Dissolute every day

 

Dissolute every day

「ふぅ……」
 カシューの相手を終えて部屋を出たディードリットは、疲れたように大きく溜息を漏らした。
 部屋の中での情交を示すかのように、その頬はまだ薄っすらと朱に染まっている。
 カシューの私室の前で歩哨の任に当たっていた兵士が、その艶のある美しい横顔に目を奪われてしまう。
 そこへ、慌しく廊下を駆けてくる足音が響いた。
「ディードリット!」
「レイリア?」
 情交が終るのを待っていたかのように、レイリアがディードリットへと駆け寄る。そしてディードリットの手を取ると、興奮した口調で宮廷魔術師の帰国を告げた。
「彼が帰ってきたわ……!」
「!!」
 その言葉を聞いた次の瞬間、ディードリットはまさに一陣の風のように、スレインの部屋へと駆け出していた。
 黄金色の長い髪をなびかせて、城の廊下を駆けて行くディードリット。レイリアもそれに続いて、夫の元へと駆け出す。
 しかし廊下の角を曲がると、既にディードリットの背中は影も形も見えなかった。



「スレイン!」
「お久しぶりですね、ディードリット」
 慌しく入ってきたディードリットに、スレインは相変わらずの調子で答える。しかしディードリットに懐かしんでいる余裕はなく、スレインへと駆け寄ると、その肩を荒々しく揺さぶった。
「教えて! どうすればパーンを救えるの! どうすればパーンを……!」
「く、く、苦しいですよ……」
 その激しさのあまり、スレインの頭がガクガクと揺れる。
「お願いよ! もう……もうスレインだけがっ……」
「お、落ち着いて下さい、話は妻から聞いてますから……ゲホッ、ゲホッ!」
「あ……」
 咳き込んだスレインを見て、ディードリットはようやくその手を緩める。しかしその表情からは、切羽詰った様子が消えることはなかった。
 そしてスレインが落ち着くために水をひと口だけ飲み干すと、ようやくレイリアも夫の部屋へとたどり着いた。
「おかえりなさい、あなた」
「ただいま、レイリア」
 二人は夫婦らしく抱き合うと、お互いを慈しむかのような口付けを交わす。
 その姿だけを見ていると、二人は本当に愛し合っている夫婦だと思える。
 しかし実際には、レイリアはカシュー王のハーレムの一員であり、ディードリットが加わるまでは、その中で最も寵愛を受けた存在だった。
「……そろそろいいかしら?」
「ああ、すみません」
 終らない二人の口付けに、ディードリットは苛立ちを押し殺しながらスレインを急かした。
 スレインはレイリアから腕を離すと、真剣な表情でディードリットへと向き直り、独特の調子を持った声で語り始める。
 それはパーンの心を救い出す、唯一の方法についてだった。
「精神を司る精霊の力が弱まっている、という事でしたね?」
「ええ、私に分るのはそれくらいよ……」
 身体の傷は回復したものの、一向に目覚める気配のないパーンを思い、ディードリットの表情が暗く沈みこんでいく。
 そこからのスレインの話は、けして確証のある話ではなかったが、ディードリットにとっては充分に希望の持てる話だった。
「妻……レイリアからそれを聞かさた時点で、私はウォートと連絡を取りました」
「ウォートと!」
 荒野の賢者や大賢者ウォートと讃えられる、生ける伝説ともなった六英雄のうちのひとりで、他に肩を並べる者のない魔法使い。
 ことロードスに限って言えば、その知識の質と量で抜きん出た存在だ。
「彼にお願いすれば、何か分るかも……!」
「ええ、その通りです」
 落ち着いた笑みを浮かべながら、スレインは頷いてみせる。
 そして気持ちの逸るディードリットを落ち着かせながら、パーンを回復させる為の方法について話し始めた。
「パーンの意識を甦らせるためには、弱まっている精神の精霊力を取り戻す必要がありますが、それは簡単な事ではありません。そもそも、彼の意識が戻らないということは……」
 しかし、魔術師らしく結論を後回しにする話し方に、ディードリットの我慢は瞬く間に限界を迎えた。
「それで、どうすればいいの!」
「……パーンの精神そのものに癒しを与えながら、同時に彼の精神を呼び起こすのです」
「癒しながら呼び起こす……?」
「ええ」
 スレインの言葉の意味を理解しきれないディードリットは、より具体的な内容を求めてフレイムの宮廷魔術師を促がす。
 更に遠まわしな話をいくつか経て、ディードリットはようやくパーンを救う方法を知る事が出来た。
「リグニア石と、その……何て言ったかしら?」
「”深遠の扉”ですよ」
「そう、それを使って私がパーンの精神世界へ入るのね」
 魔獣であるリュンクスの体内にあるリグニア石には、精神の病を癒す効果がある。それを使って傷ついているパーンの精神を癒し、「深遠の扉」なる魔法具を使い、ディードリットがパーンの精神世界へと入り、パーンの心を連れ戻す。
 スレインは延々と「深遠の扉」について説明していたが、ディードリットの耳には届いていなかった。
「……ですから、それが行えるのは限りなく精霊に近い貴女だけなのですよ、ディード」
「分ったわ」
 リグニア石によって癒したとしても、傷ついてしまった精神はとても脆くなってしまっている。
 普通の人間がその精神に触れようとすれば、取り返しの付かないことに成りかねないのだ。
 しかしハイエルフであるディードリットであれば、精神を司る精霊の力を借り、パーンの精神を傷付ける事無く、彼の心に直接触れる事が出来る。
「幸い、リグニア石はフレイムの宝物庫に納められています。あとはウォートからの連絡を待って、”深遠の扉”を受け取れば」
「連絡って、ウォートのところには無いの?」
「保管場所はご存知のようでしたが……」
 手に入るのは間違いない、とスレインは断言したものの、ディードリットにはそれを待っているだけの心の余裕が無かった。
 いつあるか分らないウォートからの連絡を待つくらいなら、自分からウォートに会いに行く。そう言い出したディードリットを、宮廷魔術師とその夫人は止めようとしたが、彼女が言い出したら聞かないのは、想い人であるパーンと同じだという事を再確認するだけだった。
 カシューの愛妾となったディードリットだったが、パーンの為であれば旅立つ事は許されている。早々に身支度を整えると、出立を伝えるためにカシューの私室へと訪れた。
 既に若草色のチュニックに着替え、旅装を調えていたディードリットに対して、カシューは豪放な笑みを浮かべた。
「そう慌てる必要もあるまい。ウォートからの連絡はまだなのだろう?」
「それは……そうですが……」
 カシューの言う通り、慌てて旅立ったところで意味は無い。それは分っていても、逸る心を抑えることができないのだ。
 もちろんカシューもディードリットの心情は理解していたが、同時にスレインから詳細も聞き及んでいる。その上で、国王としてではなく、ひとりの男としてディードリットを引き止めていた。
「……にしても、やはりお前はその姿が似合うな」
「え?」
 カシューへと庇護を求め、そのハーレムの一員となって以降、ディードリットはそれに見合った服装を強いられていた。
 大陸から取り寄せたという、装飾のほどこされたドレスなどで、美しいディードリットにはとてもよく似合っていた。
 しかしカシューの言う通り、生命力に溢れた印象のディードリットには、活動的なこの旅装が最もよく似合う。若草色のチュニックは、その美しい黄金色の髪を更に映えさせてた。
 共に轡を並べていた頃から、カシューにとってもやはり見慣れた姿だったのだろう。自室を訪れたディードリットを見る目が、普段よりも優しくなっている。
 その姿をそんな目で見られた経験の無いディードリットは、どこか居心地の悪くなるような、むず痒さのようなものを感じてしまう。
「あ、あの……」
「ここを発つのは、連絡があってからでいいだろう?」
 そう言いながら近付いたカシューは、ディードの腰からレイピアを取り上げ、マントや革鎧を取り外していく。
「陛下……」
「今すぐにお前が欲しくなった。いいな?」
 ハーレムの一員となり、カシューの妾となったディードリットに、それを拒む理由は無い。
 パーンを救いたいという思いに心は逸っていたが、カシューの言う通り、慌てても仕方が無いという思いもある。
(そうね、少し落ち着いた方がいいわ……焦っては駄目ね)
 焦りは失敗へと繋がる。それはこれまでの経験から、自分でもよく分かっている。
 ここはスレインやレイリア、それにカシューの言葉に従うべきだろう。自分自身に言い聞かせるようにして、ディードリットは冷静に現状を整理しようとする。
 そうやって考えがまとまっていくと、自然と逸っていた心も落ち着きを取り戻していった。
 慌ててウォートの元へ向かった所で、魔法具である「深遠の扉」が無ければ意味が無い。
 それに場合によっては、ウォートの元ではなく、実際に「深遠の扉」の保管場所へと向かう事になるかもしれない。
 もしそうなったとしたら、ウォートの元へ向かうよりも、この王城で連絡を待っていた方がいいだろう。
 落ち着きを取り戻した頭で冷静にそう答えを出すと、ディードリットの腕はカシューの厚い胸板へと伸びていた。
「どうぞ、陛下の御心のままに……あ……ン……ちゅ……ちゅぷ……」
 ディードリットの言葉が終るのと同時に、カシューがその唇を奪う。
 色気よりは可憐さの際立つ薄い唇を、対照的なまでに固く逞しい唇が蹂躙していく。
 ディードリットは唇での陵辱を受け入れながら、その腕をカシューの広い背中へと廻していった。
「ん……んふ……ちゅく……ちゅ、ちゅぅ……んん……はぁ……あふ」
 人間よりは遥かに長く生きているディードリットでも、エルフとしては子供のように扱われている。だからこんな濃密な口付けを覚えたのも、人間の世界へ足を踏み入れてからのことだ。もちろん、そこから先を覚えたのも、パーン達と出会ってからになる。
 カシューに唇を吸われながら、ディードリットはふとこれまでの事を思い返していた。
(初めてパーンと結ばれるまで、随分と時間がかかったわね……)
 お互いに気持ちは分っていたし、ディードリットはそれなりにアピールもしていた。しかし朴念仁なパーンがその意味を理解し、そして覚悟を決めるまで、年単位の時間を必要としていた。
 そしてようやく結ばれ、これからより親密な時間を過ごそうとしていた時、パーンは単独での旅の途中、マーモの手に落ちたのだ。
 スレインからその話を聞かされた時、ディードリットは自らの死を宣告されたような気がした。ディードリットにとって、パーンの存在はそこまで大きくなっていた事を、失って初めて気付かされる。
 だが、その後の苦難を乗り越えて、再びめぐり合う事ができた。パーンは捕らわれの日々でその心を傷付けられ、意識を失ったままだったが、最初に味わった絶望感を思えば、遥かに希望に満ちた日々だと言っていい。
 そしてパーンの意識を取り戻すための手段も、ようやく知る事が出来た。あの実直な戦士の腕に再び抱かれるまで、もうあと少しのこと。
 カシューの愛妾でいられるのも、限られた時間でしかない。
(っ……わ、私……寂しく思ってる?)
 今の関係が終ると感じた瞬間、ディードリットの胸に込み上げた思い。それは間違いなく、カシューへの思慕と名残惜しさだった。
 パーンを探す旅に出てから、何人もの男に抱かれてはいたが、フレイムでの数日間の生活は、それらを全て色褪せさせている。
 カシューの逞しさや身体の相性もあるだろうが、実直さを絵に描いたようなパーンとは違い、男女の色事にも長けたカシューなだけに、ディードリットも女として満たされている。
 そう、妾としての生活に充実感を覚え始めているのだ。自分の気持ちに気付いた瞬間、ディードリットは愕然となった。
「どうした、やはりその気にはなれんか?」
「あ……いえ」
 ディードリットが浮かべた戸惑いの表情を、カシューはパーンを思っての事だと感じて、そう問いかける。ディードリットは慌てて首を振り、改めて女としての表情を浮かべた。
「今、服を脱ぎますから」
「いや、そのままでいい」
 誤魔化すように口にしたディードリットの言葉を拒絶し、その身体を壁際へと強引に連れて行って押し付けた。
「へ、陛下……」
「思い出すな、あの時を」
 カシューのその言葉に、ディードリットは驚きの表情を浮かべた。まさかカシューが、今ここでそれを口にするとは思ってもみなかったのだ。
(あの時って、やっぱり……)
 ディードリットがカシューの妾になる遥かに前、まだパーンがカーラを追って躍起になっている頃、同じような体勢になった事がある。
 以前からディードリットを気に入っていたカシューが、酔った勢いで彼女へと強引に迫った事があるのだ。
 その時はディードリットに手痛く窘められ、カシューもそれ以上は事に及ばず、酒の上での事だと、二人は口外する事無く記憶の奥にしまい込んでいた。カシューはその事を言っているのだ。
「ん……あ……あぁ……」
 壁に押し付けたディードリットの首筋へ唇を押し付けながら、チュニックの上から乳房を撫で回す。
 それほど豊かとは言えない乳房だったが、森を出た頃に比べれば遥かに成長しているし、エルフとしては例外的に豊かと言える。
 もちろんそれは、これまでの男性経験から影響で、エルフとしては幼いとも言える年齢だったディードリットが、女性として成長している証でもあった。
 そんな乳房を揉みまわしていたカシューは、もどかしく思ったのか、いきなりチュニックの胸元を裂いてしまった。
「へ、陛下っ……!」
「このままでは触れられないからな」
 なら、脱がせればいいのに。その言葉をディードリットは飲み込み、代わりにチュニックの裾から手を潜り込ませると、それまで引き裂かれるのは遠慮したいと、下着として身に付けていた白布を解いた。
 するとカシューは片手で乳房を揉みながら、もう一方の手をディードリットの股間へと伸ばし、ゆっくりと秘唇を撫で始めた。
 太く逞しい指先が擦るように撫でていくと、膣奥から少しずつ蜜が染み出し、秘唇が柔らかく綻び始める。
 カシューはそのまま秘唇を押し開くようにして、その指を沈み込ませていく。
「んんっ……ぅ……くぅんっ……!」
 秘唇の間へと潜り込んだ指先は、膣口の周囲を撫でるように刺激し、そのまま蜜を貯えた小さな穴へと入ってしまう。
「なんだ、もう熱く蕩けているじゃないか」
「そ、そうですっ……んっ……ああっ!」
 名残惜しさと共に込み上げた思慕の感情が、ディードリットの女としての反応を加速させている。
 カシューが軽く指先を出し入れさせると、その快感に身体を震わせ、甘く蕩けた声を漏らしてしまうほどだ。
「どんどん溢れてくるぞ、そんなに気持ちいいのか?」
 そう問い掛けながら、カシューは再びディードリットの首筋へと唇を押し付け、その滑らかな肌を味わうように舌を這わせる。乳房と膣内への愛撫に震えながら、ディードリットは恍惚とした表情を浮かべていた。
「ぃ……いいです……陛下に指が……私をっ……あぁんっ!」
 指の動きは次第に激しさを増し、狭い膣内を荒々しく掻き乱して、ディードリットを一気に高めていく。
 身体の内側で燃え上がっていく欲望の炎が、折れそうな程にしなやかな身体を焦がし、激しくカシューを求めさせた。
(もう……我慢できない……!)
 高まる衝動に逆らうことはでいず、ディードリットはカシューの胸元に顔を埋め、上目使いに見上げた。
「へ、陛下……もう、お願いします……」
「欲しいんだな」
「……はい」
 恥らいつつも、素直に頷くディードリットに、カシューも相好を崩して特徴的な口髭を揺らした。
 そして潤んだ瞳で見上げるディードリットを、カシューはその場で壁へと振り返らせ、壁に手をつかせて尻を突き出させた。
 そしてチュニックの裾をたくし上げるようにして、限界近くまで勃起した男性器を、ディードリットの小振りな膣口へと押し当てる。
「あの時、やはり強引にお前を奪っておけばよかったな」
「そんな……んんっ!」
 その言葉と同時に、カシューは先端部分を押し込んだ。
 最も胴回りのある亀頭部分が膣口を越え、狭い膣内を強引に押し広げる。そして亀頭部分が挿入されてしまうと、後は一気に進むだけだった。
 カシューはディードリットの腰をしっかりと抱え、腰を押し付けるようにして、残りの部分も挿入してしまう。
「んはぁっ……あ、あぁ……」
 狭い膣内に溜まっていた愛液が行き場をなくして溢れ出し、太股の内側を伝い流れ落ちていく。
 熱い肉の塊に貫かれ、身体を内側から押し広げられる感覚。数え切れないほど味わった挿入感だったが、今日に限っては特別なものに感じられた。
 パーンを救う手立てが見つかったという安堵感が、これまで抑え付けていたディードリットの心の鎖を緩めたのかもしれない。
 奔放とまでは言わないまでも、本来は深く考え込むような性格ではない。心の枷を外された今、淫らな妖精は愛欲に耽ろうとしていた。
「もっと……もっと深く……陛下っ!」
「こうか!」
「あぁんっ! お、奥まで届いて……んああっ!」
 ディードリットも背が低い方ではないが、それでもカシューに比べれば遥かに小柄だ。
 そのカシューが勢いよく腰を突き上げると、ディードリットは爪先立ちになりながら、身体全体を浮き上がらせてしまう。
 透き通るような肌の下半身を晒し、フレイム国王の強烈な抽送を柳のような腰が受け止める。
「あっ、あっ、あっ! い、いいっ、気持ちいいっ! もっと突いてっ、突いて下さいっ!」
 しかし、この快感もパーンが回復するまで。そうなれば二度と味わう事はない。そんな思いがディードリットに恥らいを捨てさせ、より深く、より激しい抽送を求めさせる。
「あぁっ、陛下、陛下っ、陛下ぁっ!」
 するとカシューは唐突に動きを止めて、膣奥まで挿入した状態で、先端部分を使い子宮口を押すように刺激し始めた。
 激しく膣内を擦られる快感は無いものの、それはまた違った快感を呼び起こし始める。
「人とエルフ、しかもハイエルフとなれば、子を成すのは難しい……だが、俺のは特別に濃いからな」
「へ……陛下……」
 カシューが何を言わんとしているのか、ディードリットはすぐに悟った。
 異種間での交配は受胎率が極端に下がるが、その中でもより精霊に近いハイエルフは、ほとんど不可能と言っていいほどの確率になる。
 しかしカシューが自ら言うように、種としての能力が極端に高い相手であれば、その確率も上がるだろう。つまり、受胎する可能性がある、という事だ。
 子宮口を押すように刺激しているのも、ディードリットの身体にそれを意識させるためのものだ。
 身体がその刺激に応じれば、受胎する確率は更に上がる。そして確かに、ディードリットの子宮は受精を求めるかのように下がり始めていた。
(私と……陛下の子供……)
 パーンの子であれば、ディードリットも想像した経験がある。ただ、パーンが男女間の行為に淡白なせいか、これまでは上手くいかなかった。
 しかしカシューが相手であれば、現実となる可能性は高いのだ。
「まあ、可能性は低いだろうがな」
 戯言だと言わんばかりに、カシューが会話を打ち切ろうとする。しかし、ディードリットは口を開き、カシューの言葉に答えた。
「もし……もしそうなった時は、現実を受け入れますわ……陛下」
 パーンとの間は成せず、他の男達も不可能だったことが、カシューとの間に成すというのなら、それが運命なのだろう。ディードリットは快感に蕩けた頭で、ぼんやりとそう考えていた。
 パーンのことあ愛しているし、彼との関係が終ってしまうのは死ぬよりも悲しい。
 しかし、カシューの求めに応じる事で、女として満たされているのも事実なのだ。
「……そうか、なら孕ませてやる」
 それは意気込みというよりも、宣言に近いようにディードリットは思えた。他の男が発した言葉なら笑い飛ばせるようなことも、カシューが口にするとそれだけで力を持つような気がする。
 そして孕まされる自分自身を想像して、背筋が震えるような快感が走り、肉体は精神の支配から逃れ、快感の支配下に陥る。
 カシューが再び激しく腰を振るい始めると、それまでとは比べ物にならない快感が生まれ、それが更に新たな快感を呼び起こし、身体中を駆け巡っていくのだ。
「あっ、あっ、あっ、ああああぁっ!」
 子宮は完全に下りて、いつでも射精を受け止められる状態になり、膣内も激しく蠕動を繰り返して男性器を刺激する。
 カシューはディードリットの細い腰を掴み、下りてきた子宮を突き上げるように貫き、その先端を子宮口に食い込ませた。
 そのまま出し入れされると、膣内を擦られるのと一緒に子宮まで揺らされ、ディードリットは激しく首を振って喘ぎ乱れる。
「あぁーっ! ダメっ、ダメっ! 陛下それ凄いのっ! わ、私っ……狂っちゃうぅっ!」
 腰と膝はガクガクと震え始め、まるで壊れてしまったように膣内からは愛液が溢れ出す。
 おかげで余計に出し入れが激しくなり、子宮も強く揺さぶられる。その強烈な快感のあまり、一気に絶頂へと導かれていく。
「もうっ、もうイキますっ! へいかっ、へいかぁっ!」
「構わんぞ!」
 カシューは嬉々としてディードリットを貫き続け、絶頂へと昇りつめる様子を楽しんでいた。
「あぁんっ! あっ、あっ、あっ! イ、イク! イッちゃうぅぅぅっ!!」
 身体を支えきれなくなったのか、目の前の壁に突っ伏すようにして、ディードリットは昇りつめる。
 膣内はその悦びを伝えるかのように収縮し、カシューの男性器を締め付けて射精を促がす。
 カシューはまだ余裕を残してはいたが、先ほどの宣言もあってか、ディードリットへと射精を告げる。
「このまま注ぎ込んでやるからな」
「あ……あ……あぁ……」
 絶頂の余韻に浸っているディードリットに答える余裕はなく、声にならない声を漏らしていた。
 そしてカシューは更に激しく腰を動かすと、絶頂に震える子宮へと大量の精液を注ぎこむ。
「受け止めろ!」
「はいっ……んはぁっ……!」
 熱い奔流が子宮を埋め尽くし、その量のあまり下腹部が少しだけ膨らんだ。
 脈打ちながら長く続いた射精が終ると、カシューはゆっくりと腰を引いて男性器を引き抜く。すると男性器の大きさのままに開いた膣口から、泡立った精液が音をたてて溢れ出した。
「はぁー……はぁー……はぁー……ぅ……ん……陛……下……」
 ディードリットはその場に崩れ落ち、自らが溢れさせた愛液と、股間から流れ出した精液の中に沈んだ。
「さあ、お前を孕ませるまで、何度でも続けるぞ」
 汚れたチュニックを剥ぎ取るように脱がせると、カシューはディードリットを抱え上げ、そのまま寝台へと連れて行く。
 そして快感に蕩けきったその肢体を、夜が明けるまで飽く事なく抱き続けた。



 そしてスレインの元にウォートからの連絡が届いたのは、それから数日後のことだった。

<つづく>