが、ディードリットの体力ではそれも長くは続かない。屋敷から少し離れた路地裏へと隠れるのが精一杯だった。
 人目につかないように物影にパーンを横たえ、自分も何か体を隠すものは無いかと周囲を探る。しかし、小さな板切れのようなものしか薄暗い路地裏には転がっていなかった。
「……どこかで拝借するしかないわね」

 独り言のように呟きながら諦めてパーンの傍へと戻ろうとした時、遠くに輝く炎の光を背に、何者かが路地の入り口に立っていた。

「ッ!?」

 慌てて身構えるディードリットだったが、その手には武器になるような物は何一つ無い。だが、身動きすらできない今のパーンを守れるのは私だけなのだと、自分を奮い立たせて立ちはだかった。

「……どうしてこんなところに?」

 聞き覚えのある男の声だった。身構えるディードリットに、その声の主はゆっくりと近付いてくる。そして目の前までやって来た時、ディードリットはその男の事を思い出した。

「あ、貴方は」
「久しぶりだね、もうあの店では働いてないのかい? それにしても……」

 男は少し呆れたような表情で、全裸のディードリットを見つめた。相手が見知った男であると気付いた途端、ディードリットは裸でいる事が恥ずかしくなり、慌てて両手で体を隠す。

「こ、これはその……」
「訳ありなんだね? うちに来るかい?」
「でも……」
「連れの人も、手当てした方が良さそうだ」

 ディードリットも自分一人なら、この後も自力で何とか状況を打開できる自信はあった。しかし衰弱したパーンを連れてでは、全てが困難なのは間違いない。それに、できるだけ早く治療しなければ、パーンが回復する見込みも少なくなっていってしまう。

「……お願いします」

 男の全てが信じられる訳ではなかったが、今は他に方法も無い。それに、男がけして悪い人間では事をディードリットは知っていた。彼は娼館で働いていた時の常連客の一人なのだ。



「どうだね?」
「……」

 この街で商人をしている男の屋敷へと招かれ、ようやく落ち着く事ができたディードリット。衣類と食事、そしてパーンの為の薬を貰い、既に2日が過ぎていた。
 パーンはとにかく衰弱しており、体力回復の為に滋養に効果のある薬が与えられ、ディードリットに付き添われて眠り続けている。

「顔色は良くなってきているようだが……」
「そうね、少しは良くなってるみたい」

 地下牢で見た時に比べれば、確かにパーンの顔色は良くなってきている。しかし、目を覚ます気配は全く感じられず、まだ一言も言葉を発していない。
 ディードリットが見る限り、精神を司る精霊の力がかなり弱まっている。それを回復させることができればパーンの意識も甦るはずなのだが、その為にはまず、衰弱したパーンの体力を回復させなければならない。
 しかし、かなりの日数をあの劣悪な環境の地下牢で過ごしたのだろう、パーンが回復するにはかなりの時間を要するように思えた。少しでも早く回復させるには、かなり高位の癒しの力が必要だろう。

(レイリアに頼めば何とか……でも、ここからでは遠すぎるわ)

 マーファの司祭であるレイリアは、たぶん夫であるスレインと行動を共にしている。そして二人は今、カシュー王の元に居るはずだ。

(フレイムは遠い……遠すぎる)

 歩くことさえままならない今のパーンを連れてフレイムまで旅するのは、あまりにも過酷だ。馬車、あるいはせめて馬でも用意できればと思うが、今のディードリットにはそれすら難しい。
 二人を匿った男は善人ではあったが、彼にそこまで頼る事はできない。

「必要なものがあれば言って下さい、手に入るものであれば何とかしますから」
「ありがとうございます……マードックさん」
「いえいえ、大した事ではありませんから」

 マードックというこの商人の男が、自分に対して好意を持っているという事は、ディードリットにはよく分かっていた。そうでなければ、娼婦と客だったという過去の関係だけで、明らかに訳有りな二人を匿ったりはしないだろう。
 そしてマードックは、様々なものをディードリットに提供はするが、それに対する見返りを全く求めようとはしない。ディードリットの礼の言葉にさえ恐縮するほどだ。

「マードックさんが居なければ、私たちはどうなっていたか」

 眠ったままのパーンの頬へとそっと手を伸ばしながら、ディードリットは傍らに立つマードックを見上げる。

「あんな場所で再開できたのは、きっと貴女を助けろという啓示なのですよ」
「マードックさん……」
「では、私は失礼しますよ」

 そう言ってマードックは二人の部屋をあとにした。ディードリットは感謝の気持ちを込めて、彼の消えた扉を見つめ続ける。
 そしてある決意をして、再びパーンへと向き直った。

「少しだけ一人で待っていてね……パーン」

 そっとパーンの頬へと口づけし、ディードリットはマードックの消えた扉へと向かった。



「どうしました?」

 自分の寝室へと入ったところへディードリットが現れ、何かあったのかと尋ねるようにマードックは言った。
 ディードリットはそれには何も答えず、ただマードックの寝室へ入ってもいいかとだけ聞き返す。ディードリットの態度に戸惑いつつも、マードックは彼女を寝室へと招きいれた。

「何かあったんですか? それとも、何か必要なものでも?」
「……マードックさん」
「はい?」

 ディードリットはマードックへと近付くと、彼の胸元へとそっと手を伸ばした。

「お礼を……させて下さい」
「……ディードリットさん」
「でも、今の私にはもう……自分しかありませんから」

 ディードリットはマードックへの礼として、彼が胸に秘めている好意に応えようと決めていた。もちろんそれは限られた間だけのものだが、マードックが望むのなら、恋人にも娼婦にもなるつもりだった。
 一方のマードックは突然のことに驚きはしたが、すぐに落ち着いてディードリットの両肩へと手を伸ばした。

「駄目ですよ。貴女はもう娼婦ではないのでしょう?」
「……」
「それに……貴女が娼館で働いていたのも、彼の為なのでしょう?」

 頭の上も少し薄くなり始めた、人生経験豊富な年齢のマードックは、ディードリットが娼婦として働いていた理由や、パーンとの関係をしっかりと見抜いていた。

「別に代償を求めて貴女たちを助けた訳じゃないですよ」

 何も気にしなくていい、そう言ってマードックはディードリットを優しく見つめた。そんなマードックの気持ちは嬉しかったが、ディードリットの気持ちはもう決まっている。そしてそれは礼としての意味だけではなく、今の彼女の素直な気持ちの現われでもあるのだ。
 ディードリットはマードックを見つめ返すと、そのまま彼の胸へと飛び込み、背中へと腕を回して抱きついた。

「それでも……貴方に何かお礼がしたいの……ううん、お礼だけじゃない……」
「ディードリットさん……」
「気が引けると言うのなら、今だけ娼婦に戻ってもいいわ」

 そこまで言われては、マードックも彼女の申し出を突っぱねる事はできなかった。ディードリットに対して好意を抱いているのは間違いないからだ。
 同じように腕を回して、ディードリットの細い腰を抱きしめる。そして胸元で自分を見上げるようにして見つめるディードリットに囁いた。

「ありがとう、ディードリットさん」
「……ディードって……呼んで」
「ディード……」

 揺れる薄明かりに照らされながら、二人の顔がゆっくりと近付く。こうして間近で見るのは久しぶりだったが、本当にディードリットは美しいとマードックは改めて感じていた。
 そして二人の吐息が互いの顔へと触れる距離まで近付き、ディードリットがゆっくりと瞳を閉じた。二人の距離は更に近付き、鼻先を掠めて唇が軽く触れ合う。

「ん……」

 ディードリットの鼻腔から、軽く溜息のような声が漏れ、そのまま二人は深く唇を重ねていった。
 マードックの舌がディードリットの口腔へと潜り込み、彼女の舌を捕らえて絡み合う。ディードリットは舌を絡ませたまま、マードックの体を強く抱きしめた。

「んんっ……んっ……ちゅ……ちゅぱ……」

 たっぷりと互いの舌を味わった後、二人はもう一度見つめあう。そして再び唇を重ね、今度は何度も何度も繰り返し、互いの唇を吸い合った。
 思いのこもったキスを繰り返すうちに、マードックの腕の中でディードリットの体温が上昇していく。それはまるで、ディードリットの体内で官能の炎が燃え上がり始めたかのようにマードックには感じられた。

「ちゅ…ちゅぅ…ちゅ…ん…んふぅ…」

 唇を味わいながら、薄い部屋着の上からディードリットの体の線を確かめるように、マードックの腕がゆっくりと撫でていく。その手の感触に刺激されたのか、ディードリットが小さく体をよじった。
 そして彼女の方から唇を離し、そっとマードックの胸元へと手を添える。

「……マードック"さま"」

 それは娼婦としての呼びかけだった。
 胸元からマードックを見上げるディードリットの白磁のような頬は薄っすらと朱に染まり、切れ長の目は微かに潤んで瞳が揺れていた。
 そしてディードリットの呼びかけに応えるかのように、マードックの指先がディードリットの唇をそっと撫でる。それは口での奉仕を要求する合図でもあった。
 その合図を受けてディードリットは小さく頷き返し、マードックは下半身を露出させて寝台へと腰を下ろしす。マードックの男性器は既に隆々とそそり立っており、先端からは先走りの液が溢れててらてらと光っていた。
 一瞬、それに魅入ってしまったかのようにディードリットの体が硬直したが、すぐに自分も部屋着を脱ぎ始める。
 部屋の薄明かりの中に映し出されるディードリットの裸身は、まるで女神の彫像が動き出したかのような美しさを持っていた。

「失礼します……」

 一糸纏わぬ姿になると、ディードリットはマードックの足元へと跪く。すると目の前に迫った男性器がピクッと小さく震え、ディードリットは思わず口元に笑みを浮かべた。
 マードックのものを目にするのは久しぶりだったが、以前と変わらない逞しさを誇っている。
 ディードリットはおもむろに手を伸ばすと、竿の部分を優しく握って軽く何度か擦り上げ、そしてその先端部分へと唇を寄せた。微かに唾液に濡れて光る薄い唇が触れると、マードックはくすぐったそうに表情を和らげた。

「ちゅ……」

 まるで挨拶するように男性器へとキスをすると、薄い唇の間から覗いた舌先がちろちろと先端部分を這い回り始めた。刺激としてはけして強いものではないのだが、舌の動きが何とも扇情的で、その光景を見下ろすマードックの気持ちは嫌が応でも盛り上がってくる。
 一方のディードリットは、マードックの男性器から立ちのぼる雄の匂いに、興奮で鼓動が高鳴っていくのを感じていた。

(駄目だわ……抑えなれなくなる)

 ロウルの館での生活で目覚めてしまった雌としての本能が、ディードリットの小柄な体の中で情欲の激しい炎となって燃え上がり始める。それはもう理性で抑え切れるものではなく、いちど燃え上がったその炎は、彼女の体を燃やし尽くすまで消える事は無いのだ。
「ん……んっ、んぐ、ちゅぅ……れろれろ……」

 美しいハイエルフの娘は丹念に男性器へと唾液をまぶし終えると、チラリとマードックへと見上げるように視線を向け、はにかんだような笑顔を浮かべた。そしてマードックがそれに応えて微笑み返すと、再び視線を目の前の男性器へと戻し、ゆっくりと先端から口腔へと飲み込んでいった。
 温かく濡れた感触に包まれていく男性器の感覚に、思わずマードックは小さな声を漏らす。
 ディードリットは喉の奥まで男性器を咥え込むと、舌を絡ませ、喉を鳴らしながらゆっくりとしゃぶり始めた。彼女のそんな口淫の技巧に、マードックは痺れるような快感を覚える。

「んっ、んっ……ぢゅっ、ぢゅるっ、ぢゅっ」

 マードックの見下ろした視線の先で、ディードリットの黄金色の髪が揺れる。そしてその髪の間から伸びた特徴的な耳に心引かれて、思わず彼は手を伸ばして耳先に触れた。

「あっ……ん……」

 敏感な耳に触れられて、ディードリットは思わず男性器から口を離して甘い声を漏らしてしまった。そこは普段でも比較的敏感な部分なのだが、性的な興奮が高まっていると、普段以上に敏感になってしまうのだ。

「……すまない」

 予想外の反応にマードックは反射的に手を引き、申し訳なさそうにディードリットを見つめる。ディードリットの手に握られた男性器も、心なしか少し大人しくなってしまったようにも見えた。

「ううん……ごめんなさい、ちょっと敏感になってるみたい」
「そうなのかい?」

 ディードリットの耳が性感帯である事はマードックも知ってはいたが、確かに以前はここまで敏感には反応しなかった。しかし、それがロウルの館での暮らしに原因があるとは彼も思い至りはしなかった。

「じゃあ、続きを」
「あ、いや……」

 再び男性器へと唇を近付けようとしたディードリットを、マードックが躊躇いがちに引き止める。その表情はどこか恥ずかしそうでもあり、戸惑ったようでもあった。
 そんな様子に不思議そうに小首をかしげたディードリットに、マードックは覚悟を決めて告げる。

「そろそろ終わりそうなんだが……久しぶりだし、最初はその……」
(ああ、そういう事なのね)

 マードックの言葉を最後まで聞かなくても、ディードリットは彼が言わんとしている事を理解した。このまま口淫で果てるのではなく、ディードリットの膣内へ出したいと言いたいのだ。

「……はい」

 ディードリットはマードックの足元から立ち上がり、静かに彼の隣へと腰を下ろす。マードックはそれを待って、ディードリットを寝台へと押し倒していった。

「もう大丈夫ですから」

 寝台に仰向けになったディードリットは、僅かに両足を開いてそう告げる。マードックが視線を下ろしていくと、確かにそこは夜露に濡れたかのように、淡い茂みの奥が輝いていた。
 マードックが久しぶりにディードリットを抱く事に胸を高鳴らせていたのと同じように、ディードリットもまた彼に抱かれる事に対して、期待に胸を膨らませていたのだ。

「ディード……」

 覆いかぶさるようにして顔を近づけ、視線を絡ませるように見つめ合い、そして唇を重ねていく。その間にマードックはディードリットの足の間に割り入ると、彼女の両足を抱きかかえた。
 唾液を絡ませて唇と舌を吸いながら、そのまま男性器を押し当てて腰を沈めていく。

「んっ……んんっ……」

 熱く充血した男性器が、しっとりと潤んだ肉襞を割り開いて押し進んでくる。

(あ……あぁ……入って……くる……)

 唇を塞がれているディードリットは、鼻腔から吐息を漏らしつつ、込み上げる挿入感にくぐもった声を上げる。それはけして苦痛によるものではなく、歓喜に震えた声だった。

「んふぅ……あぁ……はぁ……」

 根元まで全て彼女の膣内へと挿入して、ようやくマードックはディードリットの唇を解放する。ディードリットは頬を上気させてマードックを見上げ、そのまま両手を彼の背中へと廻した。
 小柄なディードリットに体重がかかり過ぎないように気を使いながら、マードックはゆっくりと抽送を開始する。その動きが緩やかなのは、ディードリットを気遣うと言うよりも、激しくすれば今にも果ててしまいそうだからだった。

「はぁー……はぁー……ん、んん……あ……うぅん……」

 控えめな喘ぎを漏らしながら、マードックの緩やかな抽送に身を委ねるディードリット。マードックの腰が打ち付ける度に、彼女の小振りだが形の良い乳房が小気味良く弾む。
 できればこのままディードリットを絶頂へと導きたいところだったが、どうやらそうも言っていられないような状況だ。マードックはもう限界が近い。緩やかに動いているだけだというのに、膣内の激しく絡み付いてくる感触に、今にも果ててしまいそうだった。

「……そろそろ出すよ」

 マードックの様子から薄々と感じ取っていたディードリットは、その言葉に優しく微笑み返した。
 そして両足をマードックの腰に絡めるように巻きつかせ、両手をマードックの顔へと伸ばす。頬へと触れたその手でマードックの顔を引き寄せ、ディードリットはキスをせがむように唇を突き出した。

「ん……ちゅ……んぐ……ん……」

 深く唇を重ねつつ、マードックは少しだけ抽送の勢いを増す。
 強く、深く、ディードリットの膣内を貫き、何度か先端が子宮口を叩いた後、マードックは射精した。

「うっ……」

 久しぶりだったのだろう。思っていた以上に大量の精液が吐き出され、ディードリットの膣内を満たしていく。子宮いっぱいに吐き出された精液の温もりに、ディードリットは満ち足りた表情でマードックを見つめた。

(凄い……こんなにたくさん……)

 全てを注ぎ終えたマードックは、ゆっくりと腰を引いて男性器を抜き取る。だが、ディードリットの膣内から抜いたそれを見て、自分自身で驚いてしまった。普段なら一度出せば萎えかけてしまうものが、まだ隆々とそそり立ったままだったのだ。
 ディードリットもそれを見て、上半身を起こして嬉しそうに微笑んだ。

「こんなに出したのに、まだ凄く元気……」
「こんなのは久しぶりだよ」

 マードックは苦笑いを浮かべて顔を赤くした。
 ディードリットは寝台の上で膝立ちになり、自ら秘肉を指先で割り開く。すると膣内に溜まった精液が溢れ出し、寝台の上に大きく染みを広げた。
 エルフと人間の間には子を成すのがかなり難しいと頭で理解してはいても、自分がこれだけの量を彼女の膣内に射精したのだと思うと、それだけでマードックの興奮は高まってきてしまう。
 そしてそれは同時にディードリットに対する征服欲の表れであり、彼女に対する深い気持ちの表れでもあった。

「ディード……」

 マードックの体力的な事を気遣って彼女の方は一息入れてからと思っていたのだが、彼の方がすぐに続きを求めてきた。もちろんディードリット自身に異論があるはずもなく、簡単に後始末をすると再びマードックへと体を寄せていった。

「マードック……ん……」

 そのまま向かい合うようにして、寝台の上に座ったマードックへと密着して腰を下ろしていく。つい先ほどまで彼のものを呑み込んでいた膣内は、そそり立った男性器を易々と受け止めていった。

「んんっ……ん……はぁ……はぁ……ん……ちゅ……ちゅぅ……」

 根元までしっかりと受け入れ、マードックの首に纏わりつくように腕を廻したディードリットは、何度か軽く唇を触れさせ、そのまま深くキスしていく。
 マードックもディードリットを抱くように背中へと手を廻し、彼女の体を優しく支えた。
 そしてキスを繰り返しながら、ゆっくりとディードリットの腰が動き始める。

「んっ……んっ……んんっ……ちゅ……ちゅぅ、ちゅ……」

 マードックもその動きに合わせて、腰を揺らすように動かしてディードリットの膣内を擦っていく。
 互いにそれほど大きく動けるわけではなかったが、互いの肌が触れ合う密着感が快感を増幅する。ディードリットに至っては胸元が押し付けられ、体が上下に揺れるたびに胸の先端にある突起が擦れ、甘美な刺激を生み出していた。

「あっ、あっ……んっ……んんっ……ちゅ……んぐ、んぐ……んふぅ」

 まるで愛し合う恋人同士のように、何度も何度も唇を重ねながら快感に身を委ねていく二人。次第にディードリットの腰の動きも大きく、強くなり、マードックの突き上げるような動きも勢いを増していく。
 動きが激しくなるにつれ、ディードリットは次第に唇を重ねる余裕も無くなり、マードックにしがみ付くようにして体を支えながら、激しく、そして淫らに腰を振る。

(あぁ……もっと……もっと欲しいっ……)

 巧みに腰の動きに変化をつけながら、快感を貪るように腰を動かすディードリット。
 一度目の射精を終えていたために辛うじてその快感に耐えつつ、マードックも必死になって彼女を貫き続けた。

「はぁ、はぁ、はぁ……ディ、ディード……!」」
「いい……いいのっ……もっと、もっと突いてぇっ!」

 黄金色の髪を振り乱し、何かに耐えるような表情で激しく首を振る。その度に額に浮かんだ汗の飛沫が散らばり、マードックの顔にも降り注ぐ。そしてマードックへと降り注いだ汗は彼の肌に浮かんだ汗と混ざり合い、滴り落ちて寝台へと吸い込まれていく。

「あっ、あっ、あっ、あぁんっ、んっ、やっ……んくぅっ!」

 全身を包む快感に打ち震えながらも、ディードリットは更に貪欲に快感を貪ろうとする。より深く感じられるように体を少し後ろへと反らし、後ろ手に体を支える。
 そうする事によってマードックの体勢に余裕ができ、より大きく動く事ができるようになるのだ。
 そして何より、二人の目線から結合部分が丸見えになる。淫らに男性器が出入りする光景が、視覚から二人を更に盛り上げていく。

「んーっ、んっ、んぁっ! す……凄いっ……あぁっ、駄目ぇっ!」
「くっ……!」

 白い喉を見せるように大きく背中を反らし、快感のあまりディードリットの腰が浮き上がる。

「あぁっ、くるっ、きちゃうっ、あっ、あっ、あっ、ああああああぁーっ!!」

 浮き上がった彼女の腰を追いかけるように、マードックも更に激しく腰を打ち付けるようにして突き上げる。その度に結合部からは愛液が飛び散り、薄い部屋の明りに照らされてキラキラと輝いていた。
 そしてディードリットはいよいよ始めての絶頂を迎えようとしており、マードックもまた二度目の射精を迎えようとしていた。

「あんっ、あっ、あっ、だめっ、も、もう……イクッ、イっちゃうわっ!」
「わ、私もそろそろ……うぅ」

 マードックは再びディードリットを仰向けに寝台へと押し倒し、彼女の乳房へと両手を伸ばし、荒々しく揉みしだきながら激しく腰を突き入れる。ディードリットの小振りな胸はとても敏感で、抽送による快感と相まって強烈な快感が全身を駆け抜けていく。
 寸前まで高まっていたディードリットは、それで一気に絶頂まで導かれていった。

「あっ、あっ、あーっ! イクッ、イクッ、あぁっ……んぁぁぁぁぁぁっ!!」
「くっ……で……出るっ!」

 ディードリットの腰が震えるように跳ね、同時にマードックも射精の瞬間を迎えた。
 一度目ほどの量は無かったが、それでもかなりの量の精液が彼女の膣内を満たしていく。ディードリットは絶頂の余韻の中でそれを感じ、恍惚の表情を浮かべていた。

(またこんなに出てる……あぁ……膣内が熱い……)

 一方のマードックはかなり疲弊した様子で、荒い呼吸に胸を上下させながらディードリットの上に崩れ落ちていった。



「……疲れさせてしまったかしら?」
「いや……もう若くはないからね、私も」
「そうかしら? あんなに激しかったのに」

 隣で横になっているディードリットの言葉にマードックは苦笑いを浮かべる。自分でも年甲斐も無く頑張ってしまったと思っているのだ。
 だが、それも相手がディードリットであればこそだ。彼女が娼館からロウルの館へと行った後にも何度か通って他の女を相手にしたが、今日のように気持ちが入る事は無かった。しかしマードックはその事を口にしようとして、止めた。

「……」
「……うふふ」

 そんなマードックの心情を見抜いているのか、ディードリットは小さく笑う。
 そして体を起こし、寝台の端に腰掛けたマードックへと体を寄せ、その耳元で囁くように言った。

「とても素敵だったわ……」
「ディード……」

 甘く耳元をくすぐる声に、マードックは彼女の体を抱き寄せて唇を重ねる。
 夜はまだ長い。どこまで体力が続くか分からなかったが、マードックは再び沸きあがってきた欲求に素直に従う事にした。

「もう一度いいかな?」
「……ええ」

 二人の体が再び寝台の上で重なり合っていった。

#END